96.痛恨の一撃!
「まさか、道化者がこうまで簡単に捕らえられてしまうとは・・・・。」
「・・・・そうだわ!
彼らが勝手に暴走したことにすれば良いのだわ!!」
「そ、そうだな。
他に良い考えも無さそうだし・・・・。」
『 隼城』にある談話室では、第一王子であるルドルフ、第二王子のヨーゼフと王女マリーネが深刻そうな表情で会話をしていた。
「あら、そんな真似はさせませんわ。」
「お前はっ!?」
「ソフィーどうして・・・・!?」
「僕に会いに来てくれたのかい?」
前触れもなく、談話室の扉がタイミング良く開かれ、ソフィーが優雅に扉を閉めた。
「王子様方、王女様。
本日は私から、お三方へ通達に参りましたの。」
「一体何のことだ?」
三者三様に首を傾げる。
「あら、先程皆様がお話しされていた内容についてですわ。」
「話していた内容・・・・?」
「はて? 何のことやら?」
「僕と君の結婚についてかな?」
約一名だけ、空気を読めていない愚か者が居るようだが、他二名はすっとぼけている様だ。
「本来であれば、第一王子の座におられたはずのアドルフ様を襲撃させた件についてですわ。」
ソフィーは高らかに宣言して見せた。
「「「アハハハハハハハハハハッ!!」」」
すると、突然三人とも心の奥底から可笑しいとでも言わんばかりに笑い出した。
いや、この笑い方は、嘲笑という表現が相応しい下卑た嗤いだったかもしれない。
「そんなこと、誰が信じるというのかしら?」
「そうだとも。そんなことが起こったとしても、我々が関与したという証拠でもあるのかな?」
「ソフィー。それは誤解だよ。
そんなくだらないことよりも、僕とこれからの未来について話し合わないかい?」
余裕の表情を見せるマリーネとルドルフ。
一人キザったらしく流し目を送ってくるヨーゼフに、ソフィーの目は半眼状態で呆れている。
「ここは、王宮ですわ。
一番物事を判断なさるに相応しいお方の居城ですもの。
陛下。こちらへお願いいたしますわ。」
恭しくソフィーが頭を垂れると、扉が音もなく開き、談話室内へ彼らの父親が入ってきた。
「「「ち、父上! いや、国王陛下っ!!」」」
先程までの余裕の表情をサっと切り替えて、三人とも素早く立ち上がり、頭を垂れて見せた。
「うむ。それで?
今宵はどんな趣向で私を呼び出したのかな?」
「はい。国王陛下。お呼び出ししてしまい、大変申し訳ございません。
しかし、事は重大事であり、陛下直々にご裁可を願わなければならなかったのでございます。
ご無礼の段につきましては、平にご容赦を願います。」
ソフィーが深々とお辞儀をしながら、ドレスの両端を摘まんで見せた。
「はっはっは。ソフィー。それほど畏まらなくて構わんよ。
私と、君の養父とは学園時代からの親友でもある。
そのお嬢さんとなれば、私にとっても親しく接して欲しいからな。」
鷹揚に緊張を解くように勧めてくれた国王へ、ソフィーは目礼で応じた。
「お心遣い感謝いたしますわ。
アルベルト陛下。」
「今は私人として、この場に居るのだから、陛下は不要だ。」
「はい。アルベルト叔父様。」
「うん。そっちの方が良いな。」
どこまでも、親友の娘という立場として接してくれようとするアルベルトの心遣いに、ソフィーは感銘を受けたように応じた。
この二人の遣り取りに、先程から三名は取り残されたように空気と化していた。
「ハっ 突然の父上の来訪に我を忘れてしまった・・・・。」
「私としたことが・・・・。迂闊だったわ。」
ルドルフとマリーネが状況を頭の中で整理したらしく、小さく口の中で呟くと、父親であるアルベルト国王とソフィーを見比べた。
「父上、突然の来訪で些か驚きましたが、今日はどのようなご用件で?」
「そうですわ。私たちが呼んでも、最近では忙しいのを理由にお断りになられることも多いのに!」
サラリと流そうとするルドルフとは対照的に、先制攻撃とばかりに、マリーネが噛みつく。
「そう責めてくれるな。
忙しいのは本当だからな。
だが、今日は今後の国政にさえ関わるであろう重大事だというので、ソフィーの招きに応じたのだよ。」
マリーネの責めはスルリと躱して、さり気なく本題へと全員の意識を集中させた。
「今後の国政とはまた、大袈裟ですね?」
「そうだわ。一体何事だというのかしら?」
「それって、僕にも関係あることなのかな?」
兄姉の応答に、それまで空気だったヨーゼフが、初めて反応した。
「うむ。皇太子選定についてだからな。」
「「「えっ!?」」」
アルベルト王の一言に、三者三様に驚きの声を上げた。
「ソフィーから聞いた話しと、アドルフを襲撃した実行犯を引き渡してもらったところ、お前たち三人が結託し、長兄であるアドルフを亡き者としようとした計画は明白だ。
お前たち三人は、廃嫡とする。
今後は、王位継承権は、失われ、開拓地にて一辺境領主として生きるか、離宮にて飼い殺しされるか、好きな方を選べ。」
「なっ・・・・!?」
「そんなっ!?」
「待ってくださいっ!!
僕は、兄上と姉上に唆されただけなんですっ!!」
父王の非情な宣言に、ルドルフとマリーネは絶句するだけだったが、ヨーゼフだけは素早く保身へと向かって見せた。
「オイっ!
コラっ!!」
「抜け駆けは許しませんわっ!!」
「だって、僕はやってないんだもの!」
耳まで真っ赤にして、怒りに肩を震わせている兄姉に向って、尚もヨーゼフはしらを切る方針のようだ。
「そうだな。ソフィーと実行犯とやらが、我々を陥れようとしているのは、明白です。」
「そうよ、そうよ。
その実行犯とやらが、私たちを陥れたい勢力から、金で雇われでもして、捕まった時には、私たちの責任にしようとしたんだわっ!」
「父上。僕は断じて卑劣な兄弟殺しになんて、加担していませんから!!」
だが、その流れを二人も察したのか、あろうことか、同調しだしたのだ。
「ソフィーだって、怪しいですわ。
聞くところによれば、アドルフお兄様は、アーデルハイド様と親したっかったとか。
妹とはいえ、兄の心を親友に奪われることへの嫉妬でもしたのではないかしら?」
「そうだそうだ!」
「ソフィー。
淋しいなら、いつだって、僕がキミを抱きしめてあげるよ。」
キラっと歯を無駄に輝かせながら、ヨーゼフがソフィーへ向かって腕を伸ばしてきた。
「断じてお断りしますわ!
私は、アーデルハイド様一筋ですの。
他の殿方なんて、不要ですわ。」
痛恨の一撃。
「ガフっ・・・・。」
ヨーゼフは、がっくりと項垂れてしまい、地面に四つん這いになってしまった。
「ヨ、ヨーゼフ・・・・。」
「つ、強く生きろよ・・・・。」
真っ白な灰と化して、沈黙してしまった弟へ、姉兄は生暖かい視線と声援だけを送り、再びソフィーへ向き直った。
「さて、ソフィー。
悪ふざけは、大概にしないと、温厚な私も怒るぞ。」
「そうよそうよ。
アドルフ襲撃犯とやらだって、私たちとどうやって面識を?
ソフィーと襲撃犯以外の証拠や証人でもいれば別だけど?」
尚も二人は、証拠を出せ、証人を呼べとしつこく喚きたてる。
「フム。確かに、二人の言い分にも一理はあるな。
ソフィー。証拠か、他に証人となる人物はいるのかな?」
このままでは、折角のお膳立てが無駄になりかねない。
ソフィーは単身でここへ乗り込んでおり、他に共の者はいない。
アドルフ襲撃の実行犯をアルベルト国王に引き渡した今、他に証拠となる物も、人物も居ないのだから。
「他にはございません・・・・。」
ソフィーが、素直に手の内を晒すと、二人はほくそ笑んだ。
「話にならないな!」
「そうよそうよ!
ありもしない陰謀を訴えて、私たちを廃嫡させようだなんて!
お父様! これこそ国家反逆罪ですわ!
ソフィーを逮捕してくださいな!」
糾弾するはずが、逆に糾弾されてしまった。
「そんな・・・・っ!?」
「い、いや・・・・ そこまでせずとも・・・・。
もう少し、事情を詳しく調べてだな・・・・。」
俯いてしまうソフィー。
目が泳ぎ出すアルベルト国王。
威勢が良くなり、囃し立てる第一王子と王女。
第二王子のヨーゼフだけが、置物だ。
このままでは、形勢が悪すぎる。
「ここまできて往生際が悪いですわね。
三人とも、既に証人も揃っているというのに。」
あくまでも、落ち着いた感じで応対するソフィー。
だが、肝心の証人たちが、この場に不在であれば、状況など、どうとでも引っ繰り返せると言わんばかりに余裕を見せつける三人の表情には、まだ焦りは見当たらなかった。
すみません大分間が空いてしまいましたが・・・・。
もう少しで完結の予定です!
投下できる時に、投下します。




