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妹がヤンデレ過ぎて怖い件について  作者: 所天駄
第一章 妹と僕 ― アーデルハイド親衛隊は妹の旗下へ従属するか? ―
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10.親衛隊No.10 シャーロット辺境伯令嬢の想い(後編)


「それでは皆様。

今日こそは、長年の悲願達成へ向けて、前進致しますわよ!!」


「「「「アーデルーーーーーーーーーーーーーーっ! 

 ハーーーイドォッー! オオオォォォォーーーーーっ!」」」」


シャーロット嬢の呼びかけに、集った親衛隊員たちは見事に円陣を組み、中央へと一度腕を下ろしてから勢いよく掲げ、想い人の名を掛け声に叫びながら団結を図った。


いよいよ決戦の時は来た。


この時期の女子体育の時間は、外で乗馬訓練に励む男子と別れて、体育館で行われる。


だが、ここで女子ならではの裏技を使う者たちが続出したのだ。



無論、一つの授業で大勢が抜ければ目立ってしまう。


故に、各授業から2~3名ずつ。


中等部3学年約2400人、高等部3学年約1200人、合計3600人の中から、48人が自主休講、

早退、元から授業無しなどの理由で抜けたところで、あまり目立たないのであろう。


中には従者に代返をさせている強者も居たようだが、バレればタダでは済まない。


48人からの親衛隊員が中庭周辺に散会して目標が来るのを待ち構えている。

手紙を渡すことを阻止させないためだ。


目標であるアーデルハイドの行動パターンは定まっているのも調査済みだ。


乗馬訓練の後には、必ずシャワーを済ませ、中庭へ学科確認のためにも来る。


それから、親友であるアドルフと別れて、馬車で王都伯爵邸まで帰ってしまう。


その間僅か5~10分程。


既に、伯爵邸付きの馬車は従者と共にアーデルハイドが乗り込むのを待っている。


アーデルハイドがアドルフと共に、中庭へ向かって来るのが見えた。


手筈ではここでユーリ子爵令嬢が二番目の手紙を渡す予定だ。


だがしかし、ここでシャーロットは動いた。


「ユーリ、待って。

やはり私自ら手紙を渡すわ。」


「・・・シャーロット・・・様・・・。」


ユーリはどこかホッとしたような、それでいて残念そうな、そんな複雑な感情の入り混じったなんとも言えない表情をした。


でも、決心したことだ。


「私が、自分で、渡します。」


「・・・。」


黙って封筒を渡すユーリに、そっと労う様に手で肩をポンポンと軽く叩くと、意を決して前進した。



高鳴る鼓動と、顔が嫌でも上気するのが感じられたが、今はどうだって構わない。


中等部の時とは違う、今の全てをぶつけて、想い人へ気持ちを届けたい。


ただ、それだけを秘めて、アーデルハイドへ近づいた。


幸い、障害になりそうなアドルフは、気を効かせたのか先に離れてくれた。


「・・・こ、こんにちわ、ですわ。」


「・・・うん、こんにちは。」


「お、お久しぶりですわね・・・。」


「うん? 

あーシャーロットさんだよね?」



嬉しかった。


ただ、名前を呼ばれるだけが。


胸の鼓動が一瞬だけ、一際大きく高鳴った。


涙が零れないように少しだけ上を向いたけど、怪しまれないかな?


この後どうやって言葉を続ければ良いのだろう・・・。



「最近あまり見かけなかったけど、同じ授業取ってなきゃ仕方ないよね・・・。」


「・・・そ、そうですわね・・・。」


これ以上は無理だ。


一言だって受け答えしてしまったら、気持ちが溢れてしまう。


叫びたいほど身を焦がす想い。


でも、一分一秒でも構わないから共に過ごしたい気持ち。

同時に、一刻でも早くこの場から走り去ってしまいたい気持ち。


二律背反。


相反していて、矛盾するけど、居心地が良すぎて、居心地が悪いのだ。


「・・・コレ・・・。」


「うん、え?」


「必ず目を通してね!!」


「あ、うん。

またね?」


手紙を押し付けるように手渡すと、背を向けて小走りでその場を去ってしまった。


だが、悔いは無い。


やり遂げたのだ。


結果がどうなろうと、今は直接自分の想いをしたためた手紙を直接アーデルハイドへ手渡すことができた。


ただそれだけで良いのだ。





「先週とまた違う子だな?」


見計らったようなタイミングで、アドルフがフラリと戻って来た。


そっか、気を遣ってくれてたんだな。


変なところでは気が回る奴め。


「ああ、でもあの子は知ってる子だよ?

初等部から一緒だったシャーロットさんだもの。

彼女子供の頃から可愛かったけど、綺麗になったよねー。」


僕は思ったことを素直に告げただけなんだけど、勘違いさせてしまったようで


「お? 

お前あーゆー子が好みなん?」


アドルフがニヤけた顔で僕の顔を覗き込む。


「んー どうだろう?

僕の好みは・・・・。

いや、やっぱりいいや。」


何故かこの時に一番最初に思い浮かべてしまったのが・・・。


言えない。


これだけは誰にも告げることが出来る想いでは無いのだから。


「なんだよー 親友の俺にも言えないってかー!!

ハッ! やっぱり・・・お前・・・・俺のことが・・・」


わざとらしく大げさに驚いて見せたかと思うと、アドルフの野郎が襲い掛かって来た!


「待てぇぇぇぇぇぇぇいっ!!

抱きしめるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!

それでもって、唇を近づけるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああっ!!

クオラァァァァァァァァァァァァァっ!!」


身長差がある上に、コイツの方が力も上だ。


僕に覆いかぶさるように巨体が唇を尖らせて近づけて来た。


「やっぱり・・・あの二人・・・・!!」


さっきシャーロットが去った後も場を伺う様にチラホラと残っていた女子たちが、黄色い歓声を爆発させた。


「「「「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああっ!!」」」」


後には、鼻血と興奮の坩堝が形成されましたとさ。


チャンチャン。





後日談。


翌日の教室でのアドルフとアーデルハイドの会話。


「ところで、あの封筒の中身、ラブレターだったのか?」


「うん?

いや、なんか最近王都で流行のスイーツショップのチラシが一枚入ってただけなんだけど・・・。

これって一緒にお茶しようってお誘いだと思うか?」


「・・・。

微妙だなオイ。

なんとも言えんなぁ・・・。」


その頃、高等部一年の教室では、一人ユーリ嬢がニマニマしていた。


「先輩とは言え、貴族の格付けでは負けてるけど、現段階の財力で言えば実家うちと大して変わんない辺境伯令嬢シャーロット如きが二度も私に配達係パシリさせようとするなんて・・・。

だーれが素直にラブレターなんて届けるものですかっ!!

ハーッハッハッハッハーっ!!」


「うわぁー ユーリぃ。

バレたらアンタ、タダじゃ済まないよぉー?」


「フッフッフ。

貧乏子爵家とは言え、あたしだってアーデルハイド様狙いの気持ちは負けないんだからぁぁぁぁぁぁぁあっ!!」


「あーハイハイ。

アーデルハイド様ってば、本当に罪作りよねぇー。」


親友から窘められても、ちっとも懲りた気配すら無いユーリ嬢は今日も元気です。




うん。人の恋路を邪魔しちゃ・・・。

でも、お互い様と言いますか・・・?


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