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魔法の世界の非日常 魔族襲来 弐

『戦闘モード』


ゆったりと体を起こしながら唱えたそれは切り替えの合図。

異世界でもう一つの体を動かしているはずの意識をこちらに持ってくる。役割分担をすることで反応速度を爆発的に上昇させる。同時にもう一つの体を休ませることで魔力回復を図る。


ゴウッ!っと全身から魔力が溢れ出す感覚を味わう。


僕が身体強化をして肉体を動かし、槍を用いた攻撃と回避を。

僕が魔力を動かし、槍先の魔法、回避不可な攻撃に対する防御魔法と万が一攻撃を受けた時は回復を。


まずはさっき吹き飛ばされた時に手放してしまった槍を回収する。

槍にベクトルを働かせ、手元に飛ばす。パシッと良い音を響かせ手元に収まる。これでも結構槍は扱えるようになった。同時に槍先に魔法を発動する。槍先で小さな雷が走る。


周囲を確認すると、魔族が驚いた表情を浮かべて突っ立っており、左方向には仲間たちが、右方向には魔法クラスの教師が、こちらを見ている。

他に構う余裕はない。

真っ直ぐ魔族を見据える。


魔族が動く。一瞬左右に移動するかのようにフェイントを入れてから直進してくる。その速度はさっきまでなら目で追うことすらできなかった。

だが今の状態なら反応できる。魔族が突き出す左手の直線状から体を避けながら前に傾け、同時に槍で反撃を打ち込む。


バシュッ!


空気を叩くような音が響き、僕と魔族の攻撃が交わる。

魔族の攻撃は完全に回避したが、僕の攻撃も紙一重で避けられた。だが、紙一重だった魔族の頬と右肩から血が流れる。


「今の攻撃、完全に避けたはずだが? さっきまではこの速度に反応すらできなかったというのに、何をした?」


魔族の疑問はもっともだ。だが、戦闘中に手の内を明かすマヌケがいるとでも思っているのだろうか。

槍先に発動している魔法はおそらくこの魔法の世界で唯一僕だけが使えるであろう魔法だ。原子の結合を切る。この魔法は空気中の分子だろうが丈夫に作られた防具だろうが人体を構成する細胞だろうが、根本的に関係ない。槍先で雷が発生するのは空気中で結合を切られた原子が再び結合するために反応しているからである。

この魔法に対抗するには原子間の結合を魔法で強化するか、切られた端から新たな細胞に再生するかくらいしかない。


「黙して語らず、か。まぁいいだろう。ダメージは大したことない。それに、もう当たらん」


言うや否や距離を詰めてくる。それも、さっきよりも速度が上がっている。


「クッ」


魔族の剣の一振りを辛うじて槍の持ち手で受ける。ちなみに僕の槍は家宝のレプリカだそうで、持ち手まで金属で出来ている。おかげで強化しやすく助かった。

一撃受ける間に身体強化を更に強く掛ける。


競り合った状態で魔族の左手が伸びてくる。その左手にはバチバチと黒い雷が創られている。厳守の祈りを使わせたのはおそらくこれだろう。

魔法を発動して魔族の軸足を後方に弾く。

バランスを崩したはずの魔族だが、右手の力だけで剣を押し込んできた。

それを右に受け流しながら、槍先で攻撃を仕掛ける。

だが、魔族は空中で更に体を捻って、こちらの攻撃に左手の一撃をぶつけてくる。


パチィィィ!


激しい光を伴って両者吹き飛ぶ。

体を回転させて、ある程度距離を置いて、着地する。

魔族の様子を窺おうと顔を向けると、既に横に気配を感じる。

慌てて飛び退くが、すかさずついて来るのが分かる。

そのまま空中で繰り出される魔族の斬撃を槍で弾く。


一瞬の隙をついて、槍を振るう。当然のように避けられるのだが、追撃の雷が魔族に向けて飛ぶ。僕の振るう槍先は原子の状態が不安定になっている。そのため電子をいくつか飛ばすのもいつもより容易なのだ。


魔族が右手の剣と左手の黒雷で巧みに攻撃してくるのに対し、僕は槍術と不意打ちの魔法で応戦する。

戦況は一進一退、互角の様であった。


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