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科学の世界の日常 運動会 陸

ちょっと書くのが大変だったので分割しました

今日は二話更新されています

「や、やっぱり科刺川君は凄いね」

「いや、そんなことは無いよ」


綱引きが終わったら昼休みだ。一緒に綱引きに参加した宮崎さんがすぐに声をかけてくる。声をかける前にどうしようか悩んでオドオドした様子が何とも言えない良さを秘めている。


「あ、あの、科刺川君はお昼はどうするの?」

「ん? ああ、今日は母が朝から料理をしていたから持ってきてるんじゃないかな」


僕の母は熱中しやすい性格をしているから、料理をする時は物凄く凝った料理を大量に作るが、普段は研究に集中していて基本的に食事は栄養調整食だ。


「そ、そうですか」


なんかがっかりした様子が伝わってくる。


「まぁ来てればいいんだけど、母は出かけたくないってのが口癖だから作るだけ作って来てないって可能性があるんだけどね。そうだったらいつも通り携帯食かな」


実際去年も盛大に料理をしていたのに作られた料理はリビングに置きっぱなしで母は運動会を見に来ることなく研究室に戻っていた。


「そ、そうなんですか?」


なんとなく表情が明るくなった。


「えーっと、ああ、うん。来てないや。はぁ」


千里眼を使って自宅を覗くが、大量の料理はキッチンに置きっぱなしだった。

あの料理の処理をするのは基本的に僕なのだ。やめて欲しい。


「そ、それなら、私たちと一緒にお昼を食べませんか? 実はいつも携帯食を食べているのを見て、今日みたいに体を動かす日くらいはちゃんとした食事を摂った方がいいと思って科刺川君の分も作ってきたの」

「うん。ありがとう」


早口でピヨピヨとさえずる様子が面白く、適当に返事を返す。返事を聞いたとたん物凄く喜んでいるのが伝わってくる。


「ゆーか。お昼にしよー」

「あ、うん。」


少し離れた所から斬新な名前の女子が呼んでいる。えっと、たしか、そう、華蓮だ。

返事をして駆けだそうとする宮崎さんの手を掴む。


「ひゃっ、えっ、か、かかかか、科刺川君?」


急に手を掴まれ驚き動揺している宮崎さんは面白い。


「いや、せっかくお昼を作ってくれたっていうけど、どこで食べるか聞いてないから案内してもらおうと思って」

「あっ、うん。そうだね。つ、ついて来て」


そういって歩き出す彼女の動きはどこかぎこちない。

手を引かれて連れてこられたのはグラウンドの端の方でシートを広げて場所を取っている家族の下だった。

おそらく、宮崎さんの母と華蓮の母、それとどちらかの弟妹たち二人。


「あらまぁ、ほんとに連れて来たのね」


そう言って口元に手を当て嬉しそうにしているのは宮崎母だ。どことなくふわふわした感じが宮崎さんにそっくりだ。


「こんにちは。初めまして。科刺川矛斗と申します。宮崎さんにお昼に誘われたので付いて来ました」

「あら、丁寧にどうも。私は宮崎夕果の母です」

「私は田中華蓮の母です。ほら自分の名前教えてあげて」


「田中とーま。ごさいです」「田中ゆかり。ごさい」


弟君の方は手をパーにして突き出して、妹ちゃんの方は母の後ろに隠れて挨拶してくれる。


「あ、いたいた」


声のした方に視線を向けると華蓮を一回り大きくした感じの女子が居た。


「あ、お姉ちゃん。お疲れー」

「うん。それはそれとして、夕果ちゃん、そちらの男の子は彼氏かな?」


華蓮の姉はニヤニヤと笑いながら、僕と宮崎さんが手を繋いでいるのを指摘する。


「へ? あ、いや、べ、別にそんなんじゃないですー」


宮崎さんはそう言って慌てて手を引っ込めようとするが、手を掴んでいるのは僕だ。急に引っ張られて、宮崎さんにぶつかる感じで倒れる。とっさに無重力場を作りフヨフヨと漂うが、その距離はほぼ密着している。そのまま宮崎さんの体を抱え、態勢を整えてから無重力場を解除する。


「えっと、大丈夫?」

「は、はひー」


僕の腕の中で完全に脱力している宮崎さんに声をかけるが、頼りない返事が返ってくる。ぶつかった瞬間に無重力になったのによっぽど驚いたのだろう。

そっとシートの上に座らせる。


「さぁ、食事にしましょう。夕果も食事をしてれば元に戻るわよ」


皆が食事を始めると、宮崎さんも動き出して食事を始めた。それを見て僕も箸を受け取り食事を頂く。


「それでー? 矛斗君としては夕果ちゃんが彼女ってのはありなのー?」

「ちょっ、遥さん、その話まだ続くんですかぁ」


華蓮姉の発言に宮崎さんが慌てて止めようとする。あたふたしている宮崎さんも面白い。


「有りか無しかで言えば有りですね。ただ、……」

「へぇー、矛斗君は夕果ちゃんみたいな子が好みなんだー。残念だったね、華蓮」

「う、うるさいよ」


「夕果お姉ちゃん顔真っ赤だよ?」

「どうかした?」

「う、ううん。大丈夫だから」


そんな感じで明るくにぎやかに昼休みは過ぎて行った。

ラブコメって難しい

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