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科学の世界の日常 運動会 参

無重力場を作って本を読み進めてしばらくすると、誰かに肩を叩かれた。

無重力状態で肩を叩く、すなわち力を加えるとどうなるかと言うと、回る。

当然回るのは肩を叩かれた僕の体と、叩いた方もだ。作用反作用の法則はきちんと存在している。

叩かれた力が弱かったのが幸いして、回転はゆっくりしたものだ。僕は空気抵抗を利用して上手く態勢を整えながら、肩を叩いた人物を確認する。


「……。えと、明須井さん。もう競技の時間?」


さっき会ったクラス委員の明須井さんだ。別に思い出すのに時間がかかったりはしていない。


「あ、うん。そうよ。それにしても魔法ってすごいのね」


そうか。僕からしたら無重力場は非常に楽な為頻繁に使っているが、彼女は初めて体験するのか。


「慣れれば凄いとは思わなくなるよ。それで、もう解除してもいいかな?」

「え? あ、そうね。大丈夫よ」


彼女の返事を聞いて、僕は魔法を解除する。とたん重力が体中にかかり地面に落下する。

態勢を整えていた僕は両足で着地したのだが、明須井さんは短い悲鳴を上げて、背中から落下した。


「大丈夫?」


事前に確認はしたはずだが、思わず聞かずにいられない落ちっぷりだった。


「ええ、大丈夫よ。それより早く集合場所に向かわないと」


明須井さんに促されて集合場所に向かう。読んでいた本は情集散に預けておいた。


集合場所には結構な数の人が集まっており、「男子二百メートル走はこちらです」「女子はこっちね」「学年別に並んでください」と係りの人が声を上げていた。

指示に従って列に並び大人しく待っていると、係りの人が点呼に回ってきたのでクラスと名前を答える。

更に待つこと数分。いい加減本を読んでいたくなってきたころ、ようやく列が動き出した。会場中に聞こえるアナウンスも、「これより、男子徒競走二百メートルの部を、開始します」と放送していた。


さて、低学年から始まってようやく僕の番だ。

コースは直線二百メートル、教師の「位置について」の合図で片足を引くとともに、身体強化の魔法をかける。身体強化と言えどもその内容はいくつかあり、今回は肉体強度上昇だけに絞った。

教師が「よーい」と言うのに合わせて次の魔法を用意する。


そして、空砲の音が響くと同時に魔法を発動。内容は加速。

次の瞬間に全力でブレーキを掛ける。ゴール手前から三十メートル程砂埃を撒き散らしながら止まる。

どれ程の速度が出たかは後で情集散のデータを確認しなければ分からないが、音速は超えていないはずだ。


収束の魔法で舞い上がった砂埃を地面に落として、更に変形の魔法で地面を固める。

周囲で感嘆の声が上がる。同時に「キャーキャー」と悲鳴が聞こえ、魔法の被害でもあったかと思わず視線を向けると、たくさんの女子がこっちを見ていた。特に影響はなさそうだが、視線を向けたとたん悲鳴が大きくなった。意味が分からない。


僕は係りの人の誘導に従って一の数字が書かれた旗の下に並ぶ。

これで一つ目の競技は終わった。しばらくは本を読んでいられるはずだ。

だ ん だ ん こ う 新 が 遅くなって申し訳ない

見切り発車なんだ

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