表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
82/136

第26話 「大空賊船エクスフェリオン」その3~Story of HIKARIチーム(中編)~

 リュウジは、狼狽しながらもガイの胸ぐらを掴んだ。

「ドラゴンを追えッ!! アイツが死んじまうッ」

「気持ちは分かるが、俺にも守らなければならん仲間がいる。コイツらを危険にさらす訳にはいかねぇんだ」

 ガイは、甲板の上で立ち竦む船員達に目をやった。


「おい、アウル。お前、空を飛べる魔法とか無いんか?」

 アウルに訊ねるリュウセイ。

「だから、俺は便利屋じゃない。戦闘重視の魔術師だからな」


 リュウジは、バトルウェアのズボンから、バルシェログの召喚石を取り出した。

「なぁ、アウル。どうやって使うんだ?」

 すると、アウルは、うつむき加減に小さく答えた。

「今のお前には、まだ使えない」

「えっ?」

 あまりの小声だった為、リュウジは、耳に手を当て近づいた。

「だから、今のお前には、まだ召喚する為の準備が出来ていない」

「何だとぉぉぉ!? どう言う意味だ?」

 恐ろしい剣幕で詰め寄るリュウジに、アウルが答える。

「召喚獣は、呼び出す為に、『代償』を求めるんだ。俺達のような魔術師なら大抵は、『魔力』を代償とし、必要な魔力を消費する。しかしだ、魔力が無い者には、『代償』とする物がない。その場合、魔力が満たない者が無理に召喚獣を呼び出そうとすると、代償として、四肢や知識、時には命を取られる事があるんだ」

「どうして、今まで黙ってたんだッ」

「スマン。俺にとっちゃ当たり前の事だったから、お前の魔力に関して全くと言って良いほど考えてなかったんだ」

「だったら、こんなの持ってたって仕方がねぇじゃねぇか!!」

 リュウジは、手に握り締めていた召喚石を床に叩き付けた。


 そこへ近づくリュウセイ。

「でもさぁ、バルシェログって空飛べるんか?」

「そこが、もう一つの問題なんだ。バルシェログは地上の覇者。空では戦えないんだ」


「面舵一杯。オーラブースター全快!!」

 ガイの合図で、大空賊船エクスフェリオンが旋回を始めた。

 甲板を見下ろせるメインマストに立つガイを見上げるリュウセイ達。

「仲間達とも意見が揃った。今からディアグロドラゴンを追跡する」

 エクスフェリオンは、風の抵抗を最小限に抑えるため、巨大な帆を畳むと、一気に前進した。




「は……離せッ」

 上半身をドラゴンに咥えられたままのアンリ。

 ドラゴンからの開放を望んではいるが、今、開放されると地上に叩きつけられてしまう。

 アンリにとってはどっちでも危険な状態だった。


 ゴミ箱の様に異臭が漂い、湿ったドラゴンの口の中で脱出を試みようと手足を動かす。

 ドラゴンは、アンリを噛み砕こうと租借そしゃくを繰り返したが、バトルスーツの防御力の方が上だった。

 そのまま、ドラゴンはアンリを放さずに何処かへと飛んでいたのだ。


 ドラゴンのいびつな舌が、アンリの体に絡み付いていた。

 ヤスリのような湿った舌が、アンリの頬をさする。

 そして、粘性の高い唾液が、アンリの顔に垂れ落ちて来た。

「ウエェッ!!」

 余りの不快感に嘔吐しそうになる。


 その時、変に力の入ったアンリのバトルスーツが起動し、筋力が上がった腕で、ドラゴンの歯を内側からし折ってしまった。

「あぁっ、ごめんなさいッ」

 湿った木が折れるような音と共に、赤黒い血がアンリの顔に掛かる。

 予想外の激痛だったのか、悲痛な叫び声を上げたディアグロドラゴン。と、同時にアンリが空中に放たれてしまった。

「えっッ嘘!?」

 その瞬間に、内臓が押し上げられそうな感覚が全身を襲い、高い空から真っ逆さまに墜落を始めた。


 せっかくの食料を離したく無かったのか、ドラゴンが全速力でアンリを追いかける。

 アンリは、視界が揺らぐ世界でブレスレットを輝かせ、レーザーアローを呼び出し身構えた。


 もうどちらにせよ、助かる見込みは少ない。

 アンリに残された選択は、『ドラゴンを倒して、地面に激突し、即死』か、『何もしない間々、地面に激突し、即死』しか考えられなかった。

 どうせなら、ドラゴンを倒したい。

 その思いで、アンリは、歯を食いしばり、矢を引いた。

 しかし、吹き荒れる暴風の中で放った矢は、ドラゴンの横を大きくれてしまった。


 もう一発、更に一発。


 しかし、ドラゴンは、矢の間を縫うように近づき、大きな口を広げ、アンリを再び咥えようと試みた。

 そこへ、アンリが放った矢が突き刺さった。

 圧し折れた歯の根元に突き刺さった赤い光の矢。

 ドラゴンはまたも、苦痛の雄叫びを上げると、もうアンリに愛想を尽かしたのか、咥内に青い光を集中し始めた。

 小さな光の粒がドラゴンの翼に集中し、背ビレを伝い、咥内へと集中する。

 それは、アウルが警戒していた『ヘルズブレイズ』の準備段階だった。

 ドラゴンは、降下するアンリに、ヘルズブレイズを直撃させ殺してしまおうと思ったに違いない。


 だが、急降下する空中では、自ら移動することも出来なかった。

 アンリは、ヘルズブレイズに対して、光の盾を召喚し、ヴェールを展開させた。

「冗談じゃないわよッ……」

 その時、アンリは思った。

 自分達に向かい戻ってきた光の放射線を光の盾で跳ね返した時、相当なプレッシャーが全身を叩き貫こうとした。

 その攻撃に対しては何とか耐え凌ぐ事が出来たが、こんな巨大なエネルギーの塊を受け止めればどんな事になってしまうのか?

 凄まじい加速力を伴い、一瞬にして地上に激突してしまうのか? それとも、巨大過ぎるエネルギーに飲み込まれてしまうのか?

 いずれにせよ、無事に済みそうでは無かった。


 そして、遂に吐かれたヘルズブレイズ。

 大気を貫き、雲を消し去りアンリに衝突した。

 想像を絶する衝撃に、押し潰されそうになる。

 スーツの力を解放し、防御力を高めたが、元来からのアンリのスピリットの弱さ、そして、凄まじい破壊力に、あっという間にスピリットの力を使い果たしてしまった。


 盾を体に押し付けられ、腕があばら骨をヘシ折る。

 激痛を感じたのも束の間、腕の骨までもが圧力で折れてしまい、折れたあばら骨が肺に突き刺さったのを感じた。

 巨大なエネルギーの塊は、一気にアンリを飲み込み、その灼熱の波動で全てを焼き尽くそうとした。

 悲鳴を上げるも、焼け落ちた耳には届かなかった。

 黒い艶やかな髪も焼けて無くなり、皮膚が燃え出す。

 全身が焼け消えるのと同時に、アンリの視界が、真っ白になり、意識を失った……。



 ヘルズブレイズが地上に激突し、大爆発を起こした。

 その様子を上空から見下ろし、勝利の雄叫びを上げるディアグロドラゴン。

 その時、光の一閃がディアグロドラゴンの右腕を切り落とした。

 奇声を上げ、怯んだドラゴン。

 そして、目の前に白い光に包まれた女が現れた。


 宙に浮く、金の装飾が施された白い羽衣を身に纏いし女。

 風になびく金の髪。

 涼しげで美しい顔。

 その女は、病院での戦いの時にアンリが覚醒した姿だった。

 そして、彼女こそ、アンリの前々世。スピリットの記憶である『マリカ』だった。


「ほんと、私が居なければ、何度死んでいる事か……。これはペナルティだ。そして最後のテストだ」

 マリカは、謎めいた言葉を残すと、ディアグロドラゴンを睨み付けた。

「たかがドラゴンの分際が。消し去ってやろう」


 マリカは、空中で両手を水平に広げた。


 すると、マリカの全身が白く光り、光の塊が無数に現れた。

 その光は、様々な武器へと形状を変える。

 ある物は、剣。

 ある物は、槍。

 斧に矢。剣だけでも多くの種類が現れた。

 そしてそれぞれが、ドラゴンへと照準を合わせ、マリカの合図を待った。


「消し去れ」

 マリカが、冷たく言うと、無数の光の武器が大気を切り裂き、ドラゴンの全身を貫いた。

 経験した事が無いであろう激痛に、断末魔を上げるドラゴン。

 全身に突き刺さる光の武器が強烈な閃光を放つ。

「バンッ!!」

 マリカが、手で銃の形を真似、突き出した人差し指で、弾丸を撃つ仕草をした。


 ディアグロドラゴンは爆発と共に木っ端微塵に吹き飛んだ。


 そして、そこに残ったのは、ディアグロドラゴンが封印された召喚石のみだった。

 マリカは、そっと宙を漂い近づくと、召喚石を掴んだ。





 ~次回 第27話「炎の社と闇の戦士」Story of HIKARIチーム(中編)~


 リュウセイ達の元へと帰ったアンリだったが、依然覚醒した状態が続いていた。


 そして、彼等は、『炎の社』へと突入する。


 そこへ近づく、不死鳥の命を狙う闇の戦士。


 セーデンの力は一歩一歩、バーン二クスに近づいているのだった。


 


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ