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第26話 「大空賊船エクスフェリオン」その2~Story of HIKARIチーム(中編)~

 それは、まるで、荒れ狂う大海原を物ともせず、双眼の先の獲物を喰らうサメのように、広大な蒼天そうてんを駆けていた。

 ディアグロドラゴンの吠える声が、雲を吹き飛ばし、リュウセイ達が構え立つエクスフェリオンを振動させる。


 ガイの合図で、全員の総攻撃が繰り出された。

 アンリの放った赤光の矢がスクリューし、ドラゴンへと突き進む。

 その横で、スフィアガンを放ったリュウセイとリュウジ。二本の青い光の放射線が、突き進む。

 大気までもを貫く赤い矢を、大きな牙で受け止めたドラゴンは、雲を突き抜け向かって来る光の放射線を、翼を巧みに使い、回転しながら交わした。

 二本の放射線は、ドラゴンの後方で急旋回し、生き物のように追尾を開始した。


 一方、甲板にて透明のクリスタルを握る船員達。

 気合いと共に力を込めると、淡いライトグリーンへと輝き、鋭い放射線を放った。

 大空を無数の放射線が突き進み、ドラゴンを仕留めようと追跡する。

 エネルギーを放ったクリスタルは、灰色の石へと変わり、その役目を終えたように砂となり風に流された。


 アンリが放ち続ける赤い矢、リュウセイとリュウジが放った青い放射線、船員達が放つ、緑の放射線。

 それは、まるで光のパレードのように、煌びやかで美しいモノの様に見える。しかし、そこに秘められている意味は全くの別物である事は事実だ。

 光が急旋回し、うねり、屈折し、ディアグロドラゴンを仕留めようと空を突き進む。


 向かい来る無数のエネルギーの放射線に向かい、ディアグロドラゴンは、身構え大きく口を開いた。

 そして青い背ビレが、赤く染まる。

 ドラゴンがうなると、無数の光の粒が翼に集中し始めた。

 それは、大気中のマナを吸収しているようだ。


「マズイっ。ヘルズブレイズだッ!!」

 アウルは、詠唱中の魔法陣の中で、ドラゴンが放とうとしている攻撃を警戒した。

 その言葉に、一同に 大きな不安が過る。

 空賊船が致命傷を負ってしまえば、墜落してしまう危険性が生じてしまうからだ。


 その間にも、ディアグロドラゴンの翼に吸い寄せられるマナが、背ビレを伝い、ドラゴンの咥内で集中を始めていた。

「バルシェログの技と同じだ」

 リュウジは、洞窟内で召喚獣バルシェログと戦った際にも、同様の技を受けそうになった事がある。

 今もその時に感じたプレッシャーに近いモノがあった。

「どっちにしろ、アレを吐かれるとマズイ」

 アウルは、そう言うと、目蓋を閉じ、集中を続けた。


 ドラゴンがヘルズブレイズを吐くまでには、まだ時間があった。

 それまでに全員が放った攻撃が直撃すれば、攻撃を止めるかもしれない。

 だが、その期待は大きく裏切られた。

 咥内にエネルギーを充填させながら、体を捻り光を避ける。

 そして翼を羽ばたかせ、襲い来る攻撃を器用に交わしながら一気にエクスフェリオンに近づいた。

 凄まじい振動と共に、大きな鉤爪かぎづめを、船体に食い込ませ、甲板までよじ登ろうとしてくる。

 その光景に、死を覚悟した船員達が腰を抜かし、床に崩れ去った。

「あぁぁぁっ!! 喰われるッ、喰われるッ!!」


「おいおいおいおいッ!!」

 リュウセイが驚き、慌てたのも束の間、ドラゴンの重みで、エクスフェリオンが大きく傾いた。

 傾斜に沿って、絶叫する船員達がドラゴンの方へと滑り落ちる。

 リュウセイやアンリ、ルナは、デッキのポールにしがみ付いたが、アウルは、召喚呪文を途中で辞める訳には行かなかった。


「この野郎ォォォッ!!」

 リュウジは、狼狽し、怯える味方を守るため、あえてディアグロドラゴンに向かって斜面を駆け出した。

 ドラゴンの咥内で一気に膨れ上がるエネルギーの塊がいつ発射されるのかは、誰にも予測が付かない。

 だからこそ、リュウジは、可能性に賭けたのだ。

 スーツの力を解放し、拳にスピリットのエネルギーを纏う。そして、ドラゴンの鼻先に強烈な一撃をお見舞いした。


 鈍く重い衝撃音と共に、痛みに仰け反るドラゴン。

 咄嗟に吐き出したエネルギーの塊が空へと飛んでいった。


 いきなりの窮地を回避し、安堵したものの、ドラゴンの攻撃は治まるどころか更に、激しさを増した。

 再び、エクスフェリオンにしがみ付くと、体が吹き飛びそうな程の雄叫びを上げ、甲板にいる人間を喰らおうと牙を鳴らした。

「冗談じゃないぞ。コレは俺の船だ。誰にも壊させねぇ!!」

 ガイは、腰に差していた剣を抜き、ベルトに装着していた銃を握ると、ドラゴンに突っ込んだ。

 その後ろで、アンリが、矢を放つ。

「私達も、ここで負ける訳には行かないのよ!!」

 ドラゴンの鼻を斬り付け、銃で眼球を打ち抜く。

 怯んだ所へ、アンリの矢が咥内に刺さった。


 奇声を上げている所へ、リュウセイのソニックウェーブが貫通した。

 しかし、咄嗟に飛び上がった為、ディアグロドラゴンの尾だけが斬り落ちた。

「くっそ、もうちょいやったのに」

 悔しそうに歯を食いしばるリュウセイ。


 そこへ、ドラゴンを追跡して来た光の放射線が返ってきた。

「なぁ、この展開ってメッチャ嫌な予感がするんやけど」

「絶対に」

 リュウジの言葉にガイが続いた。

「避けるぞ!! アイツ……」

 よくある王道パターンではあるが、光の放射線をギリギリで交わし、こちらに衝突させようとしているのだ。


 甲板の隅で、怯えながら様子を伺うルナ。

 今の自分には、この場を無事に切り抜けれるよう祈るしか無かった。


「そうはさせないわ。みんな退いて!!」

 アンリは、走って甲板の先に立つと、ブレスレットを輝かせ、エネルギーの盾を呼び出した。

 しかし、以前、遺跡での戦いの時に使っていた形状とは若干変わっていた。

 機械式の篭手を手首に装着した状態で現れた盾。

 アンリが、気合を込めると篭手から光のヴェールが発せられ、盾の様な形状を形成した。

「おぉ、何か進化してるやんけ。博士が改造したんか」


 リュウセイは、力強く握った剣を水平に振った。

 再び発せられる真空波が、ドラゴンを仕留めようと伸びる。

 だが、ドラゴンは、ソニックウェーブが到達するよりも早くに飛び立った。

 そして、そこへ帰ってくる光の放射線。

 再び、ドラゴンを追おうと急旋回を試みるも、反射が追いつかず、エクスフェリオンに衝突する事は確実だった。

 そこへ飛び出したアンリの盾が現れる。


 光の衝撃に跳ね返されないよう、足を突っ張り地面を踏みしめる。

「絶対にみんなを守るんだからッ」

 ドラゴンの行動に着いて行けなかった全てのエネルギーが、光の盾に跳ね返る。

 強烈な衝撃に、アンリの顔が苦痛に歪み、光が盾に跳ね返る度に、その華奢きゃしゃな体が振動する。

 そして、再びドラゴンを追尾した。

 ある意味、それは予想外でもあった。

 盾に衝突し爆発すると思っていたからだ。


「まだ、エネルギーは生きてるぞ!!」

 リュウセイが、そう言った瞬間。

 ディアグロドラゴンが、ヘルズブレイズを発射した。

 驚愕する一同。

「アイツあほかッ!!」


 巨大な光の塊は、迫りくる光の放射線を消し去り、エクスフェリオンへと距離を縮めた。

 今度こそ、船員達は死を覚悟した。


 だが。


「諦めるのは、まだ早いぜ。行け、サラマンダー!!」

 召喚獣を呼び出したアウルの足元から、炎が吹き出し、巨大な大蛇の姿へと変わった。

 そして、迫りくるヘルズブレイズへと突進した。

 炎の尾を引き、凄まじいスピードで突き進む。

 サラマンダーは、自らを盾とし、共に爆発した。


 空中での大爆発に、大気が揺れ、エクスフェリオンが爆風に押しやられる。

 閃光が発せられ、空が真っ赤に燃える。

「うわぁぁぁっ!!」「キャャャッ!!」

 あらゆる悲鳴が混ざり合い、騒然とする船内。

 崩れ落ち、耳を塞ぎ、顔を伏せる。


 何とか爆風を耐え抜き、平衡感覚を保ったが、次の瞬間、予期せぬ出来事が起こった。


 甲板の先頭で立っていたアンリ。

 だが、一瞬にして、アンリの視界が真っ黒になった。


「松之宮ぁぁぁぁああああッ!!」

 リュウセイの悲鳴にも似た叫び声と共に、アンリは全身を上に引っ張り上げられた。

 全員の目の前で、アンリを頭からかぶり付いたドラゴンは、そのままアンリを引き連れ空を飛び立った。


 必死に手を伸ばそうにも、離れ行くドラゴンには到底追いつかない。

 船も、ドラゴンを追う事は出来ない。


 リュウセイ達は、逆方向へと進むドラゴンとアンリを、絶望の表情で見つめることしか出来なかった。





 つづく


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