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第20話 「バルシェログの森」その2~Story of HIKARIチーム(前編)~

 捕らえられたルナを救うべく、異形のモンスターに殴りかかるリュウジ。

 だが、目の前に立ちはだかる無数のロックスパイデスがリュウジの特攻を拒む。

「邪魔だ、どけぇっ!!」

 側近のモンスターの顔面に拳を振ったリュウジだったが、腹部から生える足以外の六本の手に、カウンターを放たれた。

 クロスガードで四本の突きを防ぐ事が出来ても、残りの二本の手がリュウジの腹部を弾く。

 だが、腕の隙間からロックスパイデスを小馬鹿にした笑みを見せ付けた。

「ぜんっぜん効かねぇ」

 ヴァキルト博士自慢のバトルウェアスーツには、皆無のダメージだった。

 しかし、リュウジを含め、全員が懸念している事は『数が多すぎる』と言う事だ。


 その時、リュウセイの放った青光の真空波が、木々を真っ二つに切り裂き、リュウジの頭上を通過した。

 大気が切り裂かれる音と共に、前方のモンスター達が寸断される。

 駆けつけたリュウセイとリュウジが肩を並べると、ルナを掴むロックスパイデスを睨み付けた。



 背後から迫る蜘蛛の軍団に数十発のレーザーアローを放つアンリの後ろで、アウルとパルが、呪文を唱え始めた。

 すると、二人の全身を風が包み込み始めた。吹き荒れる風と共に落ち葉や枯れ木が舞い上がる。

「パルッ!!」

「はいっ!!」と、アウルの合図と同時に、パルは、大きなリュックサックから、片手で扱える刀剣二本をアウルに手渡し、パル自身も銀の装飾が施された短剣を取り出した。


 アンリの両脇から飛び出したアウルとパルが、次々とロックスパイデスを切り裂いていく。

 しかも、先程とは比べ物にならない程の移動スピードだ。

 直前に使用した魔法は、スピード上昇のモノなのだろう。


 両手を大きく広げ、全身を回転させ、敵を切り刻む。

 左の刀剣で手足を切り落とし、右の刀剣で頭部を仕留める。すかさず振向き様に飛び掛ってきたロックスパイデスを股の下から真っ二つに切り上げた。

 流れる様な動きで確実に敵を捉えるその動き。芸術と言っても大げさではない。

 それはまるで剣舞のようだ。

 アウル程ではないが、パルもすばしっこくトリッキーな動きで敵を翻弄させ、首元に短剣をねじ込む。

 少しの間、彼らの動きに見とれていたアンリは、我に帰ると再び、弓を引いた。


「師匠ッ。キリが無いっすよ」

 倒せど倒せど積もる蜘蛛の残骸の向こう側から、雪崩のように押し寄せるロックスパイデスに、弱音を吐き始めるパル。

「魔法が効かないなら、打撃戦しかない。弱音を吐く暇があったら一匹でも多く倒せ」

「はいっ!!」



 リュウジとリュウセイを見据えるロックスパイデス。

 八つの赤い目で一瞬の動きを見定めようと様子を伺う。

 他のモンスターとは明らかに別格な風格が漂う。

 この軍団を率いるボスなのか?

「お願い助けッ……ぐぅ……ッ」

 必死に助けを求めるルナの首を更に締め上げる。

 攻撃しようものならルナごと巻き添えにする気だろう。


「くっそ……。やから連れて来たくなかったんや。完全に足手まといや」

 舌打ちをするリュウセイの横で、リュウジが作戦を持ちかける。

「寺村さん。さっきの真空派って後何発出せますか?」

「さぁ……。大体15発ってとこかな」

「だったら、俺が飛び上がったら連発で周りの敵を一掃して下さい」

「解ったけど、何をするつもりなんや?」

「見れば解りますよ」

 リュウセイに余裕の笑みを見せる。


 そして、一気に飛び上がったリュウジを確認し、リュウセイが、渾身の連続ソニックウェーブを放った。

 ルナを巻き添えにしないよう、周りの敵を消し去る。

 そして、ロックスパイデスの背後に回ったリュウジが、一気に跳び掛った。

 しかし、八つの目にはリュウジの位置がハッキリと見えていた。

 勢い良く突き出した鉤爪が、リュウジの腹部を貫いた。

 かに見えた……。


「おぉ、何人おるねん」

 関心するリュウセイの目の前には、六人のリュウジの姿が映っていた。

 そして、ロックスパイデスを囲むと円になりグルグルと回りだした。

 必死でリュウジを目で追おうとするが、数が多すぎて八つの目が回りだす。

「沢田ぁ。それ鉄板ネタやんけ。でも効いてるぞ」

 余りにオーソドックスな戦法故に考えもしなかったリュウセイが、興奮気味に声を上げた。

 不意に手を緩めてしまったロックスパイデス。

 開放されたルナがリュウセイの元へと駆け寄った。


 それを確認し、リュウジが一気に力を解放した。

「死にやがれクソがッ!!」

 音を立ててバトルスーツが補助筋肉へと代わり、戦闘力を高める。そして、一瞬でロックスパイデスの腹部を、拳が貫通した。

 鼓膜が破れそうな程の断末魔を上げて、倒れたロックスパイデス。その光景に恐れをなしたのか、他のモンスター達が一斉に退散し始めた。


 ルナを救出する事が成功し、危ない状況を脱した事で、一同から安堵の溜息が吐かれた。

「お前何個持ってるねん?」

 リュウセイの問いかけに、リュウジは束になっているホログラフィティペンダントを取り出した。

「えーっと、5個っすね。宇宙船降りるときに、皆が持っていかねぇんで、とりあえずポケットに突っ込みました」

「さすが」と笑うリュウセイ。


 しかし、次の瞬間、再び大きな悲鳴が深い森林の中に鳴り響いた。

 一同の視線の先に、体中を蜘蛛の糸で雁字搦がんじがらめにされ、連れ去られるパルの姿が見えた。

「パルッ!!」

「師匠ぉぉっ。助けてぇ、食われるよぉ!!」

 必死に追いかけようとしたアウルだったが、木々を飛び移るモンスターの方が逃げ足が速かった。


 膝から崩れ落ちるアウル。

「クソッ。俺がいながら何たる不覚」

 悔しさと後悔を握り潰すかのように、地面の砂を握る。

 その様子を目の当たりにしていたリュウセイ、アンリ、リュウジ。そしてルナ。

 皆の気持ちは既に一つだった。


 そっとアウルに手を差し伸べるリュウセイ。

「今やったらまだ間に合うんちゃう?数は多いけど、力はこっちの方が上や。何とかなるやろ」

 ゆっくりとリュウセイの顔を見上げるアウル。

「協力してくれるのか?」

「それ以外に理由が必要なんか?」

 その言葉に勇気付けられたアウルはリュウセイの手を掴んだ。



 来た道を戻る一同。

 ロックスパイデスが木々を跳び移る際にできる独特な引っかき傷を目印に、パルが連れ去られたアジト=巣を探す。


 来る途中にも通った琥珀色の川を跳び越える。

 比較的流れも穏やかだ。

 そんな中、バランスを崩したアンリが足を踏み外し、川に落ち掛けた。

 その時、血相を変えたアウルが、アンリの手首を掴み引き寄せた。

「気をつけろ!!死の川だぞ」

「死の川?」

 アンリが言葉を繰り返した。

「何でも溶ける死の川だ。入ったが最後、気体となるぞ」

「硫酸の川って訳か……」

 リュウセイが呟いた。

「アンタら仮にも冒険者だろ?こんなの知ってて当然だぜ」

 不思議そうに顔を傾げるアウル。


 しばらく歩いていると、乗ってきた宇宙船が見えた。周りの木々を吹き飛ばし、船体が地面に突き刺ささっている。

 その巨大な円盤に目を限界まで見開き驚くアウル。

「なっ、ななな、何だッ……これ?」

 別に自分達が何処から来たのか、何者なのかを隠す必要も無かったので、リュウセイは説明を始めた。

「俺らは、これに乗って『地球』って星からこの惑星にやってきたんや。『不死鳥の御霊』を求めて」

 リュウセイの言葉にピンと来たのか、アウルがハッと息を呑んだ。

「もしかすると、いや……もしかして。アンタ達、『HIKARI』(光)なのか?」

 興奮と期待感で鼻息荒げに訊ねるアウル。

「ひかり?」

 リュウジが首を傾げる。

「アンタ達が、古の戦いで、闇からこの世界に光をもたらしたと語り継がれている……HIKARI」

 アウルの言っている『HIKARI』の意味が解らず鼻で笑うリュウセイ。

「確かに、俺らの前世がこの世界に来た事があるらしいけど。当時の事は俺らは知らんし」

「いや、間違いない。じゃあ、あの伝説も本当なんだ。無限の彼方から5人のHIKARI(光)が現われし時、この世の闇が光に帰す」


「何のこっちゃ?それよりもパルを助けに行くぞ」

「あぁ、そうだ。話は後からでも出来る。でも、アンタ達がいれば、この世界が変わる」

 救世主を見るような目でリュウセイ達を見るアウルは、気持ちを切替え、森の奥へと急いだ。






 つづく


誤字・脱字・矛盾など、批評など頂ければ嬉しく思います。

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