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第17話 「アンデッド再び」その2

 逃げるローブを纏いし者を追いかけるソラとアンリ。

 勝てる勝てないと言う計算など頭の中にはなかった。 ただ、是が非でも捕まえ、親友達の呪術を解きたかった。

 なびくローブの裾が、階段の角を旋回した。

 十三段の階段を一蹴りで跳び上がる相手に対し、ソラとアンリが一段飛ばしで階段を駆け上がる。

 屋上へと続く鉄扉の扉を開けた二人の前に、黒いフードから顔を覗かせる白い仮面が太陽に照らされる。

 口より上を全て隠している仮面。

 哀しそうな表情の仮面。

「アイツ等を呪いから解放しろっ」

 息荒げに、訴えかけるソラ。

 すると、唯一表情が読み取れる口元の口角が妖艶な弧を描いた。

「拒否する」

 男か女か分からない声が、ソラとアンリの鼓膜を不快に撫でる。

 すると、アンリは手首のブレスレットを青く輝かせると、召喚したエネルギーソードをソラに投げ渡し、レーザーアローを呼び出すとローブを纏いし者へ狙いを付けた。

 赤いレーザービームの弦を、赤光を放つエネルギーの矢で大きくしならせる。

「闘おうと言うのか?」

「拒否するならそのつもりだ」

 エネルギーソードのグリップにあるボタンを押すと、グリップの先端から、ほどばしる火花が噴射され、次第に刃へと姿を変えた。

「狙うなら私達で良いはず。 みんなは関係ないじゃない」

「残念だが、そうはいかない」

 そう聞いた時、アンリは弓を放った。 が、あっさりと二指で受け止められた。

「ふん。 この様なオモチャで、私を倒そうとはなんと愚かな」

 ローブを纏いし者は、手の平に乗せた赤い光矢に、ふっと息を掛けると、矢をアンリ目掛け飛ばした。

 それを切り伏せるソラ。

「今のをよく切り落とせたな。 随分と目が良くなったではないか」

「止まって見えたぜ」

 薄ら笑いを浮かべるソラだったが、正直、まぐれだった。 と言うよりも、考えるよりも先に体が動いていた。

 自分自身の何かが覚えていた感覚なのだろうか……。


 ――魂。


 すると、ローブを纏いし者は、両手を広げるとソラとアンリ見ながら後ろへ歩きだした。

「ではこの辺で失礼するよ。 彼等は元には戻らない。 このままずっと屍として彷徨うのだ。 だが、食事を取らない彼等は何日持つかな」

「待てっコノ野郎ッ!!」

 ソラは、一気に間合いを詰め飛び掛ったが、ローブを纏いし者は闇に溶け込み消えて行った。

「神城くん……」

「分かってる……アイツ等。 助からねぇ……」

 呪いを解く唯一の手段が消えてしまった二人は、呆然と立ち尽くした。



「おぉーら。 いっちょ上がりだ」

 アンデッド化したシンジ、タケル、みつほをロープで縛ったリュウジは手の平をパンパンと叩いて見せた。

 もちろん普通のロープではない。

 すると、教室を覗き込む生徒達からの拍手喝采が沸き起こった。

「へぇっへー。 コレが俺様の力だ」

 そこに力なく現れたソラとアンリ。

「ごめん……しくじった。 逃げられたっ!!」

 ソラは、ローブを纏いし者への怒り、何も出来ず相手を逃がしてしまった自分への憤りを拳に込め、黒板を殴りつけた。


 アンリに対し、いつも優しい言葉をかけてくれた美津穂。

 暴漢に襲われた時、命をかけてアンリを守ろうとしてくれた美津穂。

 そんな愛らしくも心の強い美津穂が、生気の無い崩れた表情でアンリを睨み付ける。

 アンリは膝から崩れ落ち目から涙が溢れた。

「ごめん、みっちゃん……ごめん……」

 アンリは、生徒達の目を気にする余裕も無く咽び泣いた。

「まただ……。 私、いつも誰かを救えない……。 今度は……みっちゃんまで……」


「まだ死んだって決まってないやろ」

 その言葉に顔を上げたアンリ、ソラ、リュウジの前に黒いバトルスーツを着込んだリュウセイが現れた。

「遅いっすよ」

 目に涙を浮かべるソラがリュウセイに訴えた。

「悪かったな。 てか、ちょっと待ってや」

 そう言うと、リュウセイは、手に持っていた野球ボール程の大きさの緑の球を、興味津々に覗き込む生徒や教師達に向けた。

 次の瞬間、一瞬の閃光が放たれ、目の前の全員が意識を失い崩れ落ちた。

「起きたら何もかも忘れてるわ」

 リュウセイは、次に青いスピリット「スフィア」をポケットから取り出すと、天井へ投げつけた。

 天井にぶつかるや、粉砕音と共に弾けとんだスフィアが、光の魔方陣を形成した。 そして、木の床に光のサークルを投影した。

「フォースライド……あ、ノアに戻るで。 コイツ等も一緒に」

 リュウセイは、アンデッドを指差した。



 三つのサイダーが入ったコップが、クリスタル製の楕円テーブルに並べられた。

「俺のおごりだ」

 ラウンジのマスターが、落ち込むソラとアンリに気を使ってくれた。

「ちぃーす」

 黙りこむ二人の代わりにリュウジが礼を言った。

 テーブルの脇から見える広大な銀河に、沢山の流星群が流れる。

 まるで、二人の心の中に流れる涙のように見えたリュウジは、サイダーを飲むように促した。

「飲めよ。 マスターのおごりだぜ」

 そう言うと、二人はゆっくりとコップを唇に付けた。

 その光景に苛立ちを隠せなくなったリュウジは、溜息を付きながらテーブルを叩いて二人の視線を集めた。

「お前ら、いつまでそうやって落ち込んでるんだ。 仕方ねぇだろうが、起こっちまったモンは。 幽霊みたいにじっとしている暇があんなら次にどうするか考えやがれ。 クソが」

 するとそこへ、リュウセイとヴァキルト博士が現れた。

「話は聞いたぞお前達。 大切な人が『マインダー』になったんだって」

 タバコの紫煙を吐き散らしながら、たずねるヴァキルトに「マインダーって?」と聞き返すリュウジ。

「ゲラヴィスク教に操られた者達の事だ。 お前達の前世が考えたネーミングなんじゃぞ」

 すると、リュウセイが口を開いた。

「ヴァキルト博士が、一つだけ呪いを解く方法があるって話や」

 その言葉に初めてソラとアンリは顔を上げた。




 つづく


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