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第14話 「奇跡の瞬間」その2

 リュウセイと羅嬬らじゅの下へと集結した、ソラ、アンリ、琥我こが

 目の前の巨大で恐ろしげな神像に勝てるのか? 不安が一同に過ぎる。その不安を真っ先に断ち切ったのは、ソラだった。

 穴の開いた天井から、怒り狂う神像の顔へ飛び降り、目の前で、銃のトリガーを引いた。

 瞬時に、神像の頭部が爆発を起こし、煙と砂が舞い散った。

「よしっ」と勝利を確信し、ガッツポーズを決めながら、落下するソラだったが、神像の能力を身をもって体感していたリュウセイと羅嬬には、ソレが『無意味』だと言う事が分かっていた。


 舞い散る砂嵐がソラを包み込み、砂の濃度が濃くなってゆく。すると、見る見るうちに、ソラは神像の手に握られていた。

「えっ!?」と何が起こったか理解に苦しむソラの目の前で、神像の右の拳が消え、飛び散った首から上の砂が徐々に膨らみ、頭部が再生された。ソラを握っている手が、消えた右手に合体し、握るプレッシャーを高める。

「この野郎っ」と、手から抜け出ようとするが、砂が体中に食い込み、身動きが取れない。

 

 アンリが、ソラを助ける為に跳ぼうとした瞬間、リュウセイが先に跳び上がった。

「しんじょぉぉぉおっ(神城)!!」と叫び、ソラの手を掴もうとしたリュウセイを、ソラを掴む拳が激突した。

 後方に飛ばされるリュウセイ。壁に弾かれ、前方にバウンドした所へ、神像の口から放たれる金色のエネルギーが直撃した。

 壁を突き破り姿を消したリュウセイを尻目に、口から放つエネルギーを地上で不安げに見上げる、アンリ、羅嬬、琥我へと向ける。

 急いで跳び上がる三人に、天井からレーザービームが放たれる。

「このっ」

 アンリは、ブレスレットを輝かせると、壁のモンスターの攻撃を耐え忍んだ光のヴェールを放つ盾を呼び出した。

 盾のグリップを強く握ると、薄緑色のエネルギーのヴェールが放射され、プロテクトエリアを拡げた。

 天井から放たれるレーザービームを、盾で跳ね返すアンリの横で、羅嬬と琥我が、剣でビームを切り伏せる。


 息をつく暇も無く、槍と空飛ぶ刃が同時に三人に襲いかかって来た。

 驚き、身構える所に神像が放つ金色のエネルギーが、三人を包み込む。

 焼けるような痛みと、全身を貫きそうな衝撃がアンリ達を襲った。

後方の壁に激突し、瓦礫の山に落下する三人を目の当たりにし、ソラが叫んだ。

「ちくしょぉぉっ!! 離せっ!!」

 その時、跳びかかるリュウセイの、光を纏った拳がソラを掴む手を粉砕した。

 神像の手から開放されたソラと、リュウセイが地面に着地し、神像との距離を開けた。

「どうやって倒すんですか? こんな怪物っ……」と神像を見上げながら、隣にいるリュウセイに問いかける。

「それが、分からんのや」と、大粒の汗を流すリュウセイ。

「じゃあ、こんなヤツ放って置いて、出口を探した方が良くないすか?」

「残念やけど、コイツが発動した以上、倒さんと無理や……出られへん」

「そんな……」

 絶望に浸りながら、ソラは歯を食いしばった。


 崩れ落ちる瓦礫の中から這い出てきた、アンリと羅嬬。

「琥我はっ!?」と心配するアンリに、「お前達、いつからそんな仲に……?」と羅嬬が問いかける。

「そんな事より、琥我がいない」と訴えかけるアンリの目の前の床から、白く細い手が見えた。

 羅嬬と一緒に、瓦礫を掘り起こすアンリ。

 ある程度瓦礫を取り除いたところで、琥我が自力で這い出てきた。

 立ち上がり、黒いローブに付いた砂埃を手ではたき「ゴメン、瓦礫に挟まって出れなくって」と心配を掛けた事に対し謝った。

「こんなの勝てるの?」と思いを言葉に漏らすアンリに、「確かにこのままでは、いつかこっちが力尽きる」と羅嬬が仮面の下から怒りを滲ませる。


 その時、琥我がある事に気付いた。


「これ、さっきの中庭にもあった古代文字だ」とアンリに、壁に書かれている文字を見せる。

 壁には、不思議な文字と、壁画が描かれている。

「守護神を倒せば道が開かれる……」

 そう読み上げたのは羅嬬だった。

 驚くアンリと琥我。

「もしかして羅嬬は、この文字が読めるの?」と頬に砂粒が付着している琥我が羅嬬の方を見る。

「以前にも、このような文字を見たことがある。全ては解らぬが、大まかになら理解できる」

「じゃあ、あの中庭の文字を見て貰おうよ、何か解るかも」とアンリは琥我に言った。

「わかった」と言い、三人は、来た道を戻ろうとした。


 

 振り返るアンリの目の前で、リュウセイが神像が振り下ろす足を避け、ソラが距離を取り銃を構えていた。

「寺村さんっ、さっきの部屋に何かココを出るヒントがあるかも知れないので、羅嬬さんと琥我と行って来ます」

 神像が暴れる中、大声で叫んだアンリに、「よっしゃ分かった。行って来い!! やけど、俺らもそんなに持つか分からんから早めに頼む」と言い、次の攻撃に神経を集中する。


 一度通った暗く狭い通路を、疾走するアンリ達。

 通路の移動がなく、あの中庭に戻れる保障は無かったが、もう我武者羅に突き進むしかない。

 そして、あの中庭に書かれていた事が、助けになる確証も無かった。それは、アンリ、琥我も同じだった。

 すると、通路の先に光が見えたのを確認し、「きっとあそこだ」とアンリが叫んだ。

 期待通り中庭に到着する事が出来た三人は、中庭の中央にあるサークルの前で立ち止まった。


 石造りの丸い円盤床に刻まれている古代文字を、膝を下ろし覗き込む羅嬬。

「この、コーペン・クラウンの槍で、遺跡を守る守護神の核を貫け。この槍が、守護神を止める唯一無二の方法である。ただし、この槍を扱えるのはスピリットを持つ者のみである」

「スピリットを持つ者って私?」とアンリは自分自身に人差し指を向けた。

「つまり、我々では、最初からこの遺跡から出る事が不可能だったと言う事か……。何らかのミスにより、君等に与えられた唯一の脱出方法であり、我々がスピリットを持ち出せない為の、『最終防衛システム』」

 羅嬬は、完璧なシステムに感服したのか、笑い出した。

「笑ってる場合じゃないよ羅嬬」と羅嬬の肩を掴んだ琥我。

「コーペン・クラウンの槍って何処にあるんだろ?」と言うアンリに、羅嬬は、円盤床の中心にはめ込まれている、ひし形のプレートを指差した。

 イエローサファイアの様な輝きを放つプレートに、アンリが手を近づけた途端、プレートが地面から五センチほど浮いた。

 おもむろに、そのプレートを掴んだアンリは、ゆっくりと引き抜き始めた。

 ――二メートルはあろう、白い槍。

 黄色のプレートが、縦になり、守護神の核を貫くであろう刃先となった。白い柄には、古代ローマを彷彿させるかのような彫刻が施されている。

「これで……」

 アンリは、地面から伸びる槍の刃先を見つめ、守護神の破壊を心に誓った



 守護神像の、両目から放たれる二本の赤い光線を、走って避けるリュウセイ。

 ――「エネルギー0%」と表示されている銃を消し去ったソラは、意を決して、神像に跳びかかった。

 ソラに気付いた神像は、リュウセイへの攻撃を止め、ソラに向かい、パンチの連打を放った。

 巨体からは想像もつかない高速の拳に、初めの三発は避けきれたもの、残りの十数発をまともに喰らい、茶褐色の床ごと大きく凹んだ。

「おいっ、大丈夫か!!」と叫ぶリュウセイ目掛け、再び、照射された赤い光線が、手首にはめられているブレスレットを破壊した。

「マジかいっ!?」と驚きを隠せないリュウセイ。


 床にめり込み全く動く気配の無いソラ。

 かすれ行く意識の中、「くそ……ぉ……。もう駄目か……」と呟く。

 その時、ソラの心臓が大きく脈を打った。

「クソッ、またかよ」と心の中で呟くソラ。

 すると、どこからともなく男の声が聞こえてきた。

 ――「お前の力はそんなモノか?」

 ――「情けない、また代わってやろうか? 俺と」

 以前も意識を失い、気付けば自分は、とてつもない事をしていた記憶がある。

 確かに、今、意識を失えば、あの守護神像に勝てるかもしれない……だが、そんな事をすれば、何も変わらないし、ソラの意思が入れ替わることに、少なからず恐怖と言うものもあった。

「嫌だっ。誰がお前と変わるもんか」

 ソラは、心の中で男に叫んだ。

 ――「そうか。だったら今度こそ、ガッカリさせるなよ」

 男の声が聞こえなくなると、ソラの意識が少しずつ回復してきた。

 力なく立ち上がるソラの目の前で、リュウセイが、激痛に顔を歪めながら悲鳴をあげていた。


 神像が振り下ろした足が、避け損ねたリュウセイの右足を踏み潰していたのだ。

「寺村さんっ!!」

 ソラの呼びかけにも応える事が出来ないほど苦しむリュウセイ。

 最後の一撃を与えようと、もう一度足を掲げた神像に、ソニックウェーブが、直撃した。

 重心を支えていた足が、切り裂かれ、後方に倒れた神像。

 即座に復元が始まる足を振り切り、琥我がリュウセイを担ぎ部屋の隅に避難させた。

「これで終わらせるんだからっ!!」

 コーペン・クラウンの槍を握り締めるアンリが、怒りを露にしていた。

「だが、どうやって核を見つけるんだ……」

 

 羅嬬の言葉が、最後の問題だった。






 つづく


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