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第13話 「守護神降臨」その3

 大きな大木の表面にはまっていた丸いプレートをつまみ上げたアンリが、感極まった様子ではしゃぎだした。

「あった、あった、あったよ!!」と、共にプレートを探していた琥我こがに合図する。

 琥我はアンリの下へと歩みより、丸い石のプレートを確認すると、共に喜びを分かち合った。

「すごーい。こんな所にあるなんて気付かなかった」と、琥我は軽くはにかんだ。


 出会った頃は、お互いを敵対視していた二人だったが、「ここから脱出したい」と言う共通の思いが、初期の心を溶かしていった。

 その光景は、まるで学校の教室で友達と戯れる姿に似ていた。


「あとは丸いプレートが一枚と、ひし形のプレートが一枚かぁ」とアンリは、木々が生い茂る中庭を見渡した。

 薄暗く不気味な遺跡内と比べると、緑の匂いが鼻腔を漂い、青い空を眺める事ができるこの空間が、『オアシス』のようだと感じていたアンリ。全てのプレートを探し出し、開かれた扉から再び遺跡の中に入るのが、少々憂鬱にさえ思えたが、ここから出る事が先決であった。


「でも、ここが地球じゃないって寺村さんが言ってたっけ。て事は、地球とよく似た環境の星って他にもあったんだ」と言いながら、空を眺めていたアンリの下へやって来た琥我が、アンリの肩を軽く叩いた。

「トントン。何ボーっとしてんのよ。見つけたよ、プレート」と、アンリの目の前でプレートを見せ付ける琥我。

「あっ、ごめんごめん。つい考え事しちゃって。あとは、最後の一枚だね」

 そう言うと、二人は再びプレートを探し始めた。


 草を掻き分け覗き込むアンリに、琥我が問いかける。

「ねぇ、あなた達は、一体何の為にゲラヴィスク教と戦っているの?」

 唐突な琥我の質問に答えようと探す手を止め、目を上にし考え始めた。

「何の為って、世界を救うって言う、とてつもなく大きな目標があるけど……とても怖くて、逃げ出したくて堪らない……。でも、私のお母さんは、ゲラヴィスク教に殺されたし……それに、大切な人をこれ以上失いたくないの。正直、復讐したいって気持ちもある。前世からの使命って事はそんなに意識していないけど、全てを終わらせないと何も始まらないような気がして。だから、今は……自分を変えてでも突き進むしか無いと思っているの」

 琥我の二つの瞳を見据え、静かに、時に力強く答えたアンリ。


「そっか。私も、あなた達と同じ」と言う琥我の言葉に「えっ?」と、アンリは驚いた。

「世界を救う為。そう信じ動いているつもり……確かに、私達は人を殺し、操ったりしてきた。でも、それは、地球を救う為って言う目標を達成させる為には仕方ない代償だと思ってきた。心の何処かでは、そんな日常に疑問を感じる事もあった。『本当に自分は正しい事をしているのか?』って。ゲラヴィスク教と、あなた達って向かう場所は同じなのに、何処で道が別れてしまったんだろうね……」

 次第に俯き加減に語る琥我の腕をアンリはそっと掴んだ。

「いつか……分かり合える時が来れば良いのにね。だって、私、あなたとなら分かり合えるような気がする」と微笑むアンリに、少し、目に潤いを見せた琥我。

「でも、ゲラヴィスク教は、あなた達を完全に目のかたきにしているし、それは中々難しいと思う」

「でも、琥我のような子もいるって分かっただけでも、なんかホッとした。結局は同じ人間なんだって。でも、私も負ける訳にはいかない」

 力強いアンリの言葉と同じ事を思っていただけに、琥我は、自分の事のように笑顔で頷いた。

 

 何処を探せど『ひし形のプレート』は見当たらなかった。


 広い中庭を丸く囲む石造りの壁に沿い何回も周り、木々の間、生い茂る草の隙間を探したが、全く姿を現さないプレートを相手に、途方に暮れていたアンリと琥我。

「本当にあんのかなぁ? ぜんっぜん見つからないよ」と鎖骨まで伸びる髪を掻き上げた琥我に、「一度、中央の所に戻ってみようよ」とアンリが提案した。


 中央にある、石造りの丸い円盤床。穴の周りに古代文字が彫られているが、読めるはずもない。

「とりあえず、今持っているプレートをはめてみようよ」と言うアンリに頷くいた琥我が、持っていたプレートを床にはめ込んだ。

 それに続き、アンリがプレートを、最後の丸い穴に押し込んだ。

 すると、十二個の丸いプレートが揃った床が時計回りに回転を始めた。

 回転力を増してゆく床にはめ込まれていたプレートが、宙に浮き、床と共に回転しながら、光を発し始めた。

「何が起こるの?」

 後ずさりをするアンリ。

 宙に浮いていたプレートが、互いにぶつかり合い、砕けては、またぶつかり合いを繰り返す。

 十二個あったはずのプレートが、一つ、また一つと消えてゆく。

 まるで、宇宙で新しい星が誕生する際の、隕石の衝突の光景を彷彿させるかのような光景だった。

 しばらくすると、十二個あったプレートが、一枚のひし形のプレートへと変形していた。石ではなく、イエローサファイアのような透き通った輝きを放っている。

 


 宙に浮き、光り輝くプレートを掴み取ったアンリ。

「これを、中央の穴にはめれば出口が現れるのね」

「それ以外考えられないし……やってみようよ」と琥我が期待の念を露にしている。

 アンリは、膝を下ろすと目の前の穴に、ひし形のプレートをはめ込んだ。

 ひし形のプレートが、穴に納まった途端に、一際輝きを増し始めた。

 その輝きが、床の目地に沿い広がってゆく。

 魔方陣を描くと言う感じではなく、中庭を囲む石造りの壁へと地面を這いながら突き進んでいる。

「何が起こるの?」と、アンリは不安げな面持ちで周囲を見渡す。

「わからない……」

 琥我自身も、「成す術なし」と言わんばかりに立ちすくむ。


 光の筋が壁へと消えると、二人の目の前の壁が大きく音を立て、上へと開いた。

「やったぁ、出口だ」と二人は声を揃えた。





 羅嬬らじゅの長剣より発せられる雷光が、睨み付けるリュウセイに狙いをつける。

 その目を焼き付けながら、羅嬬は長剣を振りかぶった。

 だが、次の瞬間、広い部屋の至る所の壁から金色の光が、壁や床の目地を這いながら向かって来た。

 その異変に、リュウセイの額擦れ擦れで、長剣を止めた羅嬬に、力みを開放し、大きく息を吐いたリュウセイ。

 

 その光は、部屋の中心に集中し、地面の中に溶け込んでいった。

「アレは何だ?」と立ち尽くす羅嬬に「恐らく、最終防衛システムやろ。誰かが発動させたんかも」と言い、ゆっくりと立ち上がったリュウセイ。


 すると、大きな振動が起こり、部屋中の無数の柱が倒れだした。

 地面のブロック状の床がほどけるように崩れだし、宙に浮き始める。

 慌てて部屋の隅へと避難したリュウセイと羅嬬。


 黒いバトルグローブの縁を見つめるリュウセイ。

 よく見ると、グローブの縁に、縦のメモリが振ってあり、少しずつ、光の線が上へと伸びていく。

「20%ってとこか……クソッ」

 リュウセイの様子に羅嬬が口を開いた。

「ほう、時間と共に、力が回復していってるようだな」

「だまれ」と一喝するリュウセイ。


 次第にブロック床が無くなり、茶褐色の床が剥き出しになった。

 宙に浮いていたブロックが、一点に集まりだし、ルービックキューブの様に、乱雑的にうごめき始める。

 その形は次第に、巨大な人型へと変わっていった。


「これは……?」と驚く羅嬬。

「最終防衛システム……『スプリガン』や。めちゃめちゃヤバイぞ」と、リュウセイの額に、違う汗が流れた。


 目の前に立ちはだかる巨大な神像。

 闘神を思わせるような、仏に通ずる井出達の神像。


 それは一瞬だった。

 瞬間的に、リュウセイと羅嬬に近づいた神像が、巨大な拳を振りかぶった。

 咄嗟に跳び避けた二人。


 巨体からは、想像も付かない程のスピードに慌てる羅嬬を、神像の目から放たれた赤い光線が包み込む。

「どわっ!!」と痛みに耐える声を発し、壁に激突した羅嬬。

「この野郎っ、死にさらせ!!」と崩れ落ちる羅嬬を尻目に、神像に飛び掛るリュウセイを、神像の裏拳がハエ叩きの様に弾き飛ばした。

「ぐはっ!!」


 なんとか地面に着地し、少し回復した力をスーツに込めるリュウセイを、羅嬬の長剣が掠った。

「お前、何考えてんねん!! まずはあっちやろ」と神像を指差すリュウセイだったが、「私には関係ない」と言い、リュウセイに襲い掛かる羅嬬。


「このクソボケぇぇぇッッ!!」

 気合と共に、リュウセイのスーツが音を立てて膨れ上がった。





 ~次回 第14話「奇跡の瞬間」~


 遂に動き始めた最終防衛システム『スプリガン』


 二つの敵を相手にするリュウセイ。


 そして、ソラ、アンリ、琥我、それぞれが神像の下へと集まる時、最後の戦いが始まろうとしていた。


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