第13話 「守護神降臨」その2
いよいよバトル一色の灼熱の内容となってます。
まぁ、「ありきたり」ではありますが、よかったら見てやってください♪
ソラが銃から放った青い光の球と、邪赦螺が全身から放った赤い光の球が空中で激突した。
凄まじい閃光が、薄暗く広い空間を、晴天の光が差し込む部屋と錯覚を起こす程に照らす。
爆音が木霊し、両者の光をすり抜けた光の球が、互いに急接近する。
迫り来る光球を跳び避けるソラ。だが、地上に向けていた視線を、上げた途端、目の前に邪赦螺の顔が見えた。
同時に、重く鈍いアッパーが、ソラの腹部をくの字に曲げた。
「すっ……スーツ……ッ!?」
――「スーツを着ているはずなのに!?」と言いたかったのだろうが、余りの衝撃に言葉が出なかった。
普通に殴られたかの様なダメージに感じたソラ。それだけで済んだのは『バトルスーツ』のお陰かもしれない。
だが、容赦無く、邪赦螺の猛攻撃がソラを襲う。
胸部を拳が食い込み、顎を下から叩き上げる。脇腹を膝が突き刺し、額を足が弾き飛ばす。
意識が飛びそうな程の痛恨の攻撃に、反撃も忘れ、ただ、サンドバックと化すソラ。
連続攻撃の最後に、邪赦螺は、胸の前で両手を組み韻を結ぶと急激に膨れ上がった、暴風を伴う光の球をソラの腹に捻じ込んだ。
衝撃と、裂傷感がソラを包み込む。
邪赦螺が放った光の球の正体は、「カマイタチの塊」だったのだ。
全身を切り刻む鋭い風を、バトルスーツで持ちこたえるが、剥き出しの顔を容赦なく切り刻む。
それでも、ソラは、必死に両手を顔の前で交差させる事で、顔へのダメージを最小限に抑えることが出来た。
「ほう、持ちこたえたか」と、余裕の笑みを見せる邪赦螺に、「次はヤベェかも……」と闘争心を鈍らせるソラ。
ソラの額から垂れ流れる鮮血が、岩の表面に紅い斑点を作ってゆく。
「冗談じゃねぇ……負けてたまるかよ……こんな所で、死んでたまるかよっ!!」
再び、自分自身を奮い立たせたソラ。
バトルスーツが膨れ上がり、ソラの感覚を研ぎ澄ます。
「うおぉぉぉぉっ!!」
決死の覚悟で突進し始めたソラを、容赦なく邪赦螺の回し蹴りが襲い掛かった。
相手の蹴りを両手で弾き返したソラは、スーツの力で回転力を上げたバックブローを邪赦螺の額に浴びせる。
空を裂き、大気が音と共に歪んだ。
ギリギリでバックブローを避けた邪赦螺は、お返しに、後方宙返りをしながらソラの顎を蹴り上げようと狙い定めた。
身を後ろに引いたソラの顎を邪赦螺のつま先が擦る。
バランスを崩した邪赦螺に、渾身のストレートを放ったソラだったが、気合を発した邪赦螺の周りに突如として現れた無数の光球の集中砲火を喰らわされた。
爆煙がソラを包み込む。
「くっくっく、まだそんな力が残っていたとは」
宙に浮き、両腕を組む邪赦螺。
「コレで終わりにしてやろう」
そう言うと、邪赦螺は、腰を低くし構え始めた。
再び、暴風を伴うオーラが部屋を赤く照らす。
両手を上に掲げた邪赦螺の手先から、紅い稲妻が部屋中の岩を包み込むと、岩が少しずつ浮き始めた。
爆煙が序々に薄まり、視界がはっきりし始めたソラに衝撃が走った。
部屋中の岩石が、邪赦螺の術と思しき技により、宙に浮いているではないか。
大した経験も積んで来ていないソラでも、この後、どんな事が起こるのかは大体想像がついた。
そして、その想像が現実の物へとなり始めた。
邪赦螺が、掲げた両腕をソラの方へ向けると、宙に浮く無数の岩石が猛スピードでソラに突進を始めた。
『何トン』とか言うレベルではない塊が、車よりも早く見える。
「ふざけんなっ!!」と気合を入れたソラは、果敢にも岩石に向かい走り出した。
強烈な攻撃で岩石を打ち砕こうと言うつもりは無かった。
そのような選択肢もあったが、残りの力を計算しても、全てを粉砕する事は不可能だと悟ったからだ。
ソラは、全ての感覚を研ぎ澄ませ、岩石をギリギリで避け始めた。
次々と、ソラに交わされた岩石が、地面を打ち砕く。
轟音と激しい振動、立ち込める砂埃が、ソラが走り去った後に漂う。
「8個、9個、10個っ……」と、数を数えながら、邪赦螺に近づくソラ。
最後の岩石を額スレスレで避けきったソラは、一気に飛び上がり、邪赦螺の顔面に、加速を伴った膝蹴りをお見舞いした。
骨が砕ける感覚が、ソラの膝に伝わった。
吹き出す鼻血を手で押さえ、地上に落下した邪赦螺。
ふらつきながら立ち上がる邪赦螺の鼻から、真っ赤な血が溢れ出す。
「これで『おあいこ』だな」と、額に流れる血を腕で拭いながら話すソラ。
「俺は負けない……負けるはずか無いんだっ、お前如きガキに」
そう言うと、邪赦螺は手の中に、刀を召喚した。
「じゃあ、俺も」
ソラは、ブレスレットを青く輝かせると、ハンドライトのような筒、リュウセイ曰く『エネルギーソード』を呼び出した。
ソラは、エネルギーソードのグリップ部にあるボタンを親指で押した。
次の光景に、ソラ、邪赦螺共に、呆気に取られた。
エネルギーソードから突き出ると思われた剣先は、ほどばしる火花となり、その姿は剣と言うよりも、単なる「手持ち花火」だったのだ。
「なっ、なんじゃコリャッ!」
依然として呆気に取られるソラに、「今ぞ!!」と、刀を振りかぶった邪赦螺に対し、咄嗟にエネルギーソードで、鍔迫り合いを成立させようとしたソラ。
普通に考えれば、火花で刀が防げる訳は無いが、今のソラにそのような事を考える余裕は無かった。
今、この瞬間が、闘いの場ではなく、第三者の立場から見ていれば、間違いなく滑稽過ぎて笑っていただろう。
だが、その考えは良い意味で裏切られた。
ソラが慌てて力んだ瞬間、ほどばしる火花が一点に集中し、勇ましい光の剣へと、その姿を変えたのであった。
邪赦螺の刀を弾いたエネルギーソード。
「す、すげぇ」とエネルギーソードの勇ましさに驚き油断していたソラを、邪赦螺の手の平から、放たれた光が包み込み、至近距離で大爆発を起こした。
地響きが部屋全体に響き、天井から砂埃が舞い落ちる。
巻き上がる爆煙の中から現れた、ソラ。
ふらつくその足からは、もう飛び跳ねる力すら感じられない。
立っているのがやっとと言った感じだ。
「これで、本当の終わりだ。あの世で、仲間を待っていろっ!!」
飛び掛った邪赦螺の刀が、ソラの胸を突き刺した。
背中から突き出る刀の刃先が、終わりを意味していたかに見えた。
――だが……
邪赦螺の腹に、何か熱い物が突き刺さる感覚が襲った。
自分の腹に目をやった邪赦螺に混乱と衝撃が同時に走った。
――腹から突き出る光の刃先……!?
背後から、何者かが、邪赦螺にトドメの一撃を喰らわせていたのだ。
「だっ……誰だっ……貴様は?」
口から血を流し、ゆっくりと、首を後ろに向けた邪赦螺に、先程の衝撃を越える事実が、追い討ちをかけた。
邪赦螺を背後から、襲った者……それは
――ソラだった。
「どう言う事だっ……!?」とかすれ声で、問いかけ、自分が刀を突き刺したはずソラを見た。
ソラの体に突き刺さっているはずの刀が、まるで空を斬るかの様に何の抵抗もなく動かせる。
その光景に、この謎の真相が邪赦螺には分かった。
――「ホログラフィティか……いつの間に」
邪赦螺を突き刺すソラが手に持っている、エンブレムが、怪しく光る。
それは、ソラが、「銃」・「ソード」と、最後に用意した「ホログラフイミテーション」と言うアイテムであった。
力尽き、崩れ落ちた邪赦螺の上に、緊張から開放されたソラは、重なるよう崩れ落ちた。
つづく
次回、いよいよ守護神登場です!