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第2話 「覚醒」その1

 真っ白で大きな雲はゆっくりと時間を掛け、その形を変えていく。

 

 鼻の上に大きなバンソウコウを貼ったソラは、今日も教室の窓際の席で肩肘を付きながら青空を眺めていた。

 

 自分には、もっと他に成すべき事があるのでは? 使命とか役割とか…… ソラは、何かモノ足らない生活に不満を抱いていた。

 

 いつか知らない世界を見てみたい、こんな小さな街で送る生活は退屈で、まるで籠に入れられた鳥のようだ。 

 雲の裂け目から自由に空を飛び回る鳥を、ソラは羨ましく思った。


 

「はいっ、今日はここまで。明日は期末テストだからしっかり復習しとけよ」

 担任でもある国語科担任の加藤は、お馴染みのセリフを吐く。

「起立」その言葉でソラは三時間目の受業がやっと終わったのを知った。

「礼、着席」号令と共に加藤は教室を後にした。

 

 椅子に腰を下ろし、再び青空を眺めるソラ。

 

 すると雲の隙間に何か光る物が見えた。

 その光は一条の筋を残し地上へと急降下している。

 その光を目で追っていくと、グラウンドの向こう側にある植物園に墜ちたのが見えた。

 ソラは驚き、目を疑った。

 周りの生徒達を見渡したが、誰一人今の異変に気付いている者はいない。


 空から墜ちてきた光が何なのか気になって仕方がなかったが、今教室を抜ければ四時間目の受業には間に合わない。

 

 そして担任の加藤の説教が待つ事になる。アイツの説教は無駄に長い上にねちっこい。

 

 悩みに悩んだソラは、仕方なく放課後に探しに行く事にした。

 少しくらい受業に遅れても良いかなと思ったが、今日はソラが今一番ハマっている「SOUL`d LOVE」(ソウルド ラブ)の新曲の発売日で、加藤のくだらない説教で、店に着いたときに売り切れはゴメンだった。


「おい神城、お前今日買いに行くんだろ? SOUL`d LOVEの新曲」紙パックのジュースを飲みながらソラに問いかけるシンジ。

「あぁ……」ソラのいい加減な返事にシンジは「お〜い? 聞いてんのぉ?」とソラの目の前で手の平を左右に振った。

「コイツが買わねぇ訳ないじゃん!」

 顔に包帯を巻いたミイラの様なタケルが近寄ってきた。

「お前、学校休んだほうが良かねぇか? まるでミイラだぞ」シンジは笑った。

 その光景に、ソラは愛想笑いをした。


 

 そして放課後、ソラは学校の植物園にいた。

 CDを買いに行きたかったが、時間が経つに連れ、どうしてもさっきの光る何かの正体が気になって仕方が無かった。

 5分くらい探して何も見つからないなら、さっさとCD屋に行こうと思っていた。

 

 植物園と言っても大したことは無く、園芸部が管理しており、四〜五種類の花とジャガイモやタマネギの様な物が育てられているだけで、その他は緑の葉を付けた木々が生い茂っている。

 

「この辺だったんだけどなぁ」そう言いながら、しゃがみ込み、茂みを両手で掻き分けた。

 少しずつ前進しながら探索していると、大きな木の下の茂みに直径一メートルほどのクレーターの様な穴が開いており、その中心で一際輝く物を発見した。


「多分コレだな……」ソラはその輝いている物を拾い上げた。

 

 丸い球体。 ガラス……? いや、水晶……?

 

 直径五センチほどの球体は透き通る水晶玉の様な物だった。

 ソラはその水晶玉を覗き込んだ。

「隕石なわけ無いよなぁ……」

 


 その時、背後からただならぬ殺気を感じた。

 振り返るソラの前に、一人の男が立っていた。


「そのスピリットを渡してもらおうか」




 つづく


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