第13話 「守護神降臨」その1
資格試験も終わり、やっと執筆に本腰を入れれるようになりました。
とりあえず、新堂冬樹さんの「女王蘭」と言う小説を今日、買って読み進めてます。
勉強になる事だらけです♪
「協力して欲しいって、どう言う事?」
アンリは、いつでも闘えるように構えた状態で問い質した。
「あなたも直ぐにわかる。この部屋から出れないって事を」と琥我は辺りに視線を流しながら答えた。
「えっ……何処かに一つくらいあるでしょ。出入り口なんて」と辺りを見始めたアンリに、「無いわ」と、あっさりと否定する琥我。
アンリは、琥我の言葉を振り切り辺りを調べ始めた。
まず、探したのは自分が落ちてきた扉だ。丁度背後に石造りの高い壁がある事から、壁の途中に扉があるのだろう。
だが、見上げても、何処にも通ってきた扉が無い。
更に視線を高めれば青空となってしまう。
その姿に見かねたのか、琥我は、溜息を一つつくと「あなたが落ちた後、直ぐに閉まったわ」と、教えた。
今度は、広い中庭をぐるりと歩き出した。
木々が生い茂る中庭の壁を手で触り、見回すが、彼女(琥我)の言うとおり、出入り口は見つからなかった。
すると、琥我は、アンリが現状を把握した事を確認すると、口を開いた。
「一つだけ、方法がある」
「何?」と問うアンリ。
「じゃあ着いて来て」と言い、アンリを中庭の中心へと案内する琥我。
木々の間を通り抜け、部屋の中心へと歩みを進める。
琥我に連れて来られたアンリの目の前の床には、不思議な文字と、幾つかの小さく丸い穴が円を描くように開いており、更にその中心にひし形の穴が開いていた。
丸い穴は全部で十二個。内、十個にプレート型の丸い円盤がはめ込まれている。
すると、琥我は、アンリの方へ振り返り、そよ風に黒髪を靡かせながら説明を始めた。
「ここにはめ込んでいる十個のプレートは、私がこの部屋で見つけた物。残りの二枚を見つけ、最後にひし形のプレートを見つけ、はめこめば、恐らく何処かの出入り口が開くはず」
「はず?」とアンリは、若干信憑性に欠ける琥我の説明に、唇を突き出し、聞き返した。
「そ、そりゃ私だって、こんな所は初めてなんだ。大体雰囲気で、分かるだろ」
琥我は、顔を赤らめ、アンリに対し初めて動揺し、慌てた様子を見せた。
その姿に、相手も自分と同じ『人』なんだと分かり、肩の力が抜けたアンリは、「じゃあ、探そっか」と言い、茂みの中を探し始めた。
青いエネルギーの放射線が、薄暗く広い空間に妖艶な雰囲気を演出する。
エネルギーは、空中で拡散分離を行うと、意思を持っているかの如く、獲物を狙いしつこく追尾する。
ごつごつとした四角い岩が、広い空間に乱雑に転がっている。その間を拡散分離した光の球が掻い潜る。
「冗談じゃ無いわよーん」と、ふざけた台詞を吐く邪赦螺だが、声からは余裕を感じられない。
岩と岩とを、飛び越えながら光の球の追尾を振り切ろうと逃げ回る。
後ろを振り返り、追尾する一つの光を手で受け止め、気合と共に粉砕した邪赦螺だったが、「熱チチチチチチッ」と手を振りながら再び飛び回る。
機械仕掛けの銃のフィンから、薄い煙幕が漂う。
液晶画面には「エネルギー残0%」「エネルギーチャージまで、およそ427秒」と表示されている。
ソラは、エネルギーチャージが完了するまでその場で待機しようと考えたが、相手が慌てふためいている今がチャンスだと思い、銃を一端消し去り走り出した。
闘争心が高まるに連れ、湧き上がる力と、機能を発揮してゆくバトルスーツに若干の喜びを感じながら無我夢中で敵を追いかける。
遺跡出発前のソラは、人知を超えた得体の知れない敵に対し怯えを感じていたが、何かが吹っ切れたのか……今、この瞬間だけは、「不安」や「恐怖」よりも、「爽快感」や「充実感」が大きくなっていた。
空手部として、試合で闘っていた時と同じ、「格闘家の血」が全身の快楽神経を刺激しているのかも知れない。
こんな生死が係っている闘いの場において、その様な感覚が現れてくる事実が、ソラは、やはり「格闘家=ファイター」なんだと言う事を改めて認識させてくれる。
ソラの黒いロングコートの襟が、風に靡き、黒いブーツが岩を蹴る。
拳に力を溜めると、心臓に響く重低音混じりの微弱な振動が、スーツのパワーアップをソラに知らせる。
光の球に翻弄され続けている邪赦螺に近づき、右ストレートを放つ。
殺気に気付き、ギリギリでソラの拳を受け止めた邪赦螺だったが、予想以上のプレッシャーに、岩に叩きつけられた。
「どぅわっ!」
思わず呼吸と声が同時に吹き出した邪赦螺。
「覚悟しろよ」と、岩にめり込む邪赦螺に向かい、言い放ったソラは、無数のパンチの連打を邪赦螺の腹と顔に向ける。
めり込む岩に、次々と亀裂が走るに連れ、仮面の隙間で白目をむく邪赦螺をお構い無しに殴り続ける。
だが次の瞬間、邪赦螺の目が赤く光ると同時に、体中から放出されるオーラに吹き飛ばされたソラ。
ソラは、三十メートルは裕にある反対側の壁に激突した。
一瞬何が起こったのか理解できなかったソラだったが、目の前の様子が変わった邪赦螺の姿に、納得せざるを得なかった。
邪赦螺の全身から放出される淡く紅いオーラと風圧。
追尾していた光の球が、激突する寸前で破裂した。
黒いローブが、体から発せられる暴風で宙に舞い、仮面が砕け散る。
真の姿を現した邪赦螺。
――鋭い刃物の様な細い目に、黒く妖艶な唇。
――腰の辺りで揺れている、結った長く黒い髪。
――上半身をさらけ出し、黒いレザージーンズが黒く光る。
――スマートな体系に反比例するかの様な盛り上がる筋肉。
それぞれが、先程までの「ふざけた口調」をかき消す程の存在感を発していた。
「俺を怒らせたな。キレたのは三年振りだ」と明らかに口調が変わり、睨みつける邪赦螺に、「手応え無さ過ぎて、飽き飽きしてたんだ」と笑みを見せるソラ。
邪赦螺の周りに、赤い光の球が現れた。
ソラが放った銃の光の球よりも大きく、三倍ほどの量だ。
ブレスレットが青く輝き、再び姿を現せた機械仕掛けの銃を構える。
液晶画面に表示されている「エネルギー100%」の文字。
画面下部に表示されている「全エネルギー放出」の文字を指先でタッチすると、銃全体のフィンが大きく開き、赤いラインがより輝きを増した。
「死ねぃ!!」
「くらえっ!!」
両者の光が互いを目指し発射された。
つづく
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