第12話 「罠は無邪気の如く」その2
試験も終わり復活!
これからどんどんヒートアップする内容ですので良かったらみてやってください♪
暗黒と水流の中、もがき苦しむソラ。
目の前の壁を破壊しようと拳を突き出そうとするも、余りに狭い空間の為、ノックするのが精一杯だった。
次第に意識が薄れていく中で、ソラの脳裏に『あるアイテム』の存在が蘇る。
それは、小型のスフィアがはめ込まれたブレスレットに、フォースライドから転送出来るようソラ自信がセットした、三つのアイテムの内の一つだった。
拳を握り締め限界の意識の中、ブレスレットに意識を集中するソラ。
青い輝きが暗黒の世界を照らすと同時に、ソラの手の中にメタリックシルバーの銃が現れた。
比較的大きめな銃、形はドライヤーにも似ているその銃。表面には至る所に排気用のフィンがあり、大きな銃口から、銃全体に赤い光のラインが施されている。
撃鉄は無く、その部分には液晶画面があり、銃のエネルギー、ロックオンマークが表示されている。
ソラは、ゆっくりと腹を引くと、そのギリギリのスペースに銃を構えた。銃口を壁に押し付けながら、残った力を振り絞り、トリガーを引いた。
満面の笑みを表した白い仮面を付けた邪赦螺も、仲間と逸れ誰も居ない狭く薄暗い通路を歩いていた。
「嫌になっちゃうわよん。いくらレグザ様の命令だからって、こんなカラクリダンジョン、入ったが最後よ」
ハスキーボイスで独特な口調の邪赦螺。頭部から足元までを包み込む黒いローブを靡かせながら通路の角を曲がった瞬間、邪赦螺の真横の壁が大爆発を起こした。
「どひゃゃゃっ!!」
驚き混じりの奇声を発す邪赦螺を、爆煙と大量の水が押し寄せる。
狭い通路は、膝の部分まで水が浸水してしまった。
「どーなってんのコリャ!?」と足をバタつかせる邪赦螺の目の前に、大きく咳き込み、壁に寄りかかるソラを発見した。
その光景にニヤつく邪赦螺。
「あんらまぁ。誰かと思えばぁ……誰だっけぇ?」と腕を組みながら記憶を搾り出そうとしている。
邪赦螺に気付き、ソラは呼吸を整えながらも銃口を向けた。
「お前っ、さっきの」と言うソラの言葉と同時に、「あぁぁーっ、思い出した。さっきの黒い奴らの後ろにいた弱そうな奴ぅ」と、胸の前で手の平を拳で叩いた。
膝まで浸かる水面に写る邪赦螺の笑顔の仮面が、波紋で更に笑っている様に見える。
ゆっくりと構える邪赦螺。
「お命頂戴」
「お前達さえいなければ……」
ソラは、目の前の敵を含む三人組がいなければ、何の問題も無く遺跡から脱出できていた事を考えると、沸々と憤りの念が溢れ出して来た。
銃の液晶画面に映し出される邪赦螺の姿に、赤く丸いロックオンマークが張り付く。
一気にトリガーを引いたソラ。
銃口から発射されたのは、弾丸では無く、青いエネルギーの放射線。
――ビームだ。
邪赦螺に向かい突き刺さる勢いで突き進むビームだったが、邪赦螺は跳び上がりビームを避けると、鉛色の天井を踏みつけ一気にソラとの距離を縮め寄る。
慌てるソラの右頬を、強烈な蹴りが襲った。
後方に大きく吹き飛ぶソラ。
それを更に追う邪赦螺。
すると、さっき邪赦螺に交わされたビームが、邪赦螺を追うように半円を描き追尾する。
「ノー!! アレはシツコイ系じゃん」と後ろを振り返る邪赦螺。
迫り来るビームを、邪赦螺の懐から現れた小さな円盤型の刃物が切り裂いた。
両手に握り締められた円盤型の刃物。
拳を一周している様に見えるその武器は振り回そうものなら近づき難いのは確実だと推測し、睨み付けるソラ。
円盤剣に真っ二つにされたビームが再び邪赦螺を追尾し始めた。
だが今度は、ビーム自ら分散し、十個程の光の球となって襲い掛かる。
「この銃すげー」とソラ自信、自分が選んだ銃に驚いた。
狭い通路が幸いし、逃げ場が少ない邪赦螺が慌てる。
「オーマイガーッ!!」
邪赦螺の周りを光の球が縦横無尽に回転しながら取り囲み、錯乱させる。
円盤剣を振り回すが、二本の腕で全ての光の球を切り伏せるのは不可能に近かった。
次々と邪赦螺に衝突し爆発を起こす光の球。
全身に力を込めるソラ。
黒いロングコートの中のシャツが肌に吸い付き、一気に膨れ上がる。
まるで、ソラの中に眠るスピリットの力を吸い出そうとしている様だ。
腕や足、体全体が筋肉質のように膨れ上がると、ソラは邪赦螺に飛び掛り強烈なストレートを放った。
鈍く大きな衝撃音と共に、邪赦螺は、通路の奥に吹っ飛び壁を突き破った。
機械仕掛けのレーザーアローを握り締めるアンリ。
狭い通路壁いっぱいに迫り来る壁のモンスター。
蟹のような大きなハサミを振り回し、紅い眼光を光らせる。鋭く尖る歯が、アンリを食す為、いや……侵入者排除と言う命令を実行させる為に狂気を滲み出させている。
「さっきの赤い光線……まともに喰らうわけには……」
アンリは、レーザーアローを放った。しかし、『硬い壁そのもの』には、何の効力もなかった。
モンスターの雄たけびに通路全体が振動する。
紅い目が一際輝きを増した次の瞬間。さっき向かってきた赤い光線がアンリの持っていたレーザーアローを貫いた。
「キャャッ!!」
爆発するレーザーアローに、伏せるアンリ。
「コノッ」
アンリは右手のブレスレットを胸にかざすと、青い閃光が通路を照らした。
つづく