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第12話 「罠は無邪気の如く」その1

 瓦礫がれきの中から這い出てきたリュウセイ。だが、その表情からは一切の余裕も感じられない。

 目の前の、穴が空き、崩れ落ちた幾重もの壁の向こう側から、羅嬬らじゅが歩み寄ってくる。

「この野郎ッ」リュウセイの眉間みけんに力が入る。

 羅嬬は、リュウセイの生存を確認すると、不適な笑みを浮かべた。

「フンッ。なんとか生き延びた様だな。だがどうする? まだ奥の手でもあるのか?」

 リュウセイは、鼻で笑った。と言うよりも、そうするしか無かった。『まだ大丈夫だ』と、自分に言い聞かせる為には……

「奥の手? 当たり前やろ。お前を倒せるだけの力が無くて、どうやって世界を救うんやって事や」そう言いながらゆっくりと立ち上がる。

 しかし、今のリュウセイに勝算は無かった。そう、今の言葉は間違いなく――『ハッタリ』だったのだ。

 

 手の中に、自分と同じ身の丈程の長剣を呼び出したリュウセイ。剣を握る手に力を入れると、刃に青い闘気がまとわりつく。

「スパッと一瞬で終わらせたる」そう言うと、リュウセイは攻撃が届かない距離にも関わらず、青光を放つ長剣を水平に一振りした。

 リュウセイの長剣が空を斬るや否や、青い真空波が大気を裂く音と共に羅嬬に目掛け伸びてゆく。

「ハッッ!」

 だが、羅嬬が気合いと同時に突き出した手の平で、真空波はもろくもかき消された。

 与える事が出来たダメージと言えば、羅嬬が被っているフードが、真空波の破片により破れた事くらいだ。

「嘘やろっ……」

 呆気に取られるリュウセイを前に、ゆっくりと突き出した手を下ろす羅嬬。

 フードが破れ、長い緑髪が腰の辺りで風になびく。


「ソニックウェーブの類か、面白い。だが、所詮はその程度。本物のソニックウェーブを見せてやろう」

 羅嬬の懐から現われた長剣から青い闘気が滲み出す。そして、刃が青く光を放つと羅嬬は気合いと共に、剣を振った。


 羅嬬が放った真空波は、一瞬でリュウセイの立ち位置を越えていた。

 間一髪、後方宙返りでかわしたリュウセイ。

「俺のんと大して変わらんやんけ」

「ほう」

 リュウセイの小馬鹿にした態度に、余裕の笑みで答える羅嬬。

 すると、目の前の巨岩の柱が真っ二つに裂け、スライドするように崩れ落ちた。

 リュウセイを取り囲む様に立っていた部屋中の柱が崩れ落ちる。

 振り返ったリュウセイの目の前のコンクリートの壁には、横一直線に亀裂が入っていた。


「ははっ……笑わすなぁ」

 状況を悟り、苦笑するリュウセイ。

 部屋の天井を支えていた柱が無くなり、重みに耐えれなくなった天井。途端に、生き物の様に天井にヒビが延びてゆく。

 

 そして、それは一瞬だった。


 強烈な破壊音と共に、天井、壁、床全てが暗黒の世界に崩れ落ちた。

 大量の岩石が、滝のようにリュウセイを直撃する。足場も無く、砂埃すなぼこりによって、方向感覚が全く無くなってしまった。

「ぐわっ!」

 暗闇の中、リュウセイのブレスレットが青く輝き出すと、金色の閃光が暗黒の空間を照らした。

 光の大剣を握りしめたリュウセイは、落ちてゆく中、頭上に迫り来る岩石を斬り伏せた。

 綺麗に裂けた岩石の向こう側から、仏の様な仮面が、リュウセイの大剣に照らされ現われる。


「居場所を教えるとは、何と愚かなっ」

「黙れ、このボケェェッ!」

 二人の剣が交わり、激しい弾き合いが繰り広げられた。

 近づく岩石が有ろう物なら、彼らに直撃する寸前で粉々に砕け散る。

 リュウセイの大剣が空を斬る。面、胴、足、肩、連続した殺陣を余裕の表情で弾き、返してくる羅儒。

 再び、両者の真空波が空中でぶつかり合い、激しい閃光を放つ。

 次の瞬間、強烈な金属音が響き渡り、リュウセイと羅嬬が鍔迫つばぜり合いになった。

 

 歯を食いしばるリュウセイの額に汗が流れる。

 人一人分程の大きさの大剣を、振りかざすリュウセイに対し、刃渡り五センチ程の長剣で鍔迫り合いが成立している事から、羅嬬には相当の力があると思われる。

 その光景を目の当たりにし、リュウセイに不安と苛立ちが募る。


「その太刀は、使用者の体力を糧に刃にエナジーを纏っていると見た。力に衰えが感じられて来たぞ」

 羅嬬には、リュウセイの残り体力が既に計算されていた。

「だぁぁまぁれぇぇっ!」

 羅嬬の剣を弾き返したリュウセイは、大剣を掲げ力を込めた。刃の輝きが今まで以上に増してゆく。

 持てる力を出来る限り大剣に充填しているのだろう。


 身構える羅嬬の目の前に巨大な岩石が向かってきた。

 岩石を切り伏せた中から、リュウセイの渾身の一撃が羅嬬に直撃した。

 振りかぶった大剣から放たれたエネルギーの塊は、羅嬬もろとも壁を突き破った。

 大きく開いた穴へ、羅儒を追いかけるリュウセイ。


 あと五メートル落下していれば、地面よりそそり立つ無数の槍で串刺しになっていたのは間違いなかった。




 つづく


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