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第11話 「前世が残した遺跡」その3

 ソラの意識が戻った時には、既にソコは狭く暗い空間だった。

 『落ちた』と言う事だけは今のソラでも十分理解する事が出来た。

 

 だが、次の瞬間、とても耐え難い現実がソラを待っていた。

 両手を横に広げる事もできない。振り返る事もできない……

 

 ――ここは完全に閉鎖された空間だ。

 ただ、足が地面に着いている事は感じられる。


「何も見えねぇし、全然動けない」

 閉所恐怖症の人にとっては正に地獄で間違いない。


 すると、遥か遠くの頭上から、水が流れる音が聞こえる。

 トイレの水でも流しているのかのようだ……


 途端にソラの額に水が弾く感覚が襲った。


「マジっ!?」

 タダならぬ予感を感じ取った瞬間、大量の水がソラの頭を叩き落とした。


 一気に全身が水に浸かり、止めどなく流れ落ちてくる水流の中、息を吸い込む準備が出来ないまま、酸素との闘いが始まった。


 ――「まずい、非常にまずい!」ソラは、心の中で絶叫した。





 不規則に動く床に気を取られたアンリの目の前を分厚いコンクリート壁が遮った。


「寺村さんっ!」と叫んだが、立ちはだかる壁に儚くも掻き消されるアンリの声。


 気付けば背後も壁に閉ざされ、四方を囲まれた完全なる箱と化していた。


「出口はどこにあるのっ?」

 左の壁を手探りで触ってゆくアンリだったが、映画で見る様な隠しボタンがあるはずも無く、焦りが募る。

「このっ」

 目の前の壁を力いっぱい殴りつけた。心なしかヒビが入った程度だったが、バトルグローブの効果で拳に痛みは感じなかった。


 その時、足元に揺れを感じる。


 いや、足下だけでは無い、アンリを取り囲む部屋全体がどこかへ移動しているかの如く、微動する。


「今度は何なの……?」

 壁や天井、床をめまぐるしくアンリの視線が動く。


 不安と何が起こるか解らない恐怖が、心臓の鼓動を加速させ、アンリの平常心を更に奪っていく。


 しばらくすると、部屋の振動が止まった。


 そして、アンリの目の前の壁がゆっくりと上昇し、長い通路が姿を現す。

 

 薄暗く奥が見えない、不気味な程に静寂に包まれている通路。

――それはまるで、獲物を飲み込む怪物の口の様に、アンリの目に映った


 背後は行き止まりの小部屋。

「行くしかない……か」


 アンリが、部屋から通路に出た瞬間、先程上昇した壁が一気に降下した。

「ひぃっ」急な出来事に驚くアンリ。

 振り返り、とにかく通路を奥に進み出す。


 その時、アンリの背後で、石が転がり落ちる様な音が聞こえた。

 振り返るアンリの目の前で、先程の壁がこちらに迫ってきている事に気付く。


「冗談でしょっ!?」

 アンリがそう言った次の瞬間、分厚い壁の表面は、みるみるその形を変えていく。


 壁の両サイドから、手の様な岩が飛び出し、中心には、石の牙が鋭く尖る大きな口……そして、通路の全てを見通すかの巨大な紅い眼が三つ。


 それは、誰がどう見ても命が宿っている凶暴なモンスターだ。


 大地を揺るがすかの雄叫びを上げるモンスターに、足の力が抜け、尻餅をつくアンリ。


 モンスターの雄叫びと共に、通路の天井付近にある、油受けの溝に火が付き、通路の奥まで延びてゆく。


 通路が明るくなり、モンスターの表情が更にハッキリと見える。


 そこで初めてアンリは絶叫した。


 アンリを侵入者と判断したモンスターは、「排除」と言う命令にただ従順に従い、それを実行しようと襲いかかってきた。


 迫り来る壁と共に、ハサミの様な手を振り回す。

 空かさず立ち上がり、バックステップしたアンリの顔の前を空振りする。

 空気がうねりを上げて裂ける音からして、まともに直撃すればタダでは済まないだろう。


 壁のモンスターの迫るスピードを計算しても、走れば逃げ切れるだろう。

 そう思い、アンリが振り返った瞬間、赤い光線が肩を掠めた。

 バトルスーツが焦げている事からして、数回でも、体で光線を受け止める事は死を意味している。


 何とか気を取り直したアンリは、右手首のブレスレットを青く輝かせ、機械仕掛けのレーザーアローを呼び出した。


 ――逃げ切れないなら闘うしかない。怖いなんて考えてられない!


 雄叫びを挙げ威嚇する壁のモンスターに向かい、アンリは、弓を構えた。




 仏の様な仮面を着けた羅嬬らじゅに殴り掛るリュウセイ。

 だが、羅嬬の手の平で軽々と受け止められた。


「レグザ様より、聞かされた通り、大した力量では無さそうだな」

「なんやと?」

 リュウセイが更に怒りを高めるのも束の間、羅嬬の回し蹴りがリュウセイの顔面を捕らえる。


 余りの衝撃に、ホールの壁を突き破ったリュウセイ。


「これで息絶えれば、お前に闘う資格は無いっ!」

 そう言うと、羅嬬の掲げた右手に青紫の輝きを放つ雷光が集中し始めた。


 辺りをも震わすほどのスパークが発生し、羅嬬が突き出した手の平からほどばしる雷撃が、リュウセイが吹き飛ばされた方角に向けて放たれた。





 〜次回 第12話「罠は無邪気の如く」〜


 水殺しの罠に掛るソラ。


 凶暴なモンスターの罠に掛るアンリ。


 羅嬬の手に、全く歯が立たないリュウセイ。


 果たして三人は、無事にスピリットを取り返し脱出する事ができるのだろうか?


 白熱のダンジョンバトルはまだ始まったバカリだ。


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