第9話 「新たなる決意」その2
風邪引いて熱でながらも書いているんで、ミスが目立つかもしれないですが、気付いた方、コメ頂けたら嬉しいです
視界に真っ白な天井が見えた。
ここはどこなのか…?
視線を部屋中に向けるソラ。どうやら病室の様だ…
「夢だったのか」
どこか腑に落ちない所もあったが、安堵の溜息を漏らすソラ。今までの事は夢だった、これが現実なんだと喜びを噛み締める。
しばらくの間、真っ白な天井を見つめていた…
寝返りをしようと体を横にしたソラだったが、目の前に認めざるを得ない現実がソコにあった。シルバーの装飾を施された黒いロングコートに、黒いジーンズ、シャツ、サポーターにシューズ。それらが、綺麗に纏められ、自分が寝ているベッドの横にある椅子の上に置かれていた。
「クソッ…夢じゃ無かったのかよ…」
先ほどの安堵の溜息は、深い苛立ちと憤りの溜息へと変わっていた。
その時、病室の扉が開き、2人の男が入ってきた。
「意識が戻ったか」とソラに向かい口を開く40過ぎの男。
「あ、はい…?」
「ここがどこだか解るか?」
考えるソラだが、聖都総合病院以外考えられない。
「ここは、『聖南大学付属病院』と言う所だ」
男の言葉で、初めてソラは自分の居る所がどこなのか解った。
「我々は、こう言う物だ」とお決まりのセリフと共に、金の装飾が施された手帳をソラに見せる。警察だ。
「私は、沢田。隣にいるのは、相田と言う者です」と自己紹介を始めた。
「昨日起きた、聖都総合病院でのテロに関して、病室で気を失っていた君に、何か知っている事や見た事があれば聞かせて貰えればと思って、此処に来たんだが」
「テロ?」と聞き返すソラ。
「まぁ、色々と有りましてね。それに君は、聖都総合病院に運ばれる前に、都立の星野高校での謎の爆発事件にも関わっていたらしいね」
自分の記憶が確かならば、テロでは無く、自分達と謎のローブの者達との戦いの傷跡だ。だが、そんな事を言える訳がない。
「神城 空君とか言ったね、率直に言うが私の感では、何かしら今回の2つの事件に君が関わっている気がして仕方ないんだよ」と鋭い眼光でソラを見つめる沢田。
その眼光に、体が締め付けられる感覚に捕らわれるソラ。否定しようとしても、声が出ない。
「まぁ、何か思い出したら此処に連絡をくれないか?」と携帯電話の番号が書かれた沢田の名刺を手渡されるソラ。
「解りました。電話します…」
「それと最後に…君の親父さんだが、残念だったな…ご冥福を祈らせて貰うよ」
「あ、はい…」と俯き返事をするソラを見ながら、沢田と相田は病室を後にした。
再び天井を見つめるソラ。
「もう親父は帰って来ない…か…」
ソラの脳裏に、親父の最後の言葉が甦る。
−−「なんで、僕だけ弁当が無いの? なんで僕の母親参観日はお父さんが来るの? どうして僕のお母さんは居なくなったの?って、いつも聞いてきたよな。その言葉聞く度に父さん凄く申し訳無くてな、俺のせいで母さんが出て行ってしまって。だから、お前へへのせめてもの償いだと思い、必死に頑張って来たつもりだった。本当にスマン…」−−
今思えば、あのタイミングで言うべき事だったのか少し疑問にも思う。親父は、自分がもう少ししたら殺されてしまう事を知っていたのか?
何にせよ、真相は解らない。本当に心からの声だったのかも知れない。あの涙の意味も…
視線を黒い服に降ろすと、椅子の下に小さな白い紙袋が置かれているのに気付いた。
聖都総合病院の病室で、親父との最後の会話を交わした際に、テーブルの上に置いてあったのをうっすらと覚えている。
ベットから起きあがり、紙袋の中を覗き込む。白い布に包まれた物を取り出すソラ。
「もしかして、弁当!?」
ソラの予想通り、白い布の結び目を解くと、毎朝親父がテーブルの上に置いていてくれる弁当箱だった。
その時、白い布の隙間から一枚の紙が落ちたのに気付き、拾い上げる。
『これでも食べて、早く元気になれよ!』
凄く短い一文…
その文が書かれている紙をじっと見つめるソラ。
弁当箱の蓋を開けたソラの目に、涙が溢れ出た。
色取り取りのおかずに、ふりかけが掛かったご飯。昨日の野菜だらけの弁当とはまるで正反対だ。
割り箸を割り、冷めたご飯を口に運ぶ。
「ウメェよ…」
涙を流しながら、卵焼きを頬張る。確かに冷たく、普段なら旨いとは言い難い。だけど、とても旨く感じた…
溢れ出る涙を拭う事も忘れ、ただ、必死に親父の最後の弁当を噛み締めた。
ソラの病室を後にし、長い廊下を歩く沢田と相田。
「どう思う?相田」と、部下である相田にソラとの会話の感想を伺う沢田。
急に質問され、驚く相田。
「いや〜、どうっすかね…?」
「何か気付かなかったか?」
「確かに、2件の事件に関して一番関わりが深そうなのが、あの神城 空って奴ですけど、あの現場を見る限り…彼には無理っしょ」と、事件とは、無関係と主張する相田。
「じゃあ、病室で気を失っていた彼が、どうして屋上で死んでいた父親の事を知っている?」
「確かにそうっすね」
相田は改めて、沢田の洞察力や観察力に驚かされた。続けて沢田が口を開く。
「もちろん、彼が今回の事件の黒幕とは俺だって絶対にあり得ないと思っている。ただ…何かしら関わっている事に変わりはないだろう」
「でも、あの現場、不可解な事だらけっすね…」
「俺も、今まで色んな現場を見てきたが、もっとも不可解な現場だ。コイツはとてつもなくデカク、面白い事件だな…」
相田の見てきた限り、今までで一番楽しそうな顔をしている沢田だった。
つづく