第2章〜スピリット争奪戦〜 第6話 「初戦」その1
これまでの出来事が全く理解できないソラは、モヤモヤする気持ちを抑えようと、目を閉じてじっとしていた。
すると、病室の扉がゆっくりと開く音がした、背筋がゾクッとしたソラは恐る恐る目を開けた…
するとソラのベッドを囲むかの様に、黒いローブを纏い口から上を白くピエロの様な仮面を付けた者が3人立っており、病室の扉の外には警備員が2人たっていた。警備員は2人共、ソラが学校の植物園で襲われた男と同じ様に、首が座ってなく、虚ろな目をしており口からはヨダレが流れている。
ソラは状況が飲み込めなかった。
その時、黒いローブを纏った者達の一人がソラを見ながら口を開いた。
「まだ子供じゃないかぁ、美味しそう」
女性の声…
すると隣にいるもう1人のガタイの大きな黒いローブを纏った者が口を開いた。
「こんなガキが俺たちの驚異になるとわな…さっさと済ませるぞ」
最後の一人の小柄なローブを纏った者はソラのお腹の上で手の平を広げた。
「悪いな…世界の為だ…」そう言って小柄な黒いローブの男はソラのお腹に手をねじ込もうとした! ソラは顔が引きつり、殺されるかもしれないと言う恐怖で動けなかった。
その時!
「あたしがヤルよ」黒いローブの女は、先ほどの男に変わり、ソラの腹部に一気に右手を突き刺した!
ソラに激痛が走る!「ぐぅぁぁぁぁあああ」内蔵を直接、手で掻き回されている感覚だ…
「ぐぁぁぁがぁぁっ」
「あははははっもっと鳴きなさい、叫きなさい」
ソラはあまりの激痛の末、声が出なくなってきた。
「ほ〜ら、キミの心臓みぃ〜つけた」
ローブの女はソラの心臓の形や触った感触を楽しんでいる。
その時、ガタイの大きなローブの男がローブの女に言った
「おいカルマ!俺たちに遊んでいる時間は無いんだ!」
「…わかったわよ」ローブの女は不機嫌そうに、ソラの体の中で何かを掴んだ。
ソラは既に意識が朦朧としている。
ローブの女がソラのお腹から手をゆっくり引き抜くと、まばゆい白い光と共に水晶玉が現れた。
「あらぁ〜、うっとりぃ〜」
小柄なローブの男は光を見ながら口を開いた。
「わざわざ俺たちが出向かんとイカンとわな‥だが、まぁこれで任務完了だな」
その時、病室の扉が開いた。「神城君から離れろっ!」ソラの絶対的な危機に駆けつけたアンリは、手を正面に突き出した。
手首に付けてあるブレスレットが青く光り出した瞬間、アンリの手の中に、弓が現れた。弓と言っても、この世には無いような、機械仕掛けの弓だ。弓の上下の先端から赤いレーザーの様なモノがお互いに向けられ、一直線の弦となり、本来の弓の形に近づいた。
アンリは弓をローブの女へ目掛けた、そして弓を持っている反対の手に、赤い矢の形をした光の塊を作り出し一気に撃ち込んだ!
黒いローブの女は片手で矢を受け止めた。
「こしゃくな」
その時、ソラが自ら女の手ごと水晶玉を自分の腹部にねじ込んだ!
「がぁぁぁぁぁあああっ」
「しまった!」ガタイの大きなローブの男は叫んだ。
強烈な白い光が病室を包み込む…
光が収まった時、ソラは植物園で見た時のような恐ろしい形相をして、ベッドの上の立っていた…
覚醒したソラを見た小柄なローブの男は後ずさりした。「クソッ!カナリ厄介になった」
「神城…君…?」アンリは目の前のソラのいつもと全く違う雰囲気に、本当にソラなのか不安に思った。
するとソラは口を開いた「神城ぉ?俺は『シオン』だっ」不機嫌そうに言った。
ガタイの大きなローブの男はボクシングスタイルの構えをとった。
「お前ら!任務変更だ、力ずくでシオンを抹消する」
「ふんっ、ヤレるもんならヤッてみな!」ソラ…いや、いまの状態ではシオンと呼んだ方が正しい…シオンはニヤリと笑い、身構えた。
その光景を見ていたアンリに警備員が警棒で殴り掛かってきた。
「ふんっ」
アンリはビックリして腕をクロスにして顔をガードしたが、後頭部を思いっきり打ちのめされた…だが、アンリは不適な笑みを浮かべた。
−−「全く効かない」−−
アンリは警備員2人をまとめて殴りつけた。拳が当たった感触は凄くソフトな感じがした。スーツの力で、警備員達は10メートルも吹っ飛ばされ、入院病棟の廊下を突っ切った。
そのままアンリは弓『レーザーアロー』を身構え、エネルギーの矢を引く、だが、アンリは躊躇した、だって元は普通の人間なのだから…
その時リュウセイの言葉がアンリの頭に蘇った。
−−「あの手の呪術は何回か見たことあるけど、1度操られたら、死ぬ以外助からん…化け物として生きていくんなら、いっそ殺してあげた方が、彼らにとって幸せな事かも知れん」−−
…………………………アンリは涙をこらえ矢を解き放った!
ガタイの大きなローブの男は正面からシオンを殴りつける。だが男の拳がシオンに到達する前にシオンの拳が男の腹を撃ち込んでいた! 男は病室の壁を突き破って姿を消した‥
シオンはそのまま直ぐに、両手を左右に広げ、残りの2人の黒いローブの者達に向かって、光の塊を撃ちはなった! 小柄なローブの男は窓ガラスを突き破り6Fの高さから外に放り出され、ローブの女『カルマ』は廊下の壁を突き破って姿を消した。
「うぅおおおおおおおっ!」次の瞬間、ガタイの大きなローブの男は、雄叫びを上げながら凄い速さで壁を突き破り、シオンを力いっぱい殴りつけた。
シオンも病室の壁を突き破り姿を消した…
コンクリートの床に光りのサークルが現れ、次の瞬間、渦巻く風と共に、リュウセイが姿を現した。リュウセイの目の前には槍が突刺さったソラの父親が血の海で横たわっている…
「クソッ、遅かったか」
その時、リュウセイ目掛け、刀が振りかぶって来た!
リュウセイは紙一重でかわし、刀の持ち主を見た。リュウセイの前に現れたのは黒いローブを纏い、口元から上をピエロの様な悲しい仮面を付けた者だった。
その姿を見たリュウセイは口を開いた「やっぱりゲラヴィスク教の仕業やったんか」
「ガジャル様復活の邪魔をするなら死んで頂きます」
「女か、あいにく俺は基本女は殺らん趣味やねん」
リュウセイは鼻で笑った。
「黙れっ!」ローブの女は手にしていた刀に念を込めると、刃が赤く光り出した。
「やるしかないか」リュウセイは右手を正面に突き出すと、手首のブレスレットが青く光り出し、手の中に刀が現れた。
ローブの女は赤く光った刀を思いっきり振りかぶった。赤い一筋の閃光は真空波となり、空気を裂きながらリュウセイ目掛けて伸びてきた!
リュウセイも刀の先端に意識を集中し青い光に包まれた刀を振りかぶった。
赤・青、互いの閃光が衝突と共に激しく散った…
つづく