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第4話 「宿命と役割」その3

 「おはよ〜アンリぃ」

 アンリが教室へ入ると、いつもの明るい挨拶が飛んで来る。

 「みっちゃん!おはよー」

 アンリはすっかり元気になっている美津穂に喜んだ。

 「昨日はゴメンね」

 申し訳無さそうにアンリは美津穂に言ったが「えっ?何の事?」と昨日の事をまるで忘れている様だ。

 −−「あぁ、無傷でな。その変わり、さっき襲われた時の記憶は消して貰う」−−

 アンリの脳裏にリュウセイの言葉が甦った。

 「あーーん…何でも無いよ気にしないで」アンリは無理に笑顔を作って話しを誤魔化そうとしたが、美津穂は「気にしないでって気になるよ〜」と口をとがらせている。

 「だから何にも無いってぇ」

 「教えろぅ!このヤローっ」

 美津穂はアンリの脇を両手でこそばした。

 「コチョコチョ〜」

 「アハハハハハハっ…」


 教室の時計に目をやった

 −−11時15分−−

 2時間目の受業は担任の加藤による日本史の授業だ。2時間目も後半に差し掛かった頃、教室にどこからともなく轟音が轟く。

 グォォォォォ…ガァァァァ…

 「誰だ…?」担任の加藤は黒板にチョークを走らせるのを止めた

 「誰だ…?」

 グォォォォォ…ガァァァァ…

 「誰だぁ……?」

 グォォォォォ…ガァァァァ…

 全く止む事のない音は更に激しさを増している。

 「貴様かぁ…」

 グォォォォォ…ガァァァァ…

 「神城ぉぉぉぉぉぉぉっ!」

 加藤の怒声が教室に響き渡った。

 ……………

 グォォォォォ…ガァァァァ…しかしソラは全く起きる気配がない 。

 加藤は目が充血し、顔を真っ赤にしながら口を開いた「お前らぁぁ、後は自習だぁぁっ」

 加藤はソラの胸ぐらを掴み教室から引きずり出した。教室の扉が甲高い音と共に閉まった!

 教室から一斉に笑い声が起こった。アンリも大声で笑った。


 「ただいまぁ〜」アンリはダルそうに帰宅した。

 しかし、アンリはいつもと何か違う、家の異変に気付いた…

 いつもならアンリのママが「おかえりぃ杏里ぃ」と返事をくれるが、今日に限っては、人気が無く、家中の電気も付いてなく真っ暗だった。

 「出掛けてるのかぁ」とアンリは心の中でつぶやいた。

 アンリは電気のスイッチをプッシュした。が、蛍光灯が光らない…

 パチパチと2・3回プッシュしたが全く照明が付かない。


 その時、台所からビチャっと言う物音が聞こえた! アンリは薄暗い暗闇の中、恐る恐る台所に向かった。

 家の外を走る車のライトが窓から家の中を照らした。

 そのライトに映った光景にアンリは絶句した!

 母親の頭を槍の様な物が貫き、壁に母親もろとも突き刺さり、辺りは血の海になっていた。母親の顔はよっぽど恐ろしい物を見たのか、恐怖そのものの顔をしている。


 その時アンリは後ろの気配に気付いた。そこには30歳くらいの男が口から涎を垂らしながら、首も座ってない状態で立っていた!

 「スピリットをよこせぇ…」

 男はアンリにゆっくりと近づいてきた。

 アンリは背筋が凍りついた…

 昨日襲われた暴漢とは、明らかに感じるものが違う邪悪で不気味なモノを感じる−−普通の人間ではない−−


 男はアンリの首を片手で締め上げた。アンリの足が地面から浮いた。

 息が出来ない!苦しい!…死ぬっ。

 アンリは無我夢中で、台所に置いてあるフライパンをなんとか掴み、男の頭を殴り付けた。

 鈍い音がフライパンから手を伝わり聞こえてくる。男は一瞬よろめいたが、何事も無かったかの様にアンリに向かって来る。

 人を殺すかも知れなかった自分の行動に頭の中が混乱したが、それ以上に、全く効いていない男に対して更に驚き、気がおかしくなりそうだった。さっきの一撃なら普通の人間なら意識を失うはずだ。

 今度は、男の肩を目掛け振りかぶった!しかし、男はフライパンを受け止め、アンリごとを持ち上げた。

 アンリはフライパンから手を離し、すかさず台所の引き出しから包丁を取り出し男に向けた。

 昨日、自分に向けられていた包丁を今度は自分が男に包丁を向けている。 自分がこの間の暴漢と同類の様な錯覚がして不快感が襲ったが、状況が状況だ。


 男は手に持っていたフライパンを床に捨てた。

 「渡せ、スピリットを渡せ…」男は息にも似た掠れ声でつぶやく様に喋った。

 「これ以上近づいたら、私、あなたを刺すかも知れない!」アンリは力強く言った。

 −−「もう逃げたくない」−−

 「うぅぅああああっっ!」アンリは男の腕に包丁を突き刺した!

 −−「相手は人間じゃ無い」−−アンリには確信があった…のかも知れない。


 男は苦しそうにしながら呻いた、が、その声は少しづつ笑い声に変わって行く。

 「ふんっ」男は自分の胸に刺さっている包丁を抜いた。

 「遊びは終わりだ、お嬢ちゃん」男はそう言うと、一気にアンリとの距離を縮め、殴りかかって来た。

 アンリは驚いて、その場にしゃがみ込んだ。

 運良くアンリは男の攻撃を避けたが太い丸太の柱が破壊音と共に簡単に折れた。

 −−「当たったら死ぬ!」−−


 アンリは急いでその場から抜け出し、外に逃げる為に玄関に向かった。すると男は壁を突き破り玄関の前に立ちはだかった。


 アンリは次の逃げ場を探したが、玄関以外は無い。

 男が歩み寄ってくる。

 アンリは暗闇の中、後ろの階段を使い2階へ逃げ込んだ。


 「はぁっ…はぁっ…」アンリは息を潜め、自分の部屋のクローゼットの中に隠れていた。隙を見つけて一気に逃げ出すつもりだ。

 自分の耳に全ての神経を集中させるアンリ。男は母親の部屋を捜索している…男の足音が1階へ下りていった。



 アンリは意を決しゆっくりクローゼットを開けた…

 目の前10センチほどに男の顔があった!

 アンリは心臓が飛出るかと思うくらいビックリし、あまりの驚きに悲鳴も出なかった。

 アンリは腰が抜けてその場に崩れる様に座り込んだ。

 −−「絶対絶命」−−


 その時!

 男の体が真っ二つに裂けた。


 ……………

 「全く世話の掛かる餓鬼やわっ!」

 暗闇の中現れたのは、長い剣を持ったリュウセイだった。







〜次回 第5話「決断」〜



 杏里の下す決断とは…?



 そして、物語は「アノ」事件に繋がる



 空が病院で目覚める時、壮絶なる闘いが始まろうとしていた。



 これまでの話はプロローグにすぎない…


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