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第4話 「宿命と役割」その2

アンリは救急治療室の隅にある小さな更衣室で、服を着替えていた。血だらけのブラウスを脱いだアンリは、目の前の鏡を見て不思議に思った。

 「刺された傷が無い…」

 足の刺された痕も消えている。

 しかし、今のアンリは色々な事が有りすぎて、これくらいの事では驚きは無かった。


 救急治療室の隣は談話室になっていた。学校の教室くらいの大きさの部屋は扉側以外の壁が全てガラス張りで、一面に広大な銀河が見える様になっている。そして、天井にある丸く平たい照明は、談話室を独り占めするほど大きなガラス製の楕円形テーブルを煌びやかに照らしている。


 談話室の鉄製扉が自動で横に開いた。空気圧が抜けているようなプシューッとした音が開く扉と同時に鳴った。

 テーブルと同じ材質のガラスの椅子に座っているリュウセイは、「おぉ、似合ってるやん」とアンリを下から上に目をやりながら言った。

 「なんか、体が凄く軽くなった気がする」

 アンリは軽くジャンプした。

「さっきも言った通り、その服はバトルスーツやからなぁ。闘う為だけを考えられて作られてるからな」リュウセイは両腕を胸元で組みながら言った。

 「それと、その服やけど、要は俺達の体内にあるスピリットの力を引き出してくれるスーツやねん。でもスーツにも力を引き出せる限界があるから、いつかはスーツ無しでも闘える様に自分自身でスピリットの力を、限界まで引き出せる様にならなアカンな」

 「あ…うん」アンリはあまり理解していなかったが取りあえず返事をした。


 「じゃぁ、まず何から話そうかな…」リュウセイは頭の中で整理しながら難しそうに口を開いた。

 「これは、ずっと昔の話しや。昔って言っても、この地球が生まれる前の地球…。今の地球は数えて大体25代目の地球なんや。

 地球の寿命や、隕石の衝突、文明の崩壊・異星人との戦争を繰り返し、その都度地球は粉々になり再び生まれ変わって来てん。そして、生命や文明も同じ様に生まれ変わって来た。」

 「でもそんな事、テレビでも学校の教科書でも聞いた事ないわ、信じられない…」アンリは嘘みたいな内容に鼻で笑いながら言った。

 「まぁ最後まで聞けや」リュウセイはアンリの言葉を止めた。

 

「今までの調べで解ってる事では、事の始まりは23代目の地球での事、今と同じ様な文明社会が存在してたらしい。その当時に『ゲラヴィスク教』と言う宗教があって、その中で信者達から崇められていた神がおった…その名を『ガジャル』。

 ガジャルは、この世の再生の神とされていた。当時の文明社会も今と同様、地球の資源を恐ろしいスピードで消費し、環境を汚し続け遂には、天変地異の異状気象・災害を引き起こす所まで来ていた。

 ゲラヴィスク教の信者達は、幾度も環境保護を訴えたりして来たが、全く耳を傾けてくれない政府・世界に嘆き・怒り、ガジャルにこの世の再生を願い祈り続けた。

 その当時のゲラヴィスク信者の中で群を抜いて力を持っていた奴が、やっとの思いでガジャルを復活させた…。

 しかし、彼らが思っていた神とはほど遠かった…ガジャルの「再生」の意味は「世界の破滅」を意味していたんや。」


 「世界の破滅‥?」アンリは問い返した。

 

「地球、それを囲む全ての宇宙・この世の破壊…。絶望の淵に追い込まれた時に、5人の救世主が現れガジャルと激しい闘いを繰り広げた。

 長い闘いやったらしい…。闘いの末、5人の救世主は苦戦を強いられ、ガジャルを倒す事は不可能やと悟った、彼らには結局「封印」と言う手段しか無く、やっとの思いでガジャルをこの世の果てに封印する事に成功した。

 だが当時の地球が滅んでしまえば、またガジャルの封印が解けて、世界の危機が訪れる。

 だから5人の救世主は自分達の力を結晶にし「スピリット」と名付け、後世の生まれ変わりが現れた時に、地球の各地に用意してある遺跡にスピリットが現れるようにした。

 自分達の生まれ変わりがまたガジャルを封印する為に…

 そして24代目の地球に生まれ変わった5人は激しい闘いの末、ガジャルを封印する事に成功し、また彼らも、次の生まれ変わりの為に、スピリットを作った‥俺やお前、あと残りの3人の為に…」

 「つまり、私達の使命は…」アンリが言った 。

 「この25代目の地球を守る為、スピリットの力を使い、ガジャルを封印する」

 リュウセイの力強い言葉に、アンリは今までの内容が本当の事なんだと判り始めた。


 「だから、残りの3人と3つのスピリットを早く見つけ出さんと、ガジャルにこの世を滅ぼされてしまうねん。

 これは宿命や、俺たちの…だから力を貸してくれ、松之宮 杏里!」

 アンリは直ぐには頷けなかった…


 リュウセイから自分たちの宿命と役割を告げられたが、アンリは理解できなかった…と言うよりも理解したくなかった。もし、受け入れてしまうと、自分の人生が180度変わってしまう事にもなる。

 いっその事、夢であって欲しかった。


 「ゴメンなさい、私にはできません…」アンリはうつむきながら言った。やはりアンリは今の自分の人生を変えたくは無かった。むしろ、自分からこんな人生に飛び込む人は、そうそう居ないだろう…。


 「っ、でも、君しかおらへんねん(居ないんだ)…協力してくれ!」

 リュウセイは予想していた返答とは違う返答が帰ってきたので動揺した。

 「新たなスピリットの在り処が見つかったんや、手に入れるのは俺一人じゃ厳しい、君の力が必要なんや」

 「ゴメンなさい…」アンリはそう言って談話室を後にした。


 「クソっ!」リュウセイは唇を噛み締めテーブルを拳で殴りつけた…


 集中治療室に戻ったアンリの目に入って来たのは空のキュアラクトだった。

 「みっちゃんは!?」アンリは近くに居た白衣の女性に尋ねた。

 「彼女は傷が完治しましたので、先ほどまでの記憶を消させて頂き、只今、自宅の方にスフィアゲートでお返ししました」

 「じゃあ私も家に帰して下さい!お願いします」

 「解りました、では、スフィアルームへご案内します」

 アンリは女性に連れられ、初めに連れて来られたスフィアゲートの機械の上に立った。

 「また何時でもお待ちしておりますよ、松之宮様」女性はニコリと笑顔で言った。


 「エネルギーチャージ完了!」研究者が力強く言った。周りの研究者達も連携を取るようにお互いの行動を呼称し始めた。

 「次元転移装置 正常!」

 「エネルギー!次元転移装置に送ります!」

 「エリミネーター解除!」

 「真空圧正常!」

 「転移先の座標セット完了しました!」

 「エネルギーオールクリア!」

 「スフィアレベル!ディスチャージ!」

 「次元転移装置起動!!!」

 掛け声と共にアンリの周りの機械が世話しなく振動しだした。

 機械の上のサークルが青く光だす。

 次の瞬間、強烈な光と共に、アンリは姿を消した。





つづく


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