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第33話 「奇跡の攻防」その3~Story of HIKARIチーム(後編)~

 どす黒い炎がアウルを飲み込むと、ダークサラマンダーは、リュウジに狙いを付けた。

「ちくしょおッ!! アウルッ」

 大蛇の様なサラマンダーの腹を見つめるリュウジだが、一向にアウルは出てこない。

 燃え尽きてしまったとでも言うのか?

 そんな不安な気持ちが膨らむ余裕もなく、ダークサラマンダーがリュウジに突進を始めた。

 紙一重で、跳躍し交わした。

 衝撃音と共に、大地が焼け焦げ大気が揺れる。

 リュウジは大きく跳躍した先で、新兵器のグローブ=SAG「サグ」(サイレンス・アサシン・グローブ)のレンジを捻り、拳を握った。

 その瞬間に、ダークサラマンダーの頭部が弾け飛んだ。だが、直ぐに再生すると、空中で降下し始めるリュウジに向かって再び突進をした。

「おいッ、待てよ」

 空中では動けないリュウジは、ただ重力に従うしかない。

 まともに直撃すれば、焼け消えてしまうのか、アウルのように飲み込まれてしまうのか。どちらにせよ、身を焦がす程の業火を食らうのは確かだ。

 リュウジが、右手首のブレスレットを碧く輝かせると、グリップが付いた五角形のプレートが現れた。

 グリップ部のボタンを押し込むと、プレートの縁から緑色の淡いヴェールが展開され、人一人分を隠せる程の盾へと姿を変えた。

 アンリが使っていた光の盾だ。

 もし、あの灼熱を防げるのだとすれば、この盾が残された唯一術だと思い、次の衝撃に備えて身を固めた。

「来やがれ糞がッ!!」

 ヴェール越しに見えるダークサラマンダーの黒炎の体と紅い双眼が瞬時に接近し、リュウジの体を吹き飛ばした。

「ぐわぁぁぁぁっ!!」

 全身を駆け巡るプレッシャーに呻き声を上げながら、それでも熱さには耐える事が出来た。

 後方へ凄まじいスピードで押しやられて行くリュウジの盾を突き破らんと、更なるプレッシャーを与えるダークサラマンダー。

 黒い尾を引きながら、ダークサラマンダーに押されるリュウジはバーンニクス城の外壁に激突した。

 城を揺るがす程の衝撃と、吹き荒れる黒炎にバルコニーから応戦していた子供や女が悲鳴を上げる。


 崩れ去る外壁を押し退けると、リュウジは、バーンニクス城の廊下に立ち上がった。

「どこへ行きやがった?」

 穴が開いた壁から外を見渡すリュウジ。

 遠くには今も尚、闇の軍勢がフェニックスの結界を突破しようと喘いでいる。

 その時、バーンニクス城の外壁を下から這いずり上がって来たダークサラマンダーの奇襲に、身構える隙を見失ったリュウジが直撃を喰らい、更に外壁を抉りながら宙に飛ばされた。

 一瞬にして全身が火に包まれたが、リュウジが全身から金色こんじきのオーラを噴出すと、炎は消えた。

「冗談じゃねぇぞ」

 再び身動きが取れないリュウジに襲い掛かろうとするダークサラマンダーが、大きく口を広げた。

 その刹那。


 ダークサラマンダーの腹部から鋭い氷が花開く様に突き出た。

 静止するサラマンダー……。

 その氷は、じわじわとダークサラマンダーの炎の体を凍らせ、遂には瞬時に走った無数のヒビと共に砕け散った。

 そして、煌く氷片の中から現れた魔術師アウル。

 両手の指を絡めながら氷撃の呪文を放ったのだ。

「アウルッ!! テメェこら。心配させやがって」

「召喚主が喰われてたまるかよ。バリアを張りながらずっと様子を伺ってたんだ」

 二人は垂直に落下し着地すると、今度はダークスパイデスの群れと戦っている兵士達の下へと向かった。



 その頃、遥か彼方の上空では、エクスフェリオンの船尾に立つアンリと、それを追う邪龍王とのエネルギー砲の弾き合いが繰り広げられていた。

 邪龍王は、ぐいぐいと体をうねり上げながら、砲撃に勢いを与えている。が、その度にアンリの全身に凄まじいプレッシャーが圧し掛かり、エクスフェリオンの木の床が撓り、足が突き破った。

 すると、今度は、邪龍王の体から無数の黒い何かが飛び出し、こちらに向かって来た。

「あれは何だ?」と目撃する誰かに訊ねるロイドにガイが答えた。

「薄っぺらい羽みたいだが……」

 その謎を一番先に解明したのはリュウセイだった。

「いや、あれは……鱗や。無数の鱗がこっちに向かってきてるんや!!」

「何だって!?」

 驚くロイドと船員達の前で一際声を荒げるガイ。

「俺の船をこれ以上傷つけるんじゃねぇぞ!!」

 甲板の上で騒然としている事など今のアンリには察知する事もできなかったが、視界の隅から見える無数の黒い鋭利な物の存在を知ると、ロイドとリュウセイに訴えかけた。

「寺村さん、ロイドさんッ!!」

「あぁ、分かったアンリちゃん」

 リュウセイとロイドは、エクスフェリオンの船内に入ると階段を降り、廊下を駆け抜けると、更に梯子を降り格納庫へとやってきた。


 そこにこの時代には相応しくない代物が、リュウセイとロイドを待ち構えていた。

 それはバイクだった。

 リュウセイ達が乗って来た宇宙船の中で見つけた、ヴァキルト博士が格納していた物だった。

 この惑星に来る前の地球で、ゲラヴィスク教のジェリルに誘拐されたルナを救う為に、リュウジが持ち主から強奪した重厚感のあるメタリックブルーの「二百五十CCバイク」だ。

 それを、ヴァキルト博士が修理し、一手間加えたのだ。

 リュウセイは、ブレスレットで転送するキャパシティから出た武器をダウンジャケットのポケットに詰め、スフィアランチャーをバイクの側面のアタッチメントに取り付けると、スフィアガン、レーザーアロー、その他の武器を袋に詰め、肩に掛けた。

 そして、大量の閃光弾の束を体に巻きつけたロイドは、先端部が何かを掴むかの様な形状をしているロッドを握った。


 エクスフェリオンの船底が開くと、一つの閃光弾が地上の軍勢の中に堕ちた。

 それに続きバイクに跨ったリュウセイと後部座席に掴まるロイドが飛び下りた。

「怖いか? ロイド」

「な、なんのこれしき!!」

 急降下する中、リュウセイはバイクのエンジンを起動させると、体重を絶妙に操りながら、閃光弾の落下地点に向かった。

 バイクのハンドルに掛けられているフルフェイスのヘルメット被ると、もう一つをロイドに手渡した。

 そして、強烈な閃光が瞬時に数千体の軍勢を掻き消した。

 リュウセイは、ハンドルの中央のスイッチを押すと、後輪の両サイドのブースターが点火し、降下スピードを抑えて着地した。

 フルフェイスヘルメットのお陰で眩しさは大幅に改善されている。

 すると、閃光弾を掴んだロイドは、レンズを押し込むとロッドの先端部分に取り付けた。

 残存する光の中で、ロッドの先端の閃光弾が発光する時間を数えるリュウセイは、エンジンをふかし続けた。

「六……五……四……三」

 かなりの範囲の敵が消滅し、また近づく事も出来ない事を確認するとニタリと笑った。

「……二……一」

 次の瞬間、「ゴーッ!!」と言う掛け声と共に、ロッドに取り付けられている閃光弾が凄まじい光を発し、同時にリュウセイは一気にグリップを捻った。


 ブースターが、下から後ろへと点火口を向けると、更に加速が増し、セーデンの塔へ突き進んだ。

 強烈な光に包まれたバイクが通る道には闇の軍勢が消えており、しばらくすると復活していた。

 だが、この方法が塔に無傷で近づく方法だった。

 閃光弾の残弾数が尽きるまでに到着しなくてはならないが。

 光の残存時間を計算しながら次のレンズを押し込んだロイドは、タイミングよくロッドの先端部の消えかけのメカニックボールと入替えた。



 人型の蜘蛛と戦う兵達。

 そこへ駆けつけたアウルが双剣の連舞を繰り出し、リュウジの猛烈な連続パンチがダークスパイデスを一掃した。

「大丈夫か皆無事か?」

 アウルの問いかけに頷く兵士達。怪我人は居たものの死者は出なかった。

「上出来だ」

 リュウジがそう言うと、辺りを見回した。

「これでやっと一段落だな」

「あとは、兄さんがセーデンを倒す事を待つだけか」

 その時、バーンニクス城のバルコニーからフェインが叫んだ。

「あそこから敵がぁぁぁぁッ!!」

 フェインが指差すその先。

 今まで、全く奇襲をしてこなかった炎の社とは反対側の結界の端から、結界を突き抜ける鉄の箱が貫通し、トンネルとなり闇の軍勢が鉄砲水のように侵入していた。

 既に先頭の敵はバーンニクス城の門を潜っていた。

 ざっと見ただけでも五百から六百はいる。

 リュウジは、トンネルを確認すると、慌ててSAGのレンジを全快にし、拳を握り締めた。

 瞬時にトンネルが爆散し、敵の侵入を防ぐ事に成功した。だが、大量の敵が、バーンニクス城、そして炎の社へと向かっている。

 兵士達は、家族の身に危険が迫っている事を察知すると、急いで城へと向かった。

 アウルと、リュウジも城に向かおうとしたが、リュウジの額を黒い光線が掠めた。

 振り返るリュウジの先に、一人立っているローブを纏った者がいた。

 その風貌には見覚えがあった。

「お前……? 死んだはずじゃ」

 闇のモンスターを吸収し、復活したジェリルがそこにいた。


 ジェリルは声にならない奇声を発しながらリュウジに襲い掛かって来た。

「アウルッ!! お前は城を守れ」

「分かった」

 そう言い、城へと向かうアウルを確認すると、リュウジは全身から金色のオーラを噴出し、力を溜めた。

「この死にぞこないが。一瞬で終わらせてやるよ」

 気合と共に、バトルスーツが起動し、機械振動が全身に伝わる。そして、タイヤが破裂するような衝撃音と共に、シャツが体に吸い付き一気に膨れ上がった。

 そして、飛び掛る。


 リュウジの高速の拳がジェリルが被るフードの掠めた。

 その風圧でフードが脱げると、リュウジは言葉を失った。

 船で戦った時には黒い髪があり、女の顔をしていたジェリル。だが、目の前にいるのは顔の皮膚が剥がれ落ち、眼球は真っ赤に腫れ、髪が無くなった頭には生き物のように蠢く黒い血管が見えていた。

「お前ッ……?」

 その時、ジェリルの口が縦横に裂け、飛び出た無数の長い舌がリュウジのバトルスーツを貫通し、体に突き刺さった。

 そして、痙攣するリュウジの体にジェリルの舌から何かが注入されている事に気付いた。

「ぐぅッ……、な、何だよ!?」

 首許の血管から顔に向かって黒い液が流れて行くのが見える。勿論リュウジ自身は見えないが、得体の知れない毒のような物が全身を巡っている感覚はあった。

 心臓の鼓動が弱まってゆく。

 思考回路が停止し、何も考えられなくなってゆく。

 そして、視界が薄まって行った。





 ~次回 第34話「伝説の敗北」Story of HIKARIチーム(後編)~


 友情・絆・愛情


 それぞれの思いが交錯する中、あまりにも無謀過ぎた戦いは思いもよらない形で終わりを迎える事となる。


 乞うご期待下さい。


 今回も勢いのあるバトルシーンを描いてみました。


 次回は、いよいよ後編のラストです。


 ソラしか知りえない伝説の敗北は現実の物となってしまうのか?


 そして、大空賊船エクスフェリオンが!?


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