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第32話 「闇の軍勢 対 光の軍勢」その3~Story of HIKARIチーム(後編)~

 フェニックスの結界を貫通した鋼鉄のトンネルから、闇の軍勢が濁流の様に流れ込んでくる。

「このクソがッ!!」

 リュウジは、地面を蹴ると土埃を巻き上げながらその群れに飛び込んだ。アウルもその後に続き、両腰に差していた二本の片手剣を引き抜いた。

 金色のオーラが体から溢れ出し、ジャンパーウェアの下のシャツが膨張する。

 大量の闇の軍勢の中、リュウジは騎士の形の影を狙い渾身の拳を振りかぶった。が、空振り。

「クッ……」

 そして、空振り、空振り。

 決して、リュウジの拳が敵に当っていない訳ではない。実体が無いが故にすり抜けてしまうのだ。

 リュウジの存在を無視し、一目散にバーンニクス城と炎の社への侵入を企む軍勢をアウルが追いかけた。

 だが、バーンニクス城と炎の社は距離が有り過ぎる。

 振り返る城の前には脅える兵士達。


 アウルは、ポーチに入れていた閃光弾を取り出すと、兵士達がいる方角へ投げ飛ばした。

 そして、手にした直方体の紅い宝石=召喚石を握り締めると魔力を込め始めた。

「集え、大いなる火の精霊達よ。森羅万象のマナと共にその姿を現せ」

 アウルを中心に赤い魔方陣が展開され地面から生える草を吹き飛ばす。

 赤い閃光を放つ召喚石を勢い良く魔方陣の中心に叩き込むと紅蓮の火柱がアウルを飲み込み巨大な大蛇の姿へと変貌した。

「焦がし尽くせッ、サラマンダー!!」

 サラマンダーは炎の尾を引きながら社へ向かう闇の軍勢に向かって行った。

 その後ろで兵士達を襲おうとしていた軍勢をメカニックボールから発生した強烈な閃光が掻き消す。


 リュウジも、腰に付けていたメカニックボールを掴むと、スーツの力を解放し、剛速球を鋼鉄のトンネルに投げ込んだ。

 そして、一気に距離を縮め、鋼鉄のトンネルを引き抜いた。

 再び、結界が外敵を遮断する。

 リュウジの額から流れる一粒の汗が頬を伝い、顎の先から落ち地面の土を弾いた。途端に、結界の外で閃光弾が炸裂する。


 サラマンダーが、大きな口を開き、炎の社へ前進する闇の軍勢を飲み込む。

 だが、実体が無い闇属性の為、ダメージが無い。

 それを見たアウルは次の指示を出した。

「大地ごと吹き飛ばせ」

 すると、サラマンダーは大きく旋回し、口を広げながら地面をえぐり激走し始めた。闇の軍勢を大地と共に巻き上げる。

「これで何とか……ッ!?」

 アウルがそう言った時、サラマンダーに異変が起こった。

 なんと、急に苦しみ出したのだ。

 何故か?

 リュウジが良く目を凝らすと、巻き上げられた大勢の影が、サラマンダーにしがみ付き侵食しているのだ。

 サラマンダーの体にへばり付く影から無数の手が伸び、サラマンダーの口、鼻、目の中へ入り込む。

 そして、敵の数が増える毎に、サラマンダーの紅蓮の炎は黒へと変色し、姿も、もっと歪に、より怪物らしい者へと変わってしまった。

「属性が……変わった」

 ダークサラマンダーは、召喚主を殺し自由になろうと襲い掛かった。


 光が治まり、視界が元に戻った兵士達は、震える手で剣を盾を持ちながら身構えていた。

 その中の一人が、遠くを指さし叫んだ。

「ななな、何だアレは!?」

 黒い炎蛇が巨大な体でとぐろを巻き、一気にアウルとリュウジに襲い掛かる。

「あんなモノがこっちに来たら俺達……皆殺しだぞ」「やっぱり嫌だッ、俺は死にたくない」「何言ってやがる、俺だって怖いが家族を守る為だ」「無理だ、無理だ」


 せっかく高まった士気も、目の前の絶望的な現状を目の当たりにすると、恐怖心があっと言う間に飲み込んだ。

 城に戻ることも出来ない。

 敵陣に突撃する勇気もない。

 兵士達は、途方に暮れていた。

 そこへ突撃してくるダークスパイデスの群れ。


 アウルとリュウジはダークサラマンダーとの応戦で手が離せない。

 口から吐かれる黒炎を飛び交わしたリュウジ。グウェンダイナソーの魔術で大地を爆発させサラマンダーを怯ませるアウル。

「お前も掻き消してやる」そう言って閃光弾を投げつけたリュウジだったが、サラマンダーはメカニックボールを口で受け止め、結界の外に投げ飛ばした。



 その様子を城から見ていた子供達。

「やっぱり駄目だ。父さん達が腰を抜かして戦えない」

 フェインは、加勢しようと大広間から出ようとした。

 振り返るが、フェインに付いて来ようとする者はいない。

「どうしたんだ? 年齢制限が何だ? 戦いたい思いは俺も同じ、お前達もそうじゃないのか?」

 俯く一同。

「そうは言ってもワシや孫はどうも出来んぞ」と老人が言った。

「いや、爺さんはそりゃ無理だろう」

 フェインは十五~十七歳の男達に指を差しながら訴えた。

「今戦わなくてどうする?」

 すると貴族の娘のカルニアとセレシスが反論した。

「さっきも言ったろ。あの人達の思いを無駄にするなと」

「このままでも、いずれ無駄になる。俺達は、俺達にしか出来ない事があるはずだ。ここで息を潜めて隠れている事じゃない。扉の向こう側ではロザリアさんが子供を産む痛みと闘っている。ロザリアさんをサポートしている人達もだ」

 熱弁するフェインにカルニアが口を開いた。

「気持ちは分かるわ。でも……」

「でもって何だよ? アンタも、後悔したくないだろ?」



「おい、マリカ!! マリカさんッ!!」

 エクスフェリオンの上で突然倒れたマリカを抱き抱えるリュウセイ。

 鉛色の空から襲い掛かるダークリーパーの襲撃を交わしながらセーデンがいる場所へ向かう。

 だが、後方から凄まじい速度で、邪龍王がこちらに向かってきていた。

 大きな戦力のマリカが倒れてしまっては、恐らくダークリーパーの襲撃も、邪龍王の攻撃にも耐える事は難しい。それを解っていただけに、リュウセイは必死にマリカを起こそうとしていた。

 そこへ襲い掛かるダークリーパーをロイドの光の剣が切り裂いた。

「ここは俺が持ち堪える。アンタはその人を介抱してやってくれ」

「いくらお前でも無理や。数が多すぎるやろ」

 その時、邪龍王の前足がエクスフェリオンの甲板に掛けられた。大きく傾く船の上で船員達が悲鳴を上げる。

 暗黒の巨大な龍は、もう一方の手を甲板に掛けると、鼻の長い顔をゆっくりと持ち上げ、大きく口を開いた。

「おいおい、こんな所でエネルギーを放つんじゃねぇぞ」

 舵にしがみ付きながら、ガイは必死の形相で睨み付けた。


 無数の雷が邪龍王の体に降り注ぎ、背びれを伝って咥内にエネルギーを蓄積してゆく。

 今ここで邪龍王の砲撃を喰らえばエクスフェリオンであろうと木っ端微塵になる事は避けられない。

 リュウセイは、マリカをそっと床に寝かせると邪龍王に向かって仁王立ちになった。

「しばき倒すぞクソ野郎が。しょうも無い顔見せやがって。覚悟せぇやッ!!」


 脅える兵士達に近づくダークスパイデスの群れ。


 ダークサラマンダーと闘うリュウジとアウル。


 ダークリーパーと邪龍王の襲撃に応戦するリュウセイ、ロイド、ガイ、そしてマリカ。


 いきなりの窮地を打開する術はあるのだろうか?






 ~次回 第33話「奇跡の攻防」Story of HIKARIチーム(後編)~


 強い心と信念がある限り、奇跡は起こせる。


 これから怒涛の攻防が始まる。


 そして突然倒れてしまったマリカが意味する事とは?


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