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第4話 「宿命と役割」その1

「みっちゃんをどうする気?」アンリは胸の傷口付近を押さえながらリュウセイに聞いた。

 「心配すんな、まだ息はある。 治療したるよ…無傷で」

 「無傷っ?」アンリは問い返した。

 「あぁ、無傷でな。その変わり、さっき襲われた時の記憶は消して貰うで」そう言いながらリュウセイは団地の角を曲がり、更に人目に付きにくそうな場所に移動していく。


 美津穂を抱えたリュウセイは、黒いズボンのポケットから青いスピリットの様な物を取り出した。

 「それは何なの?」

 「これは、『スフィア』って言って、次元転移装置みたいなモンや」

 リュウセイはそう答えると、スフィアを空目掛けて真っ直ぐ投げた。


 ……………

 その時!

 空に放り投げられたスフィアが、バチンっと音をたて弾けた。途端にスフィアを中心に直径5メートル程の蒼い光の魔法陣の様な物が広がる様に現れた!

 その魔法陣は一直線に地上に光りを降ろし、アンリ達の目の前のアスファルトに光のサークルを作った。

 「誰も見てない内に行くで!」リュウセイはそう言いながら、サークルの中に入った。


 アンリは恐る恐るサークルに入った。サークルの中は心地よい風が、何処からとも無く吹いている。

 「これからどうなるっ…!」アンリがリュウセイに聞こうとした瞬間、自分の足下に小さくなった街が見えた!

 「ひぃぃぃっ!」アンリは驚きと、あまりの高さの恐怖にリュウセイの足にしがみついた。

 「大丈夫やって、直ぐ着くよ」リュウセイは平然と答えた。

 アンリ達は、そのまま瞬時に雲を突き抜けた。鉛色の空の上は、驚くくらい綺麗な青空が広がっていた。

 その光景にアンリの恐怖は感動に変わっていた。

 「空ってずっと見てなかったなぁ」


 そう思っているうちに、星ぼしが煌く宇宙が視界に広がっていく。 足元には蒼く綺麗な地球が見えた。

 「きれぇ〜」

 アンリがこれまでの景色に酔いしれるのもつかの間、目の前が一気に白い光で包まれた。


 ……………


 アンリが目を開けるとそこは広い研究所のような所だった。研究者のような白衣を着た人達が沢山いるのを見てそう思った。

 研究所の中央にある機械の上のサークルの中で、白い煙と共にアンリ達は立っていた。

 「オカエリナサイ リュウセイ」人の声では無い、機械的で冷たい様な男の声がスピーカーから聞こえた。

 リュウセイは振り返り、アンリに言った「ようこそ!『フォースライド』へ♪」


 『救急治療室』の中にアンリは居た。『救急治療室』と言っても、良くテレビドラマとかに出てくる手術台や、沢山の機材がある訳ではなく、『キュアラクト』と言われる、人が入れるカプセルの様な物があり、その中に透明の液体が入っている。

 そのキュアラクトの中で、親友の美津穂は液体に全身を浸し、呼吸器を取り付けられ回復の時を待っていた。


 アンリはベンチに座り、ずっと美津穂を見ていた。

 「ほらっ!飲めや」

 リュウセイはアンリにカフェラテを差し出した。

 「ありがとう」アンリは礼を言ってカフェラテを受け取った。

 「私、悔しいの」アンリは突然話し出した。

 「あの時、みっちゃんは必死になって…こんなにまでなって、私を助けようとしてくれたのに…私はただ‥怖くて何も出来なかった」

 リュウセイはアンリの目に涙が溢れているのに気付いた。

 「私が、あの時に勇気を出して、みっちゃんが私の腕を掴んでくれた時に逃げる事ができればこんな事にはならなかったかもしれない…」

 アンリの目から涙がこぼれた。

 「とりあえず、お前の友達は助かったやん。今度はお前が友達を助ければ良いやんか。お前には力があるし、誰だって守れるって」リュウセイなりにアンリを励ましたつもりだ。

 

 「それと、俺もお前に謝りたい事があるねん」

 唐突に言い出したリュウセイの言葉にアンリは意味が解らなかった。

 「お前が学校に行く朝に、向いのマンションの屋上からスピリットを投げて、ガラスを割ったんは俺なんや」苦笑いをしながらリュウセイは自分の頭を撫でた。

 「えぇぇぇぇっ!」アンリは驚いた!

 まさか自分の心の中で決着を付けた疑問の答えが、目の前にいるリュウセイの仕業だったとは‥

 「そうでもしやな、アンリちゃん受け取らんやろ。見ず知らずの男から、はい!どうぞって水晶玉渡されて受け取る?」

 「う‥受け取らないかも」アンリはその状況を考えたが、絶対に受け取らないと思った。


 アンリは1番知りたかった質問をリュウセイに投げかけた。

 「あのぉ、スピリットって何なんですか?前世での力の結晶ってどう言う事なんですか?どうして私なんですか?」アンリの表情はいつに無く真剣だった。

 「じっくり話してやりたいけど、先に服着替えろ、血だらけの学生服ってどん何やねん」リュウセイは少し笑いながら言った。

 「ほらっ」

 リュウセイはさっきから手に持っていた服をアンリに手渡した。

 「なんか寺村さんと、同じ服みたいですね」

 黒い上下のジャケットとタイトなジーンズにその他の装飾品…あまりアンリの趣味ではなかった。

 「それを普通の服と一緒にすんな、すんげぇ戦闘服なんやで。

 銃弾は跳ね返すし、人間では耐えられへんダメージを軽減させてくれるし、スピードもパワーも、使う人間によって増幅させられる素晴らしいバトルスーツなんや」リュウセイは自慢気に説明した。

 「これからは絶対に必要になる…とりあえずソレに着替えてから隣の部屋に来いや!」リュウセイは治療室を後にした。






つづく


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