表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/42

盗賊退治

魔法の修行は意外に楽しく時間が経つのを忘れ、気付いたら夜だった。

ラルフが最初に見せた魔法ぐらいは使えるようになっていた。

5歳になり外出の許可を得たので、早速街を見ようと思っていたが…仕方ない。王都から戻ってきてからにするか。


そして翌日、王都の別邸に行くため馬車に乗った。

馬車は3台で1台目は父と護衛2人と使用人1人、2台目は俺とラルフと2人の護衛、3台目は使用人と護衛が2人ずつ乗っている。


ちなみにグラムは領内で何かあった時の代理なので1人留守番だ。


馬車の無駄に豪華な外装と内装には笑ってしまいそうになるのを堪えるのが辛い。

こんな見栄のために金を使うぐらいなら、領地を豊かにすればより見栄を晴れるようになるのに…本当、流石だよ。


「ではジルア様、移動中の時間も無駄にしないため魔法の修行を…と言いたいところですが、少し危険なので魔力制御の修行をしましょう」


「はーい」


俺はガッカリしながら返事をした。

魔法は時間を忘れるほど楽しいオモチャだから、修行したい気持ちが抑えられない。


「昨日も思いましたが、ジルア様は本当に魔法が好きなんですね」


俺の反応にラルフは微笑んだ。


「では、魔力制御の修行で少し難しいものを教えましょう」


ラルフが教えてくれた魔力制御は本に書いてあったものよりも数段難しく楽しかった事もあり最初の不満はすっかり消え、俺は熱中していた。


夜になると宿場町に辿り着き、一夜を過ごした。後で聞いた話だが馬車で3日というのは野宿をする最短ルートでの話らしい。

宿泊のため多少遠回りをしており到着は出発から5日かかるようだ。


そして旅も3日目、王都まで後半分ほどのところで出発前のフラグが回収された。

最初に気付いたのは俺だった。

魔力制御の修行で魔力を薄く広げて維持していると馬に乗った集団が真っ直ぐ向かってきているのを感じた。


「ラルフさん魔力に変な反応がありました。

馬に乗った集団がこちらへ向かってきています。手には武器を持っています。

恐らく盗賊ですね」


「なんだって!」


ラルフが目を閉じると一瞬で盗賊達を捕捉していた俺の魔力をラルフの魔力が覆った。


「これは大変だ!

本当に盗賊が向かってきている!」


護衛の2人がラルフの声に反応して懐から出した笛のようなものを吹いた。

すると3台全ての馬車は止まり迎撃態勢に入った。盗賊達の来る方向と人数を考えて逃げるよりも得策だと考えたからだった。


「ジルア様、丁度良い機会なので実践です。

盗賊達は魔力量から見て遠距離に魔法を放つ事は不可能でしょうから、こちらから一方的に魔法を当てましょう」


「ほう、それはいいな」


ラルフの隣にいたザルムが賛同した。


「これで盗賊を少しでも撃退出来れば御披露目会の良い話題にもなる。ジルア、本気でやれ」


この世界では盗賊などの悪は殺しても罪にならない。殺さぬよう手加減をして殺されては意味がないからだ。

だが、俺は前世の罪悪感から抵抗…するはずもなく元気よく返事をした。


「はい!父上!」


前世では直接殺しをした事はなかったが行き過ぎたイジメで自殺させたり、色々と間接的にだが他人の命を奪ったこともある。

今更、物怖じなんてしない。


「だが向かってくる者達が盗賊でない可能性もある。姿が見えるまで魔法を待機させろ」


「はい!」


俺は盗賊の姿が見えるのを風と闇の槍を作りながら待った。

少しすると馬に乗った見すぼらしい服装の集団がやってきた。中には鎧を纏ってるやつもいるが、どう見ても盗賊だ。


「装備的にも盗賊だ!やれジルア!」


ザルムの声と共に俺は待機させていた魔法を放った。魔法の槍は盗賊あるいは地面に着いた瞬間、爆発するように設定しており、爆発音と砂煙で状況が把握しにくくなってしまった。

これは失敗した。だが、まあ結構人数を削れたんじゃないかな?


そう考えているとザルムは言ってはいけない、あの禁断の復活呪文を唱えた。


「やったか?」


それは言ったらダメなフラグだ!無能め!


「想像以上の出来だ。

これは私兵の出番はないんじゃないか?」


「いえ!気を引き締めてください!

鎧を着ているやつらは普通に向かってきています!もしかしたらアレは聖魔鉄の鎧かもしれません!」


油断せずに魔力を薄く広げ、盗賊の動きを探知していたラルフが叫んだ。


「なにっ!聖魔鉄だと!?

なぜ盗賊が聖魔鉄を!?」


聖魔鉄、魔法を分解する作用のある金属だ。

その優位性から、ほぼ全ての聖魔鉄は国が徹底的に管理しているため、鎧なんて盗賊如きでは1着分すら入手不可能なものだ。


砂煙から現れる5人ぐらいの盗賊が現れ私兵との戦闘が始まった。だが、鎧に守られていない部分にはダメージが意外に残っていたようで緊張感の割に難なく私兵は盗賊を撃退した。


盗賊の死体は魔物の餌になりかねないので土に埋める事となった。

なお、埋まる前に盗賊の左耳を剥ぎ取り袋に入れた。


王都には耳で犯罪者を見分けるスキル持ちがいる。名のある盗賊団であれば報酬が貰えるのだが、勿論報酬の金のためではない。

なら、なんのためかって?


「聖魔鉄を使用した防具を持つ程の盗賊だ。

有名に違いない。そんな盗賊の半数以上をジルアは倒したのだ。これは良い土産になるぞ!」


と、いうわけだ。


ザルムがホクホク顔だったのは言うまでもない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ