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現状をまとめよう

俺が転生してから約5年が経った。

最近ようやく理性的な考えが出来るようになってきたので、ここいらで現状をまとめてみようと思う。


俺がいる国はグラサ王国だ。王国というだけあって王がトップの君主政で貴族が存在する。

世界の違いからか上流、中流、下流と大まかに分けられ男爵や伯爵なんて概念は無い。

俺の生まれは貴族だった。

収めている土地は王都から馬車で約3日ほどで、それなりに栄えていた。うん、過去形だ。

一応は歴史のある上流貴族なのだが歴史があるだけで領民からの評判も右肩下がり、何もしなければ近い将来没落してしまうとの噂が使用人達の中ですら流れるほどだ。


親はプライドを守るために危険な橋を渡り支持率の回復や権力の増大を図っているが効果は然程ない。無能なのだ。

そのくせ、俺を道具として見ているが…


「ははっ似た者親子というわけか」


前世の親は俺とは違い真っ当な人間だったから物心がついた頃から違和感があったけど、今世の親はしっくりくる。


思わず漏れた笑い声と呟きが聞こえたのか右斜め前にいた父、ザルム=ゾルートが反応した。


「ジルア何か言ったか?」


そうそう名前をまだ確認していなかったな。ジルア=ゾルートこれが俺の名前だ。

どんな因果かジルアというのは前世の俺の名前でもある。キラキラネームではなくハーフだったから、こんな名前だった。


「いえ、何もないです。

少しむせてしまっただけです」


「そうか」


因みに今は食事中だ。

この世界の食文化は食材に使われる魔物が何もしなくても香辛料で下味をつけたような味のためか、レベルが非常に高い。


「来週のステータスプレート授与で問題が無ければ、遅くても来月には御披露目会をやるから、今の内にボソボソと独り言をする癖を直しておくんだな」


むせたという嘘が見抜けないほど間抜けでは無かったか。評価を少し上方修正しておこう。

なんて事を考えながら注意してきたザルムに返事をする。


「はい父上、申し訳ありません」


心にもない謝罪をして、再び思考と食事に移る。

来週にあるステータスプレート授与とは神殿でステータスプレートが文字通り授与されるイベントだ。

ステータスプレートは自身のステータスやスキルを知る事が出来る唯一のアイテムで、偽装が不可能なため身分証として使われている。


ステータスプレートは教会により徹底的に管理されており、例え王族であっても5歳になるまで授与されることはない。

そのため平民や貴族、身分の差は問わず子供にとっては一大イベントである。

それは俺にとっても例外ではない。

下手をするとゲームオーバー、恐らく殺されてしまう。

その理由はスキルにある。


女神がスキルの数は最大5個と言っていたが、その内訳が問題だった。

スキルは自身の素質、父の血筋、母の血筋、職業、成人(この世界では15歳)までの生き様、この5つの項目で1つずつスキルが得られるらしい。


これら5つがそれぞれ被っていなければ最大で5つのスキルが、全て被っていれば統合されスキル数は1つとなる。

だから1〜5個までしか個人ではスキルを得られない。


そして貴族にとっての問題は2つ目と3つ目だ。DNA鑑定のように血の繋がりを確認する指標であるため平民であれば余り気にしないが、この世界の貴族は何よりもプライドを優先する生き物だ。

スキルだけをみて、婚約相手を選ぶこともあるからな。


それを表すおかしな慣習もある。

その慣習とは5歳になるまで家の中から外には出さず、家族と使用人以外と顔を合わせないように屋敷に幽閉するというものだ。

そして血の繋がりが無ければ伴侶共々処分する。

嘘のように思えるかもしれないが、実際に俺もこうして屋敷に閉じ込められている。今世では生まれてこの方、外に出たことがない。


万が一にでも血の繋がりが無ければ、その時点で未だ5歳で何の力のない俺は殺されてしまうだろう。


とは言え俺のことだ。

まあ、何とかなるだろ。


こんな不毛な考えを纏めるよりも、美女が言った言葉。勇者召喚は邪魔が絶対に出来ない。これについて考えよう。


そんな事を言われてしまえば、どうにか邪魔をしてやりたいという欲求が出てくるものだ。

そのためにまず勇者召喚が行われる理由などを本や使用人の話から考えてみたがテンプレだった。

ある時は魔王の討伐、ある時は戦争のためとか良くあるものだ。


原因を元から潰し召喚を起こす理由を消す事を最初に思いついたが、まあ無理だろう。

魔王は何とか出来るだろうが戦争の方はどうにもならない。世界征服でもすれば可能だろうが、それをしてしまうと楽しみが無くなるから却下。

同じ理由で生命体を根絶させるのも却下。


早速八方塞がりだ。


次に目をつけたのは勇者召喚には有能な魔法使い数十人と王族が必要だということ。

その魔法使いの中に入り込み魔法を失敗させる、あるいは王族を皆殺し。


うん、どちらをやるにも力が必要だ。


そう結論付けた俺は3歳頃からの簡単な魔力制御の修行を始めた。

魔法はスキルで補正されるが、スキルが無くとも使用可能だからな。

修行では己の魔力の流れを感じ取り流れを早めたり体外に出し操作したりした。

魔力をほぼ全て使い切ることで魔力量も増えてお得なのだが使い切るまでに3時間もかかり面倒だし、魔力を使い切るまでには高熱を出した時のような頭痛やシャトルランを全力でやるぐらいの疲労感に襲われ、それを乗り越えないといけない。


今では慣れて耐えることが出来るが、修行を始めた当初は転生の影響で3歳児並のメンタルだ。

何度もやめたくなったが、こうみえて俺は努力家だ。

頑張った、それはもう頑張った。

頑張った結果、最初の方は良く気絶して、新種の病気に罹ったと勘違いされた。

ちなみに、その時の父は特に原因を追求しようとはせず、俺を放っていた。

この程度で死ぬなら要らない子というわけだ。


中々のクズっぷり流石だ。

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