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いけるなら行こう

「よし。皆この後用事はない?」

「いえ、大丈夫です」


 皆用事は内容で首を横に振る。俺と凛花は用事なんてないことは分かり切っているので、凛花は俺以外の三人が首を振ったことを確認して立ち上がる。


「このままダンジョンを行けるとこまで進もう!」


 どこまで行けるかは分からないが、行けるところまで行くのはいいだろう。ポートによる転移はパーティー内で一番階層が進んでいない人に合わされるので、今のパーティーだと1層からクリアしていかないといけない。

 誰も反論はないようなので荷物をインベントリに仕舞い、ポートを探しに行く。


「採集できるものは採集しといて」

「ああ。欲しいものがあったら言ってくれたら探すようにするよ」


 ミナトと話しながら歩く。先頭は何かがあった時のために凛花が。その後ろを俺とミナト、さらに後ろをナナカとフィルが歩いている。

 人が増えたのもあり、いつもより気を抜いて歩くことができるので楽だ。これまでは二人だったので周囲の警戒をするには半分ずつ見る必要があったので大変だった。


「どうして私達をパーティーに入れたの?」

「ん? 二人じゃきつかったからだが、どうした?」

「多分あなた達なら募集をかければ応募は殺到したはず。多分、ORDEAL内ではトップレベルの知名度」

「私も断られるの覚悟で声をかけたんですが、普通に受け入れられてびっくりしました」

「さっきも言っていたが、強い奴が欲しかったわけじゃないからな。ちょうど求めていた職業だったから許可したまでだ」


 最低限戦えるプレイヤースキルがあれば良かったが、それは十分にあったから問題なかったし。

 やっぱり、ナナカ達も俺と凛花のことは知っていたのか。そうでなければ、すぐに声をかけてきたりはしないよな。


「じゃあ、魔法を使う時は何を考えてる?」

「それ私も知りたいです。あれだけ外すことなくヒールと支援魔法を使い続けられるのは、中継で見ていて驚きでした」


 そういえば、ダンジョン内で魔法を外したのなんて殆どなかったな。1回凛花がヘイストの魔法を避けたことがあったから、外したのはそれくらいだろうか。あれは、ヘイストで感覚が狂うのを凛花が嫌がっただけだが。


「別段意識していることはないな。レンヤの動きならだいたいわかるから、動きが止まるタイミングを狙って魔法を放っているだけだし」

「そんな簡単に言われても」

「やっぱり味方の動きを読むのが大切なんですね」

「二人ともツキヤにそんなこと聞いても無駄だよ。ツキヤは基本的に感覚で動いているから、普通の人には参考にならないよ」

「うん。自分のやり方を探す」

「私は参考になったと思いますよ」


 いや、凛花が言っていることは間違っていないから良いんだけどね。人間の動きなんて所詮は重心と筋肉の動きによって制限されるから、それを感覚的にわかるようになるまで観察して、さらにその相手の考え方っていうのを意識すれば良いだけの話なんだけれど、説明しても分かってもらえるとは思っていない。


「昔からツキヤはおかしかったからね」


 凛花に比べればそこまでおかしくはないと思うんだけれど。やってたことなんて、自分で質問したことに対して相手がどうこたえるか予想して同時に答えるくらいのもんだよ。質問内容で答えをある程度絞って、あとは相手の口癖や思考回路を意識する。最後は口を動かそうとするときの力の入り具合で出だしの言葉を予想すれば、短い言葉ならほぼ同時に同じ内容を話すことができる。よっぽど相手のことを観察しないといけないから、凛花とか一部の人以外にはできなかったが。


「多分、真似するやつのことを考えているんだろうけど、他にもあるからね。壁にボールなげて取るやつとか」


 それは凛花に勝つためにやってたやつだな。でこぼこの壁に1メートルもない距離からボールを投げて跳ね返ってきたボールを取るやつ。凛花のバカみたいな反応速度に対応するには、意識してから体を動かすのではなくて、反射的に体を動かさないと俺の反応速度では間に合わないから、壁に当たって跳ね返るボールをキャッチすることで練習していただけだ。


「お二人とも仲がいいんですね」

「幼馴染だからね。ずっと一緒に遊んでたから。ナナカちゃんとフィルちゃんも仲いいよね」

「私達は親戚で、中学校からは同じ学校だったので」

「中学校の時に同じクラスになるまでは、親戚の集まりでもちょっと話すくらいだったけれどね」


 親戚なのか。兄弟でも似ていないことも普通に有るから、親戚ならそんなに似ていなくてもおかしくはないか。


「多分、二人と同じ中学校にいたかも」

「え? ミナトさんももしかしたら知り合いですか」

「世間は意外と狭い」


 いや本当にな。口ぶりからして年も同じくらいのようだ。たまたまパーティーに知り合いらしき人がいて、パーティー全員が高校生くらいの年齢って、凄い確率だろうな。


 親睦を深めるためというのもあり、雑談しながらのダンジョン攻略だったが、1層と2層は問題なくクリアできた。殆どは凛花のおかげだが、それでも前よりは確実に楽になっている。1層と2層を一時間半ほどで抜けて3層に到達したところで、休憩もかねて一旦ダンジョンから出ることにした。


「やっぱり人が増えると楽だね。こんなに簡単に3層まで戻ってこれるとは思わなかったよ」

「まだまだ実力は追い付いていないけれど、役に立ったなら良かったよ」

「そうですね。早く続きがしたいです」

「ははは。まだまだ体力はあるみたいだけど、思った以上に疲れがあるかもしれないし、現実の方でお腹がすいているだろうから、2時間休憩してからダンジョン探索を再開しよう」

「再ログインしたらチャット送る」

「ああ。皆もそれでお願い。じゃあ、また後で」


 ミナトがログアウトしたのを皮切りに全員ログアウトしていく。

 次は3層か。そろそろ気を引き締めないと厳しいな。2層では運よく群れとはそんなに当たらなかったから進めたが、3層も同じように抜けられるほどは甘くないだろう。

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