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パーティーでの戦い

「じゃあ、まだクランハウスは無いけれど、とりあえずパーティー結成ということで、さっそくダンジョンに行こう!」

「とりあえず、レンヤが主にタゲを取って、フィルはいけそうならタゲを取ってくれ。ミナトとナナカはヘイト貯めすぎない程度に練習がてら魔法を使って」

「は、はい。頑張ります」

「ナナカちゃんはもっとリラックスして」


 凛花がナナカの肩を揉んで笑いかけるが、ナナカは緊張しているのかぎこちない笑みを浮かべる。

 俺と凛花以外は初ダンジョンなので1層から順に攻略していくことになるが、1層は凛花一人でも大丈夫だから問題ない。2層からは邪魔にならない程度には動いてもらわないと厳しい。

 凛花を先頭にダンジョンの中に入る。1層に行く時以外はポートを使っての移動になるから、ここから降りるのも久しぶりだな。


「ここがダンジョンですか……」

「実際に見ると、圧巻ね。本当にこんな景色が街の地下にあるなんて」


 ナナカとフィルが空を見上げて固まっている。最初は驚くのは仕方がない。ゲームの中とはいえ、街の中から入れるダンジョンがこれほどの広さと光景をしているなんて思いもしない。ORDEALというゲーム自体、現実と見違えるような細かな作りになっている分驚きが増すのだろう。時たま、この世界がゲームの中だということを忘れそうになるくらい自然な世界だから。


「さっそくモンスターと戦っていこう!」


 凛花が近くにいたミニボアを引き付けると、少しダメージを与えて、その後はひらひらと敵の攻撃をかわす。それを見て、ミナトは攻撃魔法の詠唱を始め、ナナカはヒールの詠唱を始めた。

 こうなると俺のやることはないな。プロテクトを凛花とフィルにかけて傍観する。凛花が動き回っているのもあって、ミナトの攻撃魔法のファイアボールはミニボアを大きく外れ地面を焦がすのみだったが、一応ある程度狙った位置には放てるようだ。

 フィルは戦闘に参加せずに様子を見ている。敵が1体なのでタンクとしての仕事も無いから仕方がないが、しっかり凛花の動きを見ているので大丈夫そうだろう。四人の中で一番背が高いフィルは青い髪とそのスッと整った顔も相まって、真剣な表情をしていると吸い込まれそうな美しさがある。


 そういえば、パーティーの中で男って俺だけか。これが現実なら肩身の狭い思いをしていただろうが、ゲーム内なのでそれほど気にすることも無い。迂闊に触るとセクハラ行為で通報される可能性はあるが、別にそういうことをしたいわけではないので関係ない。


 四度目のファイアーボールがようやくミニボアに当たりそのHPを削り切った。最後のもぎりぎりまで凛花が引き付け少し掠るくらいの場所で避けたおかげで当たったので、やはり魔法職は使いにくいようだ。

 戻ってきた凛花にナナカがヒールをかけて、次のモンスターを探しに行く。


「今度は私がタゲをとるわ」

「じゃあ任せたよ。危なくなったら言ってね」


 凛花が敵を見つけてタゲを取りに行こうとしたところでフィルが凛花を止めて前に出る。

 体の半分ほどある盾を取り出し、ウォークライというヘイトを集めるスキルを放つ。スキルの効果により、フィルに集まってきた2体のモンスターを、盾を上手く使って攻撃を食らわないようにする。


「なあ、なんでフィルはパーティーに呼ばれなかったんだ?」


 タンクは人気職だし、あの実力があればパーティーに呼ばれてもおかしくはない。ナナカとはリアルでの知り合いのようなので、一緒にパーティーを組みたいというのはあったかもしれないが、フィルとセットならナナカも一緒でも良いというパーティーがいてもおかしくはないと思うんだが。


「私がいたのもありますが、フィルはタンクにしては軽く、攻撃も殆どできないんです」


 確かに攻撃を受けた時ののけぞりがモニターで見ていたタンクよりも大きい気がする。装備も鎧のような重装備ではないようなので、タンクで多い重戦士の職業ではないのだろう。


「フィルの職業は盾使いと道具使いです。重戦士よりも盾スキルは多いですが、HPも守備も低い盾使いと、道具の使用効果を高め、使用速度を上げることで戦闘中でも使用しやすくなる道具使いの組み合わせなので、まだ戦闘中に使える道具が充実していない今では戦闘に参加することがほとんどできないんです」


 盾使いと道具使いか。重戦士よりも守備が低い代わりに敏速や器用さなどは高い盾使いでは、敵の攻撃が激しくなるとすぐに受けきれなくなる。軽戦士よりも敏速は低いので攻撃を避け続けるのもきついから、スキルが充実するか良い盾を手に入れるまでは不遇ってわけだ。

 道具使いは生産職がもっとアイテム開発をしてくれれば良いが今はきついな。攻撃力も低いから攻撃しても与えるダメージは、俺が攻撃するのと同じか、もしかしたら俺よりも低いかもしれない。


 まあ、今の俺達にとっては凛花がタゲを持たなくて済むならそれだけで良いから、今後の成長に期待ってところだな。プレイヤースキル自体は悪くないようだから、回復と支援魔法で十分戦えるレベルではある。


 しばらくは、フィルの回復をナナカが付きっきりでやって、支援魔法と凛花の回復が俺の仕事でいいか。ミナトには安全圏から魔法で攻撃をしてもらえばいいし、フィルのためにも生産職として頑張ってもらわないといけないから全員に役目はある。


 クランとして活動するのであれば、これからも人が増えていく可能性はあるが、今はこのメンバーでいいだろう。行き詰まるようなことも無いだろうし、攻略組でトップを走り続けたいわけでもない。

 俺としてはリアルマネーの方が関わってくるから、目立つためにもトップを走るのはいいと思うが、ある程度最初に目立ったおかげもあって、視聴者は稼げているだろう。ガチガチの効率厨みたいなパーティーよりも、こういうゆるい感じの方が気楽でいいし、見ている側としても他と違いがあって楽しめるだろう。



 ミナトが魔法を外している間も、危なげなくフィルが敵のタゲを取り続けてくれたので問題なく倒しきることができた。


「皆お疲れ様。一旦休暇しよう」


 戦闘結果に満足だったのだろう。凛花が笑顔でレジャーシートを地面に敷く。レジャーシートは別に必要ないが、この方が雰囲気が出ると言って凛花が愛用している。レジャーシートで出る雰囲気ってピクニックか何かでもしているつもりなのだろうか。


「うんうん。皆良い感じだね。これなら問題なく戦えるよ」

「わ、私は回復の度に近寄って来てもらって、攻撃もできずにすいません」

「私も何度か助けてもらって申し訳ないです」


 ナナカとフィルは自分達が足を引っ張っていると落ち込んでいるようだ。ミナトは魔法なんて外す前提でいるし、生産の方で頑張ればいいとでも思っているのか、ゆっくりとくつろぎながら手に入ったアイテムを眺めている。


「ダンジョンで戦えるプレイヤーの方が少ない現状であれだけ戦えれば十分だよ。それに、私達は強い仲間を探しに行ったんじゃない。一緒に戦える仲間を探しに行ったんだ」

「強くなくていい。一緒に成長していこう。俺だってレンヤだって、ステータス的にはそれほど強くない」


 凛花が飛び抜けているだけで、もし俺の横にいるのが凛花じゃなければ俺達もダンジョンで戦うことなんてできずにいた。

 別に凛花に頼ったっていい。その中で自分ができることをやりさえすれば。


「足を引っ張るとは思いますが、これからよろしくお願いします」

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