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仲間が……欲しい

 取引ボードにアイテムを登録する前に、今売りに出されているアイテムを見る。消費アイテムはそれほど使用量は多くないが、それでも店売りの物を買うよりは取引ボードで買った方がかなり安く済む。供給が安定していないのと値段の上下があるのが欠点だが、そのくらいは仕方がないことだ。


「HPポーションはやっぱり高いね。店売りのと殆ど値段に差が無いね」

「ヒーラー人気が低い分、HPポーションで回復しないといけなくなるからな。しばらくすれば値段も落ち着くさ」


 もう少しヒーラーが増えれば供給が追い付いて値段も安くなるだろう。俺達はそれほど使わないから問題ないが、パーティーメンバーが増えると必要になるかもしれない。

 MPポーションは魔法職が人気無さすぎて、かなり安い。作っている人が少ないが、素材が手に入りやすいので生産スキルのレベル上げのために作っている人が一定数いるのでありがたく買わせてもらっている。


「あ! この服かわいい」


 凛花が指さすのは防具というには薄い、普通の白いスカートだ。一応は防具に分類されているので守備力もあり、今の凛花の装備と変わらない守備力なあたりゲームだなと思う。


「高くないから買ったら? 街中だといつも装備外しているから初期の服以外にも服は合った方が良いでしょ。それに凛花なら似合いそうだし」

「そ、そう? じゃあ買っちゃお」


 凛花が買ったスカートをさっそく身に着ける。ゲームだから穿くモーションも無く急に衣装が変わったあたりは残念だが、白いスカートが白い足に栄えて似合っている。余談だが、装備欄から装備せずに普通に着替えるように装備することも可能らしい。


「ど、どうかな?」

「似合っているよ。もとが可愛いから変な服じゃなければ似合うってのは良いな」

「あ、ありがとう」


 少し照れたようにスカートを引っ張る姿はかなりかわいい。幼馴染とはいえ、慣れるようなものでもない。


「誰かと思ったらツキヤか」

「ん? ミナトか。久しぶりだな」

「久しぶり。そのスカートが売れたから様子を見に来た」

「売れたからってことは、ミナトが作ったのか」

「うん。ツキヤから買った素材で作った」


 初日から素材を買い集めていると思ったら生産系のプレイヤーだったのか。初期から生産系を選ぶなんて物好きというかコアというか珍しいな。少女キャラで生産職なんてさらに珍しい。


「ミナトさんだっけ? これ一人で作ったの?」

「ミナトでいい。素材は買ったけど作ったのは一人で」

「私はレンヤ。好きに呼んでいいよ。ねえミナトちゃん。私達のクランに入らない?」

「おい! クランってなんだよ!? そんなの聞いてないぞ」


 パーティーメンバーを探そうとは言ったけれども、自分達のクランを作るなんて聞いていない。

 クランはパーティーと違い上限人数がない代わりに経験値の共有などはないが、クラン専用のアイテムや施設などもあるので便利だ。だが、クランを作るにはクランハウスというクランの拠点を作らないといけない。クランハウスは安くても100万ベルからなので今クランを作るのはきつい。


「でも、どうせ作るなら早い方が良いじゃん。お金なら八割くらいは集まっているんだからダンジョンでちょっと頑張ればすぐだよ」

「八割って言っても今預けているアイテムを全部売っての話だろうが。それにミナトの答えも聞いてないし」


 ダンジョンで主に頑張るのは凛花だからあまり強くは言えないが、それでも手持ちの金をすべてつぎ込むのはきついぞ。


「私はクランに入ってもいい」

「ほら、ミナトちゃんもこう言ってるじゃん。有能な生産職とは縁を持ってた方が良いっていうのは、ツキヤが昔言ってたことだよ」


 確かに凛花がネトゲを始めたころにそう教えた記憶はある。ミナトはこの短期間のうちに自分でレシピを見つけ出した実力はあるから、引き込めるのであれば引き込みたい人材だ。


「仕方ないな。数日はダンジョンで金稼ぎメインで頑張るか」

「やった! これからよろしくね、ミナトちゃん」

「うん、よろしく。戦闘は下手だから任せる」

「そういや、ミナトは戦闘はしたことあるのか?」

「最初のころに少し。魔法職だからその後はパーティーにも入れなかった」


 サービス開始から数時間も経たないうちに魔法職は使えないって言われ始めたからな。一日が経った頃には、パーティー募集でもあぶれまくっていたし。


「戦闘はレンヤに任せたら良い。ただ、少しずつでも戦えるように練習はしていこうな」

「戦闘は任せなさーい! ツキヤも不人気のヒーラーだからどんとこいよ」

「二人のことは知ってる。中継でも掲示板でもかなり有名だから」


 掲示板ってのもあるのか。まあ、これほど話題のゲームなら掲示板でもスレくらいたつか。なんて言われているか怖いから、掲示板は見ないようにしよう。どうせ、男なのに後衛で、戦闘を凛花に任せているから叩かれているだろうな。




 ミナトは手持ちの素材でアイテムを作ると言うのでフレンド登録だけして、一旦別行動になった。金を使うことが決まったので買い物はできないが、他のパーティーメンバーを見つけるためにも街を見て回るのは続けることにした。どうせ、凛花の疲労感がましになるまではダンジョンにも行けないから急ぐ必要無い。


 街を区切るかのように流れる用水路。四角い街の中を三分の二ほど位置でさらに四角い用水路があり、外に出るには橋を渡らないといけない。

 橋の上から見る景色は幻想的だ。街中を流れているとは思えない澄んだ水が、現実世界の一日で四度沈むこの世界の太陽の光をキラキラと反射して、天然のイルミネーションのようにも見える。


「湖の上に街をつくったのかと疑うような光景だね」

「現実的ではない用水路の大きさなのは間違いないな。街の中にこれだけ大きな橋を作るなんて大変すぎるだろう」


 だってこの橋、下を覗けば水面まで少なくとも20メートルはあるぞ。落ちたら痛いで済まないかもしれない高さだ。街の中にある規模ではない。こんなに水が必要とも思えないし、船もどんな大きさの物を使うつもりなのかと言いたくなる。


 橋を渡った先には、街の外で狩りをしたりする人のための店があったりする。街の中心付近はダンジョンで盛り上がり、外周付近は外を探索するプレイヤーで盛り上がる。現状はまだダンジョンで狩りを安定させられているプレイヤーが少ないので、こっちの方が人が多い。


「結構人がいるね。でも、もうパーティー組んでいる人が大半みたいだね」

「一週間経っているからな。パーティーを組みたい人はもう組み終わっているだろう。向こうにパーティー募集に使われている酒場があるみたいだから行ってみようぜ」

「うん。良い人がいればいいんだけどなー」


 この時点で余っているということは何かしら欠点があるということだから、難しい気もするが。三人くらいのパーティーと合流するか、職業的に不人気で余っている人を探すかだな。ヒーラーは余っていそうだからここで粘っている人がいれば声さえかければパーティーに入ってくれそうだけれど。


「おお、ゲームって感じだね!」


 ガヤガヤとうるさい酒場はゲームや漫画の中でよく見る光景だ。酒を勢いよく煽って顔を赤らめている人もいるが、VR内で酒を飲んで酔っ払うのだろうか。わざと顔を赤くしているのか、それともバッドステータス系の何かがあるのか、はたまた本当に酔っぱらえるのか。俺は高校生だし、酒を飲みたいとも思わないから、ゲーム内なら合法と言われても飲む気はないが。


「あっちに募集が張り出されているみたいだな」


 大きな掲示板を埋め尽くすかのように貼られた紙。近づいてみると、この紙自体は装飾品のようで、パーティー募集一覧という画面が表示されたのでそれをタップすると内容が見れた。画面を表示させたまま近くの席に座れば、そのまま見ることができたので座りながら凛花と一緒に確認する。


「やっぱりパーティーにあと一人か二人募集っていうのが多いね。でも、私達がメインになりたいから、募集というよりも入れて欲しいっていう人の方が良いんだよね」

「そうだな。すでにリーダー役がいるパーティーだと面倒なことになりかねない」


 パーッと一覧を見ていくがなかなか良さそうな人が見つからない。少し諦めながら適当にスクロールしていると、誰かがやってきたようで後ろから声をかけられた。


「あ、あの……パーティー募集ですか? よ、よかったら私達をパーティーに入れて欲しいんですが……」


 緊張した様子で話しかけてきたのはふんわりとした優しそうな雰囲気の少女。ピンクの髪にこのおどおどとした感じは男には人気が出そうなのにパーティーに入れてもらえないのは、その身に着けている装備が魔法職の装備だと一目でわかるものだからだろう。もしかすると、全部魔法系に振っているのかもしれない。見ただけでは判断しにくいが、耳が少しとんがっているように思えるので、エルフか妖精系の種族を選んで可能性がある。さらに装備は魔法職で腰に剣などを全く装備していないあたり、二つある職業の両方を魔法職で埋めた可能性がある。


「私達ってことは他にも誰かいるの?」

「は、はい。向こうで座っているのが私の友達です」

「君含めて二人ね。君はもしかしてヒーラー?」

「う……ヒーラーです。やっぱり、ダメですか?」


 そこまでヒーラーに拘るというのも珍しいが、ヒーラー自体は欲しいから問題ない。性格的に戦闘は苦手なんだろうか。だから補助的な職業を選んだが、その職業が不遇だったと言うところだと予想する。


「ヒーラー自体は問題ないよ。むしろヒーラーは欲しかったから。もう一人の子はどうなの?」

「フィルはタンクに近いと思います」


 役割的には問題ない。むしろ、ちょうど欲しかった役割の子が飛び込んで来てくれたような感じだ。

 話している感じ騙しているような感じもないし、プレイヤースキルはどんなものかわからないが、それは仕方のないことだ。


「俺はありだと思うが、レンヤはどうだ?」

「私も良いと思うよ。やる気はあるみたいだから、慣れれば問題ないだろうし」

「じゃあ、パーティー……いや、俺達でクランを作るんだが、そこに入ってくれるか?」

「はい! せ、精一杯頑張ります」

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