三人でのレベル上げは
「それで、二人とも職業は?」
一度クランハウスに戻ってクランメンバーに登録した。レベル上げに行く前に、倉庫にしまわれた装備から二人に使えそうなものを探そうと職業を尋ねる。
「俺は重戦士と剣士のテンプレ系構成だよ。タンクと一応アタッカーもできるようにしておいた」
守備力と防具の適性が良い重戦士に、メイン武器は剣に絞られるが攻撃補正と防御面のバランスが良い剣士の組み合わせは、現状のテンプレ構成と言ってもいいだろう。
タンクに絞るのならば、重戦士と戦士系を重ねたり盾使いや大楯使いなどの組み合わせも良い。だが、タンクを捨てて攻撃に転ずる可能性を考えるのならば、ステをそこまで落とさずに攻撃力を上げられる剣士系が有力だ。
「私は精霊使いに剣舞士とかいうやつだな。属性アタッカーというやつだ」
属性特化型の剣士という感じか。剣舞士を使っているプレイヤーはほとんど見たことがないので詳しくはわからないが、剣士よりも特殊効果のあるスキルが多いらしい。
タンクにアタッカーなら悪くない。三人でなら少し無理して適正レベル以上の場所に行った方がいいだろう。
「装備はまた今度しっかり作るとして、今はあり合わせで我慢してくれ」
「まあ、仕方ないな」
「隠してた俺達が悪いからね。使えればなんでもいいよ」
二人が渡した装備を身につけて違和感がないか、軽く体を動かして確かめる。プレイヤーメイドの装備でも、ある程度ならサイズの調節も後から可能なのでサイズや着心地は問題ないようだ。
「金属製の鎧がこれだけ軽いなんてさすがゲームだね。このくらいじゃないと動きにくいから助かるけど」
「剣も片手で振れるものな。少し感覚になれないが、そこはツキヤがうまくカバーしてくれるだろ」
「はいはい。回復が間に合うように引いてくれればなんとかするから」
ORDEALの中は動きやすい。システムアシストによって装備の重さも軽く感じ、動き自体も補助される。
だが、どうしても現実とのズレに最初はついていけず、ゲーム内ならできるはずのことを現実の尺度で考えてしまって瞬時に動かなかったりする。そこは慣れてもらうしかないので、最初のうちは回復は多めに使った方がいいだろう。
「どこに行く? 適正レベル以上のところで戦うつもりだから、それほどどこも混んではいないと思うが」
「そりゃ、やっぱり試練のダンジョンだろ」
「そうだね。どうせ階層を進めないといけないなら、進みながらレベル上げをした方が効率的だし」
試練のダンジョンか。まあ、この三人ならなんとかなるかな。俺と凛花の時はアタッカーとヒーラーのみだったが、今回はタンクがいる。俺のレベルも装備もあの時とは違うから、危なくなったらタンクもヒーラーも引き受けて、二人にアタッカーをしてもらえばいいしな。
「じゃあ、行くか。階層を進めることを第一優先で、邪魔な敵だけ狩っていこう」
振り切った剣が炎を舞い上げ、敵を燃やし尽くす。
精霊使いのスキルにより、俺の剣にも精霊の力が分け与えられ、火の精霊の力により炎の剣が作り出されている。
これだけ近くにいても熱くないというのがファンタジーだよな。精霊に認められることができれば、その火に近づこうとも熱くもなければダメージもくらわない。味方への誤爆がないというのは、ORDEALの戦闘にはかなりありがたいことだ。剣で直接切ってしまえば剣のダメージは入るが、普段と同じ距離感で戦えるだけでもかなり違う。
視界には燃え上がる炎が見えるので、その恐怖心を乗り越えないといけないが。
「さ、さすがに少し休憩をしよう」
「そうだな。気がつけばもう5層へのポート前か」
「若いのにだらしないな」
さすがに二時間近くぶっ通しでプレイしていれば疲れるのは仕方ない。カグヤも元気そうにはしているが、それ以上反論はせずに木にもたれかかって座り込んだので疲れは感じているのだろう。
二時間で5層か。俺達がここまでたどり着くのに何日かかったことやら。
それだけこの二人がうまいというのはある。俺自身もかなり成長しているから、三人でもあの当時の五人よりも上だろう。
だが、それ以上に試練のダンジョンの情報が揃っているのが大きい。あの当時は本当にどこにあるかもわからないポートを地道に探し続けていたが、今となってはポートの位置というのはある程度わかっている。
ポートの出現位置は完全にランダムではなく、決まった箇所のうちのいくつかにランダムで出現する。なので、マップを確認してポートがあるかもしれない位置に直進し、その場所にないかあっても使用されていれば次に行くということができるので、探索時間は移動時間とたまに敵を倒すだけに抑えられる。
ポートの出現位置の特定は10層までしか情報が出ていないので、そこまでは駆け抜けたい。
「戦ってみてどうだった?」
「やっぱり怖さはあるね。攻撃が迫ってくると少し硬くなってしまうよ」
それは仕方がない。痛みはかなり抑制されるとはいえ、自分に向かって攻撃が迫ってくるとどうしても身構えてしまう。
「それ以上に、楽しさの方が強いから問題ないよ」
「自分でやると想像以上に面白い。もっと上手く、もっと強くなれるはずだと考えてしまう。ツキヤがハマるのも仕方がないな」
二人ともハマってくれそうなのでよかった。四人でできるのは嬉しいが、全員が楽しめないとすぐに終わってしまうからな。ORDEALに関しては元が高いのですぐに飽きてしまうと本当にもったいない。
「5層はゴブリンロードだっけ。どうする?」
「ツキヤの支援魔法があっても、ソウヤのタンク一枚で耐えきれるかは微妙っぽいよな」
「支援魔法とヒールを使いすぎればこっちにタゲが来るからきついな」
支援魔法とヒールを絶え間なく使い続ければいけるかもしれないが、そこまでやると今のソウヤではタゲを取ることができない。
ならば、いっそ最初から俺がタゲを取った方が手っ取り早いか。あの時の凛花ですらゴブリンロードのタゲを一人で受け持つことはできた。今の俺ならゴブリンも合わせてタゲを取ることはできるかもしれない。
「俺がタゲを取るから二人で殲滅していってくれ」
「いけるのか?」
「攻撃を捨てればなんとかなると思う。そっちへのヒールがあまりできなくなるから、回復はポーションを使ってくれ」
「できるというなら任せるわ。殲滅は私の得意分野だから任せなさい!」
「馬鹿みたいに自爆しないでくださいね」
「ゴブリン程度なら大丈夫」
あの時とは装備もレベルも違うからなんとかなるだろう。素のステータスに関しては上昇値がそれほど高くないので倍にもなっていないが、それ以外の部分は高くなっている。
それにこの程度で詰まっていれば、この先やっていけない。
「じゃあ、行くか」
「雑魚死したら罰ゲームな」
「いや、それはなしにしましょう。負けは考えない方がいいです」
「罰ゲームがしたくないだけだろ。まあいいけど。どうせ勝つから」




