表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/74

ポート探し

 ポートが見つからないので、探し回りながらモンスターと戦う。余裕のある戦いではないので、HPのMPの回復ついでに休憩を挟みながら進んでいるせいで、すでに二時間はダンジョンにいるはずだが、ポートらしきものは全く見つからない。


「かなり広いな」

「一応最下層は100層って公式のホームページに載っていたから、そう簡単にクリアさせないためにも広いんでしょ」


 5層毎にいるボスモンスターの攻略には時間がかかるだろうが、道中の探索に殆ど時間がかからなければ、攻略組なんてのは半年もせずに100層まで攻略してしまうだろう。

 サービスを長く続けるためには、簡単に進めるような短いマップで、ボスだけ強くするのでは駄目だ。ボスだけインフレさせれば攻略には時間がかかるが、プレイヤーが離れていってしまう可能性が高い。一部のプレイヤーには人気でも、その他大勢がいなくなっては駄目だからな。

 100層以降が追加されないとは限らないが、100層まででサービスを長く続けるなら、ある程度攻略できて、かつ単調ではないマップが必要だ。その点では、ダンジョンとは思えない自然豊かなこの光景と草原から始まり、森や山まであるこのマップは探索するだけでも楽しめそうで良い。


「ちょっとまずったね……」


 周囲を見れば、こちらに気づいているアクティブなモンスターが4体。できる限り単体と戦えるように動いていたが、疲労もあって周囲の警戒が甘くなってしまっていたか。

 凛花なら上手く立ち回れれば、2体同時でも問題ないだろう。だが、俺が2体のタゲを持つのはきついし、支援魔法を使えば、俺のヘイトが増えてタゲがこっちに集まる可能性もあって、サポートし辛い。


 これは死に戻り確定か?

 そう思ってしまうのを抑え込んで、突破口を探す。モンスターはミニボア2体にゴブリン2体。この階層では、ゴブリンが大量湧きすることも今のところ見ていないので、無いと仮定する。

 ミニボアならここまでも何度も倒してきたから動きはわかる。だが、俺ではダメージソースが足りないだろうし、直線的とはいえ動きはゴブリンよりも速い。

 ゴブリンは人型だから、動きに慣れていなくても、まだ読みやすい。移動速度は遅いが、腕の振りに関してはそれなりの速さだから当たらないように注意は必要だ。


「ミニボア2体。ほぼ支援無しでいけるか?」

「やってみせるよ。ツキヤがそう聞いてくるということは、私ならできると思ってるということでしょ。それなら、その期待に応えるだけだよ」

「それなら頼んだ。ヘイトさえ稼いでくれれば支援してみせる」

「大丈夫だよ、私だもん。それより、ツキヤが先にやられないでよね」

「それこそ大丈夫だ」


 凛花ならやってくれる。そう信じて、俺は2体のゴブリンと向き合う。

 凛花が勢いよく駆け出し、2体のミニボアに攻撃を加えたのを確認して、自分にプロテクトとヘイストの支援魔法をかける。

 支援魔法をかけてなお、凛花よりも動きにキレがないなとか考えながら、凛花とゴブリンの両方を視界に入れられるように位置どりを変える。


 攻撃魔法が無い俺では、後衛職のステータスでの殴りしか攻撃手段が無く、まともな武器もない今の状態では100回近く攻撃を当てないと倒せないだろう。それこそ、思いっきり踏み込んだ攻撃なんて当てることができれば話は別だが、そんなことを狙っていたらこっちがやられるだろう。

 歩いている間に拾った木の棒を手に、攻撃に当たらないように間合いを取る。当たらなければダメージが無いというのは有難い。普通のゲームなら後衛職で装備も無しに時間稼ぎは厳しいが、ORDEALでならそれも不可能では無い。

 手に持った木の棒で間合いをはかりながら、攻撃モーションに入ったらその場を離れる。範囲攻撃や遠距離攻撃を持たない鈍足の相手ならば、これで問題ない。離れすぎてタゲが移ることにさえ気をつけて、近すぎず離れすぎずの距離を取り続ける。


 三、四度ゴブリンが攻撃を空振りする姿を見たところで、詠唱を始める。何もしないとヘイトが溜まらず、近くで戦っている凛花にタゲが移るし、凛花の戦闘を楽にするためにも支援魔法が必要だ。

 凛花の動きなら数秒程度目を離していてもだいたい予想ができる。詠唱とゴブリンの動きに主に集中しながら、時折凛花の位置を確認する。


 詠唱の完了したプロテクトを飛ばした瞬間に、今度はヒールの詠唱を始める。

 ミニボアのHPがまだ両方とも半分以上残っているのを見るに、攻め込まずに回避優先で戦っていたのだろう。俺がプロテクトを飛ばしたことにより、凛花が攻撃に移ると考えてのヒールの詠唱だったが、見事に予想通り凛花が攻撃の手を強めた。


「スラッシュ! くっ……もう一回スラッシュ!」

「ヒール!」


 一撃もらう前提でスラッシュをクールタイム明けに立て続けで発動し、一体のミニボアのHPを削りきった。凛花のHPも次をくらうとやばいので詠唱の終わったヒールをすかさず放てば、背中越しにナイスと空いている左手で合図を送ってきた。


 これで後は気を抜かなければ大丈夫だな。向こうのタゲは凛花が完全にヘイトを稼ぎきったし、こっちも凛花が直接攻撃をしなければタゲが移るほどのヘイトの逆転は起こらないだろう。



 使える支援魔法を立て続けに凛花にかけていけば、気がついたら敵は全滅していた。


「ふう。今のはちょっとヒヤッとしたね」

「ミニボアとゴブリンが半分ずつで助かった。組み合わせが違ったらやられていたな」


 俺が引きつけられるモンスターだったから良かったが、そうで無ければ凛花が受け切れずにHPを減らし、そこに俺が回復をしてヘイトを溜めてしまいやられる。そして、サポートの無くなった凛花がジリ貧でやられて終わりとなっていただろう。


「とりあえず、頑張ってポートを見つけて脱出。その後に、手に入れたドロップ品なんかを売って装備を買わないとね」

「そうだな。この辺りのドロップ品なら、現状であればそこそこ良い値で売れる可能性はある」


 生産職がどれほどいるのかはわからないが、こういうゲームなら少しは生産系に回る人はいるはずだ。推奨レベルが10ということは、現状狩りが行われている低レベル帯の狩場よりは良いアイテムを手に入れている可能性が高いので、他からの供給が無い今が金を稼ぐ狙い目になる。




「これは……どうする?」


 再びポートを探し始めて10分ほど。ついにポートを見つけたはいいが、先ほど以上のピンチも訪れていた。


「さすがに10体は無理だよな。上手く敵を釣れるかもわからないし」


 ポートに向かおうとすればモンスターの群れとぶち当たる。すでに3体がアクティブになりこちらに向かってきているが、その奥にさらに7体のモンスターが控えている。

 普通のMMORPGであれば、敵がアクティブになるのは一定距離内に近づくか、攻撃などヘイトが発生する行動をとった時だ。多分、ORDEALもその両者が関わっていて、さらに物音などの要素も加わっているとここまでのプレイで予想できる。

 この距離で戦闘をしてしまえば、戦闘音で気づかれる可能性がある。ここから少し離れてついてきたモンスターだけを先に倒すことができるのかもわからないので、あのポートを狙うのはかなり厳しい。


「厄介なのはミニボアとスモールウルフだよね」

「ああ。あの二種類は動物型なのもあってスピードが速い。気がつかれたらすぐに距離を詰められるだろうな」

「途中で気づかれて混戦になるのが怖いなら、いっそ突っ込んでみる?」

「いやいや、さすがにあの数を同時に相手するのは無理だろ」


 10体だぞ?さすがに囲まれたら、ダメージを受けないなんてことはできないだろう。


「いや、戦うのじゃなくて、そのまま走り抜けてポートまで行くの」


 ある程度のダメージは覚悟で走り抜けるのか。上手くガードさえすればダメージが殆どないORDEALなら、走りながら体に向かってくる攻撃だけ防げば、ポートまでならいけるかもしれない。


「だが、ポートがすぐに使えるかが問題になるぞ」


 モンスターが近くにいると使えないタイプだったり、起動してから時間のかかるタイプだったらアウトだ。


「そこはもう運任せでしょ。どうせ、他のポートまで行く間にやられるのも運だし、それで死に戻るくらいなら、ここで突撃した方が見ている人的にも面白いでしょ」


 所詮はゲーム内だから、死に戻ったところでデスペナルティーを受けるだけだ。それなら、派手に散った方が見ている人の記憶にも残って、次からの集客にもなるか。


「そうだな。じゃあ突っ込もうか」

「うん! ステータスの高い私が先に行くよ」

「いや、二人同時に行こう」


 凛花と顔を見合わせて、二人同時に頷く。

 大きく息を吐き出して、気持ちを落ち着かせながら武器を握る。


「行くぞ!」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ