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ハイオークは

「HP高いねー。動きは読みやすいからいいけど」


 HPを五割近く削ったところで、一旦休憩をとるために凛花が俺のもとにくる。確かにHPが高い。凛花も別に手を抜いているわけでなく、ミナトの魔法でダメージ自体はゴーレム戦よりも稼いでいるはずなのに、HPゲージの減りはゴーレム戦とあまり変わらない。

 ミナトのダメージ量が増えたが、フィルがウォークライとセベラムでひたすらヘイトを稼いでいるおかげでタゲは問題なさそうだ。このまま俺と凛花が休んでいても勝てそうなほどの安定度だが、そろそろHPが半分を切って行動パターンが変わる。支援魔法をかけなおして切り替わる瞬間を待つ。


「ブオオオォォォ!」


 ハイオークの咆哮。槍を地面にドンッ!と音を立てるように叩き付けると周囲から20体はいるであろうヤドザミの群れが現れた。

 数が多いな。俺と凛花で処理するには時間がかかる。それに、いくらヤドザミと言えども、ガードの外から攻撃をくらえばナナカの回復だけではフィルの回復が追い付かない。


「いくよ。それが最善」

「そうだな。初手は頼む」


 剣を構え、ゆっくりと息を吐き肩の力を抜く。

 やっぱり敵が複数になるとタンクが一人では厳しいな。俺もタンク役がもっとできるようにならないとな。雑魚を引き受けられるようにならないと、俺の力では長時間タンクはできないし気を抜けばやられるから、ボス級を毎回引き受けるのはきつい。

 駆け出す凛花の後ろを少し遅れて追いかける。集中しろ。二撃目に合わせて飛び出せ。


「スラッシュからのエアブレイド! さらに、三連斬!」


 スキルコネクトにより繋がれた計五連撃。激しい動きとエフェクトがハイオークを襲う。目で追うのはやめ、凛花の動きを予測する。

 ハイオークののけぞりと凛花のスキル硬直。先に動き出すのはハイオークだ。振るわれる槍を凛花の横に入り、あたらないように切り上げて弾く。


「こっちは俺達で耐えるから、ヤドザミの処理を頼む!」


 一体だけなら攻撃していれば足止めはできる。ヘイトを稼ぐスキルをフィルが使っても、その進行方向を抑えればタゲはとれるので、絶え間なく二人で止め続ければいい。


「そっちは頼んだわ」

「回復はできそうなら飛ばします!」


 ガードしても削れる俺のHPを見てナナカがヒールを飛ばしてくれる。だが、ダメージ量を考えてもガードで受けていてはフィルの回復がきつくなる。ヤドザミの処理にどれだけ時間がかかるかによるが、あまりガードで受けるのは控えないとな。


 この世界での動きにも慣れてきた。凛花に合わせること自体はもとより問題がないので、凛花が俺を信じて攻撃をする分、そこをしっかりと防ぐ。

 ただ凛花の動きのキレはどんどん良くなっている。俺が成長するのと同じかそれ以上に成長している。縮まりそうにないこの差が、俺の心を焦らせる。


「攻撃控えるから、20秒休んで」

「頼んだ」


 俺の集中が切れかかったのに気づいた凛花が攻撃をやめて、防御に入る。

 三歩下がって一度大きく息を吐くと、どっと疲れが押し寄せてきた気がした。


「フレアレイン!」


 ヤドザミの処理はミナトの魔法で上手くいっているようだ。あと数分もすれば合流してくれるだろう。ゴブリンロード戦では、ゴブリンロードを倒してもまだ雑魚のゴブリンが残っていたが、今回はあの時以上の群れだが余裕で倒せている。範囲攻撃をできるようになったのも大きいが、これで攻撃魔法の雑魚処理能力と火力に関しては十分証明できただろう。


 目を閉じて周囲の情報を一度シャットダウンする。見るのはハイオークの動きだけ。凛花の動きは意識して見ずに、視界に映る情報から感じろ。


「代わるぞ。こっちも20秒耐える」

「任せたよ。すぐ戻るから」


 槍を受け止めて、すかさず自分にヒールをかける。凛花にも休憩してもらって、今度は俺が一人で耐える。捌き続けるだけなら、俺だって負けてられない。

 研ぎ澄まされた感覚が、攻撃のくる場所を勝手に予想し体を動かす。剣で流すことだけを意識して最後に微調整を加えれば、ハイオークの攻撃も直撃することはない。


 20秒って結構長いなと集中した状態だと思ってしまう。六度目の攻撃を大きく弾くと、互いに勢いで仰け反った俺とハイオークの間に凛花が現れた。


「ナイスアシスト!」


 そう言って攻撃を始める。これでもう負けはないな。楽しそうに剣を振るう凛花に合わせて、俺も自分の役目を果たす。




「ファイアーボール」


 俺と凛花の間を火の玉が通り抜ける。驚いて少し動きが止まったが、まっすぐと飛んでいったファイアーボールがハイオークにあたり動きを止めたので、その間に後ろに下がる。


「ヤドザミ殲滅完了しました!」

「ばっちり」


 ヤドザミを倒しきったのでこちらに来てくれたようだが、今のファイアーボールはギリギリだったぞ。ミナトを見ると、悪びれた様子もなくVサインを作っていた。


「ちゃんと狙ったから大丈夫」


 実際俺達にはあたらなかったし、ハイオークの攻撃のタイミングに合わせて腕に命中したため攻撃もキャンセルされたが、ズレていたら危なかったんだからな。


「結果オーライ」

「はあ……まあ、いい攻撃だったよ」


 結果的には完璧だったからな。狙ってやったなら責めることはできない。どうせ、外れていても崩れるほどのことは無かっただろうし。


「じゃあ、ここからは私がタゲとるわよ」

「頼んだよ! 後は皆で押し切るよ!」


 ヤドザミさえ処理しきれたなら後はどうということはない。さっさと終わらせたいので俺も攻撃に参加し、ハイオークのHPはどんだん減っていく。そのまま崩れることもなく、無事に倒しきることができた。

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