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新アイテムの性能は

 ダンジョン探索を終え、プラバスタのメンバーと合流する。10分ほど早く集まったが、今回のモンスターは時間限定系のモンスターなので早く行っても意味がないため、ゆっくりと喋りながらアンブール草原に向かう。


「そういえば、新アイテムの性能が掲示板で報告されてたぜ」

「早いな。ドロップ率も考えればかなり大人数で取り掛かったのか」


 俺達の10人パーティーでも一個目をぎりぎり作れない程度しか一日目は時間も短く集められなかった。ここよりも推奨レベルの低いフィールドで狩っていたなら倍の人数はいてもおかしくない。今日の朝にも出現時間はあったからそこを使ったんだろうな。


「で、性能は?」

「悪くないが、思ったほどでもないみたいだな」

「私も動画を見ました! タグリッドリングというアクセサリーで、確かにターゲット機能はあったんですが、魔法だと詠唱前に、遠距離攻撃スキルだと発動前にターゲットを決めないといけないみたいです」

「それに追尾性もそれほどないな。ターゲットに向かって真っ直ぐ正確に飛ばせるのと、少しは追いかけてくれるが、あれなら普通に避けられるな」


 もう動画も投稿されているのか。遠距離攻撃が百発百中になるようなら今まで不遇で苦しんでいたプレイヤーからそれはそれで反感があるだろう。それに、遠距離攻撃の火力は高めなので、百発百中にもなれば近接アタッカーの存在意義が今度は問われることになるからな。


「使ってみないとわからないですが、攻撃魔法に関しては精度がかなり上がると思います。ヒールは敵の間を縫って使うには難しいかと」


 とりあえずミナトには使えるということか。真っ直ぐ飛ばすのすら苦手な人には十分だろうから、今よりは誤ヒールなんかも減って魔法職の不遇はマシになるだろうな。


 移動しながら動画を見せてもらったが、スキル発動前にターゲットと一言入るのと、詠唱中の一部が変わるようだ。もしかして表示された詠唱から変化させることで魔法の操作が出来たりするなんてことはないよな?


「やっぱりツキヤさんも考えましたか。掲示板でも同じように詠唱の変更については意見が出て現在検証班が試行錯誤中です。ただ、今のところ良い報告はないようですね。詠唱自体が独自言語のようなので意味の解読が難しく、変更箇所も変更内容もわからないので不発に終わってばかりなようです」

「それに詠唱を変えるだけでいいのかっていう疑問もあるからな。ORDEALって一定行動を繰り返すことで覚えるスキルや、スキル動作をなぞることで使えるようになるスキルもあるみたいだから、詠唱以外にも何か条件があるかもしれねえ」


 そうなのか。職業的に覚えるもの以外にもスキルの取得方法は隠されていると。そうなると詠唱以外にも何か必要になる可能性はある。さすがに序盤ですぐにわかるほどのものならテコ入れで新アイテムの追加なんてしてこないか。

 ターゲット機能自体は比較的簡単に見つかる詠唱変更だったのかもしれない。思ったよりも通常の攻略が捗っていなくて、新アイテムとして実装したのであれば、俺達が速攻でダンジョン攻略を始めたせいというのもあるかもな。推奨レベルまで上げることもなくダンジョンに挑み始めたプレイヤーは多い。その分、隠しクエストなんかの発見は遅れているだろうから、もしそれが原因なら悪いことをしたな。しらみつぶしに調べてくれているであろう検証班の人に期待しておこう。



 詠唱について考えているうちにコルドラゴンが出現し、作業ゲーが始まる。3体倒したところで一つ目の素材が集まり、ミナトはさっそくフィールド上だというのに作製を始めた。

 今日はMP回復ポーションを多めに持ってきたので、スキルも無駄にならない程度に奮発しながら戦う。


「できた」


 ミナトが掲げるのは動画ででてきたタグリッドリングとは見た目がかなり違う。タグリッドリングは金色の太めのリングにエメラルドのような緑の装飾が付いたものだったが、ミナトの手にあるのはまず指輪ですらない。銀色の細めのブレスレットで装飾もないシンプルなものだが、これはこれで綺麗だしアクセントになって良いだろう。ミナトの作る装備は装飾が少なめのものが多いし合わせるには良いと思う。


「わーこれ綺麗ね。ゲームの中とはいえあんなギラギラしたの付けるのは嫌だなと思ってたから、これならむしろ付けたいわ」

「クレスにあげる」

「え? いいの? 私は今のところすぐに必要というわけじゃないから後でもいいわよ」

「いいの。これはクレスのイメージ」

「そう? じゃあもらうわ。ありがとうミナトちゃん」


 作ったミナトがクレスにと言うのなら、それを止めるつもりはない。ミナトが言ったように、ミナトはその人にあった装備を考えて作っているので、クレスに似合うと思って作った装備ならクレスがつけるべきだ。本当は先にミナトに付けてもらった方が狩り効率も上がるが、ミナトもやる気になっているからそこは気にしないようにしておく。


「さっそく使ってみるわね。ヒール」


 クレスがブレスレットを付けてターゲット機能を使ったヒールを放つ。動画でみたものよりも、先ほどまでのヒールよりも速く飛び、最後に少し曲がってトライの体をヒールが捉えた。

 ヒールの飛ぶ速さが全然違うのはなんでだろうか。ミナトを見るがターゲット機能の性能自体は変化していないようで首を横に振られた。そうなると、動画の方が編集されているのか、動画でヒールを使っていた白魔法使いとクレスで何か大きな差があるのか。


「凄いわね。イメージしていた軌道通りにしっかり飛んでくれたわ。今まではズレがあったけどそれが無くなった感じね」


 イメージ通りに飛んだ。つまり、ターゲット機能を使用しつつもクレスは今まで通り魔法を飛ばそうとしたわけだ。その魔法を放つ軌道のイメージの差が速度に繋がったと考えれば、昨日からずっとヒールを飛ばし続けていたクレスが使った方が速く飛ぶというのはおかしくない。


「あくまでアシストなんだな。イメージせずとも飛んでくれるが、イメージをすればそこからさらに補正されるというところか」

「それなら使えますね。パッと急いで使う時はイメージを固めにくいので補正してくれるなら助かります」


 ヒールなんて特に咄嗟に使うことが多いからな。一々止まってゆっくりと軌道を考えられるわけでもないから、ある程度こう飛ぶとイメージするだけで良くなるのは助かる。あとはどこまで細かく調節できるかだな。


「これ、変化する前の詠唱を唱えれば、追尾は消せるみたいね」


 クレスがシンにあたらずそのまま真っ直ぐに飛んで行ったヒールを見て、うんうんと納得したように頭を振る。

 視界に表示されるヒールの詠唱自体が変わると動画で言っていたから、もとの詠唱を全部覚えていたというわけか。あれ覚えるの結構大変だぞ。俺もヒールは結構使っているが覚えてなんかいない。

 だが、クレスのおかげで良いことが分かった。追尾が消せるなら、下手に外して変なところに飛ぶことは避けられる。さて、頑張ってヒールの詠唱を暗記するか……

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