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報酬は

 カーテンの隙間から差し込む光で目がさめる。目を閉じたまま手探りでAR端末を探し時間を確認すると既に朝の10時になっていた。

 何やらメッセージも来ているが、とりあえず起きて朝ごはんでも食べるか。


「うおっ!?」

「おはよう夏樹」


 ゴロンと反対側に転がって起き上がろうとしたら、凛花がこちらを覗き込んでいた。かなり近かったから驚いて飛び上がりそうになったが、寝起きの体はそこまで動いてくれなくて半分起き上がったところからベッドに再び倒れ込んだだけだった。


「おはよう凛花。あー……メッセージくれてたんだな」

「いいよ。どうせ寝てると思ってたし。ナナカちゃん達が13時からORDEALやろうって。17時からトライさん達とドロップの残りを取りに行くから、それまで試練のダンジョンの探索ね」

「13時からか。それなら朝ごはんじゃなくて、朝昼兼用でいいか」


 今食べて二時間ほどでまた食べるのも面倒だし。凛花がここにいるから一緒に何か食べようかな。


「凛花は昼どうするんだ?」

「今日はピザでも食べたい気分かな」

「じゃあ、出前でも取るか。適当に選んどいて」

「はーい。Mサイズ二枚注文入りまーす」


 本当に元気だなと鼻歌交じりでピザを選ぶ凛花を見て思う。こっちは凛花に任せて、俺は顔を洗いに行くか。食事の好き嫌いなんかは互いに知っているから、二人ともが食べられる物を頼んでくれるだろうし。



 この後にORDEALというゲームをやるというのに、それまでの暇つぶしに二人でゲームをして時間を潰す。お互いに対戦するようなゲームだと、俺も凛花も負けず嫌いなので長引く可能性があるので、今回は協力して生き残るタイプのゲームだ。こういうのでも、どっちが敵を多く倒したとかで少し競ってしまうが、直接戦うよりはましだ。


「あ、そういや先月の報酬確認した? 今日の朝に確定してたよ」

「まだ見てないや。ちょっと確認だけしてみる」


 アイテムも十分揃った状況で周囲に敵がいないため、誰かが来るのを潜んで待っていると、思い出したかのように凛花が聞いてきたので、ORDEALの公式サイトに接続しアカウント情報を確認する。

 先月は一ヶ月の内の半分しかORDEAL自体がサービス開始していなかったから、あれだけ目立ってもそんなに高くは無いだろうな。それにゴーレム戦は今月に入ってからだったし。


「これまじ?」

「まじまじ。もっと行くかなーと思ってたけど、五人で割ってだから思ったよりも少なかった」


 いやいや。お前の感覚と普通の人の感覚を同列に考えるなって。15日間ゲームしてただけだぞ。結構長い時間プレイしていたから時給換算すると安いのかもしれないが、75000円って日給5000円もらっていることになるんだからな。

 俺達は中継でしか稼いで無いのだから、これでもかなり高いだろう。特に昼間に潜ることが多かったから、視聴者もそこまで稼げる時間ではないのにこれだぞ。


「いや、十分だろ。これなら半年もせずにVRASとORDEALのお金は返せるな」

「そういや、そんな話だったね。50万くらいどうだっていいのに」

「50万ってそんな簡単に済ませられる金額じゃないから!」

「えー。私のお年玉で賄える額だよ? あっ! 敵発見!」

「お年玉って……ちょい待てって!」

「距離およそ300メートル。2倍スコープがあれば私なら当てられる! うわぁ、外した!」

「おい! 位置バレたじゃねーか!」

「まだ屋内という場所の優位がある。入口のドアに置きエイムで入ってきたところを狙うよ!」


 完全にゲームに集中して人の話を聞かない凛花に溜息を小さく吐く。俺も簡単に負けたくはないので、移動して敵の位置を確認しながら凛花のアシストに入れるように準備をする。

 窓越しに車が一台近づいて来るのが確認できる。あいつ、300メートルあるってのに車相手に狙撃狙ったのかよ……そんなのこんな状況でゲームしながらあてられると思ってるのかよ。

 完全に位置がバレているようで狙撃を警戒しながら車が近づいてくる。スナイパーも持っていない俺では狙えないので、近づいてきたらすぐに反応できるようにヘッドホンの位置を直して音をしっかり聞けるようにする。




* *




「いやー惜しかったね。いけると思ったんだけどなー」

「あそこで撃たなければもっといけていただろうな」


 結局、車で来た二人組は倒せたが、音を聞きつけてもう一組こちらに来ていたので、倒し終わったところで凛花が狙撃され、一人は俺が倒したがもう一人にやられ敗北した。



 届いたピザを二人で食べ、時間の15分ほど前にORDEALにログインする。前回ログアウトしたクランハウスの一室に戻ってきたので、いつも皆で集まる広い部屋に行くとすでに凛花以外のメンバーは椅子に座って待っていた。


「ツキヤさん! やっと来てくれました!」


 今にも泣き出しそうな潤んだ目をしながら、飛びつくように俺の近くまで来てナナカが見上げてくる。

 あれ?俺何かしたかな?心当たりが無さすぎて戸惑うしかない。


「ど、どうしたの?」

「報酬見たんですけど70000円も入っていたんです! あれどうしましょう」


 報酬の話ね。一瞬、俺が何か悪いことでもしたのかと思って焦った。まあ、いきなりあの額が入ってきたら驚くよな。凛花じゃあるまいし。

 額が違うっていうのは、最初の一週間ほど凛花と二人でやっていたのと、注目度システムとかいうやつの影響なのかな。その辺りの詳しいことは知らないが、金額の差を考えるとそこまで影響は無いようだ。

 多分これなら一番報酬が多かったのはミナトかな。探索は少し少ないが、その分装備を全員分作っているからそこで報酬が増えているだろう。


「もらっておけばいいよ。皆で頑張って稼いだものだから」

「そうは言っても、あまり役に立ててないですし」

「いや、三人がいてくれたおかげでゴブリンロードも倒せたし、今もトップで入られているんだから、気にしなくていいよ。どうしても気になるなら、これからもっと頑張ってくれたらいいだけだし」


 俺もVRASとORDEALの分の金さえ稼げればいいし。今のペースならよっぽどここから落ちない限りは50万なら到達できるだろう。学校が始まってからが勝負ではあるが、トップ争いから完全に引き離されでもしない限りは大丈夫だ。


「うう……もっともっと頑張ります!」

「私も頑張るわ。デュークさん達にも負けてられないからね」

「頑張る。しっかり役に立つ」

「頼りにしてるよ。これからもよろしく」


 揉めたり、険悪な雰囲気になるよりは全然ましだな。三人とも良い人で良かった。

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