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ボスへ向けて

「ツキヤさん大丈夫でしょうか?」

「大丈夫だよ。あれはただ疲れてるだけだから」

「疲れてるなら休憩しますか?」

「多分自分のせいで探索が遅れるのは嫌だって言うと思うから、気にしないようにしていつも通りやってればいいよ」


 VRASが連続プレイや体調変化によるアラートを鳴らすまでORDEAL内で感覚を慣らすために練習し、アラートが鳴ってログアウトしたら今度は現実世界で現実の感覚を確かめるというのを繰り返していれば、気が付くと徹夜していた。集中し続けていたのもあって頭がぼーっとする。肉体的には眠気が少しあるだけなので大丈夫だが、気を抜くとぼーっとしていたり躓いたりしている。

 戦闘中は常に何かを考えているので問題なく動けるので大丈夫だ。今のところ誤ヒールも一度もないし、回避ミスもしていない。


「ずっと練習してたの?」

「やっぱり体の感覚が違うせいで上手くいかなくてね。少しずつマシにはなっているよ」

「皆が心配するから、明日からは睡眠もある程度は取ってよね」

「悪い。プレイ自体には問題ないから、できるだけ気にせずにいつも通り探索してくれ」


 心配かけてしまっていたか。ちょっとこの後の休憩で10分ほどでいいから仮眠でも取るか。昼ご飯のときにでもコーヒー……いや、エナジードリンクでも買いに行って気休めに飲むか。



 *  *



 昼からは気休めのエナジードリンクと仮眠のおかげでいつも通り探索ができた。さらに、ようやく9層へのポートも発見し、一度クランハウスに戻って長めの休息をとり、夜からもう一度ダンジョンへと向かう。

 9層もなんら変わりなくモンスターを倒すことができるのを確認し、探索を再開する。


「今回はポートを見つけたら一回すぐに帰るよ」

「すぐには挑まないの?」

「今回はプラバスタはまだ7層の探索中。どれだけ急いでも10層に良くポートまで見つけるには数日かかる。だから、ポートさえ見つけたら一回帰って準備を始めて、プラバスタが9層に到達するか準備がある程度できたらボスに挑む。今回は先を越されないように急ぐが、一発突破は狙いに行く」


 記念に負ける前提で突っ込むのは性に合わない。せめて、できる準備は整えてから行きたいので一旦帰るのは確定事項だ。装備の更新については間に合わなければ仕方がないが、すでにある程度準備はしてあるので、今できている分だけになってしまう可能性があるのは仕方がない。一応それでも今よりは守備力は十分上がる。


 話しながらも探索を進めるが、そう簡単にはポートは見つからない。結局その日は見つからず、翌日は昼から探索を始めて二時間ほどしたところで森の木に隠れて近づくまで気が付かない位置にあったポートを発見した。


「今回もボスへのポートは私達が最初です!」

「やったね! 今回はかなり早くポートを見つけられたから余裕があるよ」

「じゃあ、一旦クランハウスに戻ろう。挑むのは早くて明日。プラバスタの様子を見て、できるところまで準備をするよ」


 クランハウスに戻ってきてさっそく用意していた装備を皆に渡す。凛花とフィルは一式全て、他の三人は一部だけだが、これで守備力は問題ないはずだ。凛花とフィルの装備は守備力は一段階高くなっているが見た目は殆ど変わらない。糸のおかげでラインだけでなく装飾が少しついたがパット見では同じ装備に見える。


「今日は装備に慣れるついでにレベル上げをしておいてくれ。ミナトはアイテム作成があるし、俺もやることがあるから、三人で狩れるところでいいから」

「はーい。今なら三人でも問題なく戦えるから6層にでも行ってくるよ」


 6層なら新装備で守備力も上がっているから、少しミスったところで問題ないだろう。それに6層なら他のパーティーにあう可能性も無いしな。

 俺も合流できるなら合流しよう。まあ、間に合うとは思わないが。


 休憩がてら作戦なども話し合う。とはいっても、ボスがどんなモンスターなのかもわからないので、作戦と言っても普段の戦い方を再確認するだけのものだが。

 一応、ボスが1体のみだった場合と複数体いる場合で出だしの対応を変える。複数体いる場合はゴブリンロード戦と変わらず、凛花が一番強そうな相手を単独で受け、残りをフィルが受け持つ。

 ボスが単独の場合が今までやったことがないので、厄介だ。単独でボスになるということは、それだけその1体が強いということだ。守備力を上げたフィルが受けられるかどうかも問題になる。フィルですら一撃でやられるのであれば、凛花がソロで戦うことになる。ゴブリンロードよりも強力な相手に対してだと、凛花ですら持つかはわからない。


 さすがに、フィルが受け切れない場合はリタイアだ。一回目の挑戦は全滅で、二回目に撃破を狙いに行くしかない。


 途中からは雑談も多くなった作戦会議を終え、レベル上げをしにダンジョンに向かった三人を見送って俺も動き出す。


「じゃあ、アイテムは頼んだ」

「任せて。素材がある分は作っておく」


 ミナトとも別れクランハウスを出て訓練室へと向かう。途中でチャットが届いたので確認すると、凛花がチャットを送ってきたようだ。


"並んで戦えることを期待しているよ"


 ゴブリンロード戦では、凛花が俺の期待に応えてくれた。だったら、次は俺が凛花の期待に応える番だよな。

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