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開始

 夏休み初日。今までの自分ならば昼頃まで寝ていただろうが、朝8時頃に起き、食事を済まし万全の状態で時計の表示を見つめる。

 サービス開始は朝の10時から。キャラメイクはその15分前から開始できる。キャラメイク自体にはそれほど時間をかける気はないが、時間になればすぐにキャラメイクを開始するつもりで用意している。

 再度ORDEALの公式サイトを確認して時間を潰す。1分前にVRASを起動させて横になった。


「5、4、3、2、1。ORDEAL、ゲームスタート!」




 目の前に広がる賑やかな街並み。そこを歩く人々はNPCだろうが、本当に生きているかのように生活感が漂う。

 キャラメイクを終え、時間までうきうきとしながら、アバターの操作感を確かめていた。時間になり、ログインできるようになったところで、すかさずログインしチュートリアルも何もかもスキップして最初の街に降り立った。

 凛花から連絡が来るまでに少し街を見ておくか。人が少ないうちの方がゆっくり見やすいからな。


 歩く感覚。地面に触れた感覚も、地面を蹴る感覚も現実と変わりないように思う。

 だが、体の動きは現実とは違うようだ。さすがに現実通りであれば、まともに近接戦闘なんて行えないだろう。そんなスポーツ選手かそれ以上の化け物じみた身体能力をした人間なんて、ORDEALをサービス開始から始める者の中にどれだけいることやら。

 動きにはステータスに応じた補正がかかるようで、普段よりも体が軽く感じる。試しにジャンプしてみると、普段の二割増しくらい高く跳べている気がする。

 街を歩きながら色々と考えていると、視界の端に通知アイコンが出ていることに気づいた。中を開くと凛花から何処にいるか聞かれていたので、目印になりそうな時計台の下で待ち合わせることにする。

 返信して、また街の様子を見るが、本当に驚くほど自然だ。ゲームのアルゴリズムで表現するには、それこそ膨大な量のデータが必要となるはずなのに、街の至る所がもともとそこに存在していたかのようなリアルさを持っている。


「お待たせ、ツキヤ」


 街の作り込みに感心していると、いつの間にか隣に一人の少女が立っていた。

 銀色のミディアムロングの髪、吸い込まれるような青い瞳。170センチの俺の鼻あたりの身長で、細身の体型。髪と目以外は現実と大差ないのに、そこにいるだけで絵になるのは、凛花の素材の良さといったところか。


「ほとんど弄ってないのな。元が可愛いから問題ないのかもしれないがよくやるよ」

「そういうツキヤだって、少ししか弄ってないじゃん」

「俺はこれで十分だから。お前と違って目立たないし」


 髪を少し伸ばして、目を赤くしたくらいだが、凛花と違って目立つ容姿はしていないし、男と女では価値が違うからな。


「で、どうするんだ?」


 突っ込まれても面倒だし、話を変える。それにいつまでもここで話しているよりは、早めに行動した方がいい。初めのうちは、場所の取り合いになる可能性が高いし。


「その前に。ツキヤは職業は何にしたの?」

「俺は支援術師と白魔法使いだな」


 ORDEALでは種族、職業が最初に選択できる。種族は一度決定すると変えられないが、職業は特定条件を満たせば変更又は上位職に転職できる。

 そして、職業は最初から二枠あり、かなり自由度が高い。


「ツキヤらしいと言えばツキヤらしい組み合わせだね」

「そういうお前はどうなんだよ」

「私は軽剣士と剣士の二つ」

「レンヤも人のことは言えないな」


 軽剣士は剣士よりも武器種に制限があるが、体術や魔法系統のスキルも覚えられる。予想はしていたが、馬鹿みたいな組み合わせだな。それでも、VRであればプレイヤースキルでどうとでもなる。凛花はそれができるだろうから問題ないだろう。



「基本的には私が前衛で、ツキヤが後衛だね」

「ステータスを考えればそうなるな。他にもパーティーメンバーが欲しいところだ」

「それは後々だね! 私達もVRに慣れないといけないし、今パーティーを募集しても誰が良いのかなんて分からないし」


 サービス開始すぐでは、職業や人柄でしか判断できないからな。俺達に必要なものも分からないし、少し待つのは賛成だ。


「レベル上げでも行くか? プレイヤースキルが重要視されるようだが、ステータスも高いに越したことはない」


 事前情報では、レベルアップによるステータスの上昇率はそれほど高くないとあった。

 体にかかる補正も一定ステータスを超えると補正自体は頭打ちになる。ダメージや結果に関してはステータス通りになるようだ。力に極振りしても腕を振る速さはある程度で限界に達してしまう。だが、ダメージは剣の振る速度が同じでもステータスに影響される。

 ステータスに合わせて、身体能力への補正が上がり続ければ、一定ステータスを超えれば補正がかかりすぎてまともに体を動かせない可能性もあるから仕方がないことだ。


「レベル上げも兼ねて、早速試練のダンジョンに行くよ!」

「は!? いや、あそこは1層でも推奨レベルが10だぞ」

「それでも、私達二人でならなんとかなるでしょ。スタートダッシュが成功すれば、目立つこと間違い無しだよ!」


 確かにゲーム内で死んだとしてもデスペナルティがあるだけだ。今ならデスペナルティ自体も苦にならないものだし、試しに行くのは良いと思う。

 VRという環境で、ゲーム内とは言えども死ぬという感覚がどんなものかは分からないのが怖いところだが。


 でも、今なら戦えさえすれば、中継に映ることはできる。後から追いかけるよりも先に目立った方が良い。


「行くか。だが、行くからには本気で行く」

「そうでなくちゃ。じゃあ、行こうか!」

キャラメイクでは種族+職業1+職業2の選択が可能。ステータスに補正と使えるスキルに変化あり

レベルアップ時は補正によるステータス上昇値と自由に振り分けられるポイントが少しあります

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