たまには休息も
これも閑話的なもの
ゴブリンロード突破から四日が経ち、7層へのポートも発見して順調に進んでいる。プラバスタのゴブリンロード討伐は多分今日か明日にでも成功するだろう。昨日の挑戦では新調した盾と鎧のおかげでタンクが安定し、ゴブリンロードをかなり追い詰めた。HPが五割を切ると動きが激しくなったゴブリンロードにリピドのガードが崩され、ヒールが間に合わない内に追撃が来て落ちてしまったところから崩れたが、今度は動きが激しくなるのも分かっているので対応してくるだろう。
そう考えると、何気なくさばききっていたいた凛花のプレイヤースキルはとんでもないものだな。動きが激しくなったことに気が付かない程、ゴブリンロードを圧倒していたということだ。
今日は、一日双天連月の活動は休止だ。ナナカとフィルが親戚の集まりで夜からしかログインできないということなので、いっそ一日休みにしようということになった。
「夏樹ー! でかけよう!」
「はいはい。分かったから下で待ってて用意したら行くから」
「はーい!」
凛花は元気だな。俺は一日ゆっくりしておこうかなと思っていたのに。外は暑いので出たくないが、どうせ断っても何かしら誘ってくるので、機嫌の良い最初のうちに応じておくのが吉だ。
夏なのでTシャツと短パンでいいやと適当に服を選びリビングに行くと、凛花がスカートで寝ころんでいた。ORDEALの中とほとんど変わらないくらい白くてすべすべした肌だよな。ゲームのアバターと現実。俺は現実の凛花の方が好きだな。銀髪に青い瞳は俺の好きな組み合わせでもあるが、やっぱり黒髪の方が落ち着く。
「スカートで寝ころぶなよ。中がみえるぞ」
「ちゃんと見えないように調節してたから大丈夫。夏樹が好きな太ももまでしか見えてないよ」
計算づくだったか。いや、まあ良い光景だったけど。
「で、今日は何するんだ?」
「買い物行って、時間になったらプラバスタのゴブリンロード戦を中継で見よ」
「そういや、いつもゲーム内で見ていたから、現実の方から見るのもいいな。じゃあ、駅前のデパートにでも行くか」
「うん。さっそく出発だ」
案の定暑い外の気温に辟易しながらもデパートに行く。女性の買い物は長いというが、凛花の買い物はそれほど長くないので昼前には買い物が終わり、昼ご飯を食べて時間を潰す。プラバスタの中継は14時頃の予定なので、時間の少し前に移動すれば大丈夫だ。
「やっぱりたまには現実でも出かけないとね。VRではかなり動いているけど、実際には動いていないわけだから、体が鈍っちゃう」
「疲労感はあるんだけどな。そのせいで運動する気はなくなる」
そういう点ではARの方が健康的なのかな。まあ、ゲームはほどほどにしろよって話なんだが。
「皆もいいって言ってくれるなら、一回現実でオフ会っていうのもやってみたいよね」
「でもオフ会って色々面倒だっていうしな。近くに住んでいればいいけど」
あの三人は中学校が同じかもしれないって言っていたから近くに住んでいるかもな。あとは俺達とどれだけ近いっていうのが問題だけれど。
「まだVRASとORDEALが生産数が限定されているから、話せる相手が少ないっていうのがさみしいよね。中継はかなりの人が見ているようだけど、やっぱりプレイしている人じゃないと分からない話も多いからね」
俺も現実の知り合いでは凛花しかORDEALをやっている人は知らないからな。今は夏休みでログイン率も高いが、夏休みが終わって学校が始まればログイン率が下がってしまうだろう。チャットとかなら話せるが、どうしてもチャットだとよそよそしくなりやすいからな。
「また今度聞いてみようっと。そういえば、プラバスタ以外にも4層まで来ているパーティーが二つあるんだってね」
「一回だけ中継を見たけど、両方とも結構ぎりぎりな感じだったから、プラバスタよりも先に上がってくることはなさそうだけどな」
「そうなんだ。でも、最近ダンジョンに挑戦する人が増えたから、だいぶ賑やかになってきたね」
そろそろ平均レベルが10近くになっているパーティーも多くなってきたので、ダンジョンにくる人も多くなった。ただ、ダンジョンの方がモンスターとの遭遇率などが高く、特に数が増える2層からは戦い方で苦戦するパーティーが多い。レベルと装備は良いので慣れさえすれば順調に攻略していくだろうが、追い付かれるよりは早く10層まで行けるだろう。
10層はまた俺達とプラバスタの争いになるだろう。今回は俺達の方が相性が良かったが、次はどうなるか分からないからな。明日からはまた頑張らないとな。