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勇者って

閑話的なもの

 いつもようにログインして人が来るまでの間クランハウスの中で情報を調べたりゆっくりしたりして時間を潰していると、昼ご飯を済ませたメンバーが続々とやってきた。


「レンヤさんどうしたんでしょうか?」

「何か考えているんだと思う」


 机に突っ伏している凛花を見てナナカが俺に尋ねてくる。こうやって机に突っ伏している時は眠たかったり疲れたりしている時か、何か考えている時が大半だ。ログイン前は元気だったから眠たいとかはないだろうし、今は何か気になることでもあったのだろう。


「どうしたんですか?レンヤさん」


 ナナカが思い切って凛花本人に尋ねる。むくりと起き上がった凛花が周囲を見て、皆がすでに来ていることに気づいた。


「ごめん。ちょっと考え事してて」

「やっぱりそうだったんですね。ツキヤさんが何か考えているんだろうって言ってました。それで何を考えてたんですか?」

「最近、街の中を歩いてたりするとね、皆私のことを見て勇者ちゃんって呼んでくるんだ。それで気になって掲示板とかも見てたんだけど、いつからそう呼ばれているのか分からなくて」


 そういや、ゴブリンロードを倒して戻ってきた時にも勇者ちゃんって呼んでる奴がいたな。


「そういえば、ツキヤさんもレンヤさんも掲示板は殆ど見ていないんでしたね」

「まあ、何書かれているか気になるけれど、どうせ変なこと書かれているだろうし」

「私も。それに追いかけるの面倒だし」


 見て嫌な気分になるなら見ない方が良い。俺達が見ていなくてもナナカ達が見ているので、有益な情報があれば教えてくれる。


「特にお二人のスレッドは進むの早いですからね。頻繁に見ていても見逃すことがあります」


 プレイヤーの中で目立っている度なら2トップだろうからな。凛花は容姿もいいし、俺は職業が両方支援職で不遇職だから話題にしやすいというのもある。


「レンヤさんが勇者と呼ばれだしたのは初日からですね。やっぱり一番乗りでダンジョンに行って、さらにそこで戦っていた姿が印象的だったからでしょう。ただ、他にも色々な呼ばれ方をしていて、勇者が主になったのはこの前のゴブリンロード戦からですが」

「タゲが移ったゴブリンロードを自分を犠牲にしてまで止めたところと、その後の圧倒的な戦闘から勇者のようだっていう人が急増した」

「私もあの時の映像は録画して何度も見ましたが、本当に圧巻の一言です!」


 ナナカが凛花のファンみたいになってるんだけれど、止めた方が良いのかな?

 もともと俺達のことも知っていたから、パーティーに入る前からファンみたいな感じだったのかもしれない。


「物理攻撃しかしてないし、職業的にも勇者というよりは戦士って感じだけどね、なんか勇者って魔法も回復も使える器用貧乏なイメージだから、むしろツキヤの方があってる気がする」

「それはお前がRPGをやっているからだろ。もともと勇者なんて勇敢な者ってことだから、最前線で戦うレンヤの方があってるよ」


 それに勝手に付けられた呼び名なので、俺達がどうこう言ったところで変えられるものでもないし。


「まあ、でもお二人はあまり掲示板は観ない方が良いと思います」

「やっぱり色々言われたりしてるんだ」

「最近は減りましたけれど、ゴブリンロード倒す前まではレンヤさん以外のパーティーメンバーを批判する内容のものは多かったですね」


 レンヤ任せだったからな。それにレンヤ以外は不遇職でもあるし。もっとまともなパーティーにレンヤが入っていればと思うのは仕方がないことだ。


「私のことはまあいいです。どうせヒールも飛ばせないくせにヒールしかできないですから」

「い、いや、そんなことは――」

「それでも、ツキヤさんを批判するのは許せません。不遇職だからってなんですか! 現状唯一の飛ばせる魔法使いで、状況判断にも優れていて、パーティーのことも気遣ってくれているのに!」


 あ、これ完全に暴走してる。古参ファンが新参にうわべだけ語られてキレた時のようなまくしたてる口調。というか、この子完全に俺達のファンだわ。別にファンだからってどうこうすることもないし、今まで通りだけれど、なんかちょっと照れくさいような。

 今はこれだけ熱く語られると少し引いちゃっているけれど。


「そのくせ、ゴブリンロード相手にレンヤさんがダウンしている間の時間稼ぎをしたと分かるや否や手のひら返しですよ。今でもまだ難癖付けている人もいますし、もっとよく見てから話したらどうかって――むぐぐっ!?」

「ごめんね。ナナカが暴走したから少し連れていくわ」

「あ、ああ。落ち着くまでゆっくりしてくれていいから」


 さすがにこれ以上はと思ったのか、ナナカの口を塞いで体を持ち上げて去っていたフィルに唖然としながらも、止めてくれてありがとうと心の中で感謝しておく。


「……びっくりしたね」

「あそこまで熱くなるとはな。あとで正気に戻って悶えなければ良いんだが」

「ははは。ナナカちゃんならありそう。でも、ああやって私達のことを思ってくれている人がいるっていうのはいいね。これからも頑張らないと」

「そうだな。遊びでやっているゲームでも、その中で真剣にやっている。応援してもらえるっていうのは悪くない」


 頑張って、俺のことを批判していたやつらが批判できなくなるようなプレイを見せてみせるから、もう少し待っていてくれ。

思った以上にナナカが暴走しましたが、まあ結果オーライってことで

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