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ゴブリンロード

「じゃあ、皆準備はいい?」


 5層に続くポートの前で最後の確認を行う。時間になったので確認するとすでに視聴者が5000を超えていて、かなり注目されていることが分かる。

 全員の準備ができたところで凛花が先頭になってポートをくぐり、俺達の初ボス戦であるゴブリンロード戦が始まった。


「手筈通り開けたところに着いたらウォークライを頼む」

「ええ。わかってるわ」


 プロテクトを凛花とフィルにかける。ほんの少し緊張しているが、それ以上に楽しみで仕方がない。


「ウォークライ!」


 フィルの声と共に全員が動き出す。ミナトとナナカは詠唱を始め、凛花が前に出る。俺は詠唱を始めつつも少し離れる。


「ファイアーボール」


 向かって走ってくるゴブリンの1体にファイアーボールが直撃しHPを削る。機転を利かした凛花がその1体に攻撃を加え、ゴブリンロードが来るまでに倒し切る。

 ゆっくりと普通のゴブリンの倍以上ある体格をしたゴブリンロードが現れ、凛花が先制攻撃を仕掛けてタゲを奪う。


「ヒール!」


 三度目のヒールがフィルに飛ぶ。凛花が1体倒してくれたとはいえ、9体のゴブリンが相手では回復がきつい。その証拠に、ナナカのヒールだけでは足りずに、フィル自身もポーションを使用している。


「ウォークライ!」


 気合を入れなおすかのようにいつもより大きな声でスキルを発動する。ミナトがファイアーボールを中ててはいるが、このペースではジリ貧だろう。


「2体タゲをもらう」

「お願い!」


 自身にバフをかけてゴブリンを殴る。なんとかヘイトを上回り、2体を引き連れた状態で、一人攻撃を避け続ける。

 ここまでは予想通り。思ったよりもゴブリンのHPが高く、ミナトの魔法だけではダメージソースが足りなかったから俺がタゲを持つことになったが、それはそこまで痛手ではない。


「くっ……意外と素早いね」


 思った以上に苦戦しているのは凛花だ。ゴブリンロードが図体の割にゴブリンよりも圧倒的に身のこなしが良い。力も強いので、まともに攻撃をくらいたくないと思い、逆に凛花の攻撃がダメージをあまり与えられていない。


「ウォークライ」


 再びフィルのウォークライが発動する。ナナカのヒールに合わせて使っているから仕方がないが、ペースが早い。


「あっ!」


 凛花があまりダメージを与えられていなかったのもあり、ゴブリンロードのタゲがフィルへと移る。さすがにこちらにゴブリンロードが合流すれば一気に崩れてしまう。

 俺は慌ててヒールの詠唱を始め、凛花も合流させるのはまずいとゴブリンロードの懐に飛び込んで剣を振り上げる。追加のエアブレイドも叩き込んだところでタゲが再び凛花に戻った。

 懐に飛び込んだ状態の凛花。スキル硬直で固まった体に、ゴブリンロードの蹴りが直撃する。


「ヒール!」


 俺のヒールが吹き飛ぶ凛花の体に当たりHPを回復させる。だが、痛みと衝撃は襲ってくるので、すぐには動けない。

 凛花の前に立ちヒールの詠唱を始める。ほんの少しでいい。時間を稼げ。


「っつ! ……おっも!」


 ゴブリンロードの攻撃を受け流すが、完全に流しきれなかった衝撃で手がしびれる。すかさずヒールを発動し、ガード越しでも削れたHPを回復する。

 さらにヒールの詠唱を開始。ガードで割り込んだことでタゲを俺に移したゴブリンロードから距離を取って直撃はもらわないようにする。


 ヒールの詠唱が終わるまでの短い時間がとてつもなく長く感じる。ガードで削れたHPをすぐに回復させまたヒールの詠唱に入ったところで、ようやく凛花が復活した。


「ごめんね。情けない姿を見せた」

「仲間を助けるために体をはる姿は格好良かったさ」

「あとは任せて。もう大丈夫」

「回復は任せろ」


 凛花に任せて後ろに下がる。ゴブリン2体のタゲだけは引き付け。ゴブリンロードのタゲが移ったことを確認して大きく息を吐きだす。

 いや、やばかった。しょせんはゴブリンの上異種だと思っていたが、実際に対峙するとプレッシャーが尋常じゃない。これ、どんどん進めていってドラゴンとか出るようになったら、前に立てるのだろうか。そのころには今よりも数段ステータスは上がっているだろうが、それでどれだけましになるのやら。


 吹っ切った凛花の動きはさらにキレが増した。今度はしっかりと踏み込んで攻撃しつつもダメージを受けないように回避とガードをしっかりしている。

 フィルの方もゴブリンが5体まで減ったおかげで余裕を持って対応できるようになった。流れは完全にこっちに来た。

 ミナトがもう1体ゴブリンを倒し切ったところで、俺が引き連れていたゴブリンのタゲをフィルにとってもらう。

 これで、俺も余裕を持って戦うことができるので、凛花に合図を送る。


「畳み掛けるよ!」


 ある程度のダメージ覚悟で回避よりも攻撃を優先する。ガードはしっかりしているので直撃をもらうことはないが、HPの減りは凛花とゴブリンロード共に早くなった。

 まるでPVを見せられているような動き。敵の攻撃をすべて予測しているかのように、上手く防ぎながら攻撃の手は休めない。これだけの戦いができるプレイヤーが他にどれだけいるのだろうか。見とれてしまうような動きだが、それと同時に自分も一緒に叩きたいと思ってしまう。


「いくよ! スラッシュからのエアブレイド!」


 スキルキャンセル。最後の最後にまた凄いものを見せて終わるなんてな。こちらを見て笑顔でVサインを作る凛花に近づきハイタッチをかわす。


「しっかり倒してきたよ」

「ああ。良い戦いだった」

「じゃあ、残りのゴブリンもささっと片づけるね」


 残り3体となったゴブリンを凛花が順番に倒して、5層のゴブリンロード戦は俺達の勝利で終わった。


「疲れたわ……」

「お疲れ様、フィルちゃん。良いタンクだったよ」

「ありがとう。レンヤさんも本当に一人で倒すとは驚きだわ」


 フィルが座り込んだのを皮切りに、全員座り込んで休憩する。このままポートを解放しに行きたいが、張っていた気が緩んだ弾みに、疲れが押し寄せてきた。

 まあ、今くらいはこうしているのもいいだろう。中継を見ている人達も余韻に浸っているだろうから文句はないと思う。


「やりましたね! 初ボス討伐は私達のものです!」

「ねえねえ。全員であのカメラにVサインしない? 後で映像を見返してスクショすれば記念になるし」


 凛花の言葉で全員でVサインを作り記念撮影のようなことをする。

 クランハウスにでも飾っておこう。こうしてプレイすることができた記念に。

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