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作戦は

 クランハウスに戻って、ボス戦について話し合うことにする。とは言っても、作戦自体はシンプルでいつもと変わることのないものだが。


「それにしてもインタビューなんて初めてされました」

「応えたのは全部ツキヤさんだったけれど、堂々と応えていてさすがね」

「俺もインタビューなんて初めてだったがな。その流れで明日ボスに挑むことになったから少し戦い方の確認をしよう」


 机の上をタップすると先ほどのプラバスタのボス戦映像が表示される。


「ます、最初に現れるのは普通のゴブリンだ。これをすかさずフィルがウォークライを発動してタゲを取ってくれ」

「ゴブリン10体はあの二人なら大丈夫だったけれど、私では受けきれないわよ」

「ミナトが作ってくれた装備とプロテクトが乗ればデュークさんよりも守備力は高くなるだろう。ナナカがつきっきりで回復すれば、すぐに削り切られることはないはずだ」

「これがフィルの装備」


 ミナトがフィルに装備一式を渡す。フィルが装備を切り替えると、下はスカートでその下に柄付きのタイツをはいているような見た目で、上半身も胸当てや関節部分などに付けられた革のガードを取れば誰も防具だと思わないだろう。


「これはちょっと恥ずかしいのだけれど」

「見た目は大切。それに性能は前のより断然良い」

「そうなのよね。確認したら守備力倍近く上がっていたわ……」


 確かにせっかくの容姿なのに鎧で隠されるのは勿体なくも感じるが、これで今まで来ていた革の鎧よりも性能が良いとは。青い生地に白いラインが入った装備はフィルにはとても似合っている。


「ナナカはいつも通りフィルの回復に専念だ。最初は回復が追い付かないかもしれないからポーションの使用やヘイト管理にも注意な」

「はい。フィルのHPは私が0にはさせません!」


 ぐっと握りこぶしを作るナナカ。気合が入りすぎて空回りさえしなければいいが。


「ミナトは、これだけ敵が集まっていたら魔法を中てられるだろうから、ゴブリンの処理を頼む」

「できる限り頑張る」


 今のフィルの守備力ならゴブリンの数が半分の5体まで減れば余裕で耐えられるだろう。そこくらいまでなら、ヘイトもそこまで気にせずにミナトがファイアーボールを使っても大丈夫だ。


「俺はレンヤの回復をしながら支援魔法を使う。フィルがきつければタゲももらうから言ってくれ」

「ええ。無理そうなら頼むわ」


 俺もやることは変わりない。いつもより凛花のHP管理に集中するくらいだ。

 最後に凛花を見る。凛花が単独でゴブリンロードに勝つだけのシンプルな作戦。全てが凛花のプレイにかかっている。


「ゴブリンロードは任せた。現状、あれと戦えるのはレンヤだけだ」

「任せて。私は勝つよ」

「ああ。負けないと信じているからこそ、明日挑むんだから」

「レンヤにも装備を」

「ありがとう、ミナトちゃん。やっぱりミナトちゃんの装備はかわいいね」


 フィルの装備と似たような見た目だが、生地が白でそこに赤と黒のラインが入っている。革の部分も金属に変わっていて、磨き上げられた金属は反射した光で綺麗に輝いている。


「全員にポーションも渡しておく。アイテムは全部使いきってもいい。だから、勝とう」

「ああ、俺達でボス一発突破で一番乗りで次の階層に行こう」


 *  *


 翌日、ボス戦に行くと宣言した時間の二時間前。凛花と二人で先にログインして、ダンジョンの1層で向かい合う。周囲の魔物はもう倒したのでしばらくはリポップしない。

 息を大きく吐いて、籠手の位置を調節する。前に立つ凛花が握る剣の切っ先が揺れた。


「っし!」


 全力の横なぎをバックステップでかわす。後ろに下がった俺に凛花が詰め寄り剣を薙ぐ。籠手でそれを受け、そこから続く連撃もなんとか受け流し続ける。

 こんな薄い籠手で殆どダメージをカットできるのも凄いなと感心しながら凛花の攻撃を捌く。


「スラッシュ!」


 スキルの一撃が俺を捉える直前に、ぎりぎりガードを割り込ませるが衝撃で腕が弾かれ、剣が腹を掠めた。

 スキルの攻撃は重いな。本気で踏み込んだ一撃並みの重さを出せるのか。ガードを弾いた上に掠っただけでHPが二割持っていかれた。


「スラッシュ、エアブレイド!」


 スラッシュでガードを弾かれ体勢を崩す。スキル後の硬直の間に次のガードを間に合わせようと踏ん張るが、それよりも早く二発目のエアブレイドが俺の体を捉えた。

 HPがみるみる減っていく。一割すら切ってぎりぎり耐えたが、そのまま体勢を崩して倒れそうになったところを凛花が抱きとめる。


「大丈夫?」

「ああ、バランスを崩しただけだ。それにしても最後のエアブレイドの発動が早くなかったか?」


 スラッシュのあとのスキル硬直は短いと言えども、体の反動も考えると動き出せるまでに1秒ほどある。そこから発動アクションを行う必要があるので、あの速さでの連撃はできないはずだ。


「ふふーん。今のはスキルキャンセルを使ったんだよ。昨日の夜にちょっと練習してたら見つけたんだ」

「スキルキャンセル?」

「うん。スキルが発動してから終わるまでは、一部のスキルを除いて動けない。でも、スキル中の何か所かに中断できるポイントが設定されているみたいで、そのタイミングで行動を上書きする別のアクションを起こせばキャンセルできるみたい」


 スラッシュの振りきりの間にあるキャンセルポイントに合わせてると言っても剣を振り切る時間なんてほぼ一瞬だ。その中のキャンセルポイントなんて、俗にいうフレーム単位の動きを、殆ど現実に近いこの世界で行わないといけない。無理ゲーすぎる。


「私でも集中しても成功率は5割もないけど、ツキヤ相手だから一回使いたかったんだよね」

「良いものを見せてもらったよ」


 凛花で5割ないなら、俺が簡単に真似できるようなものではないな。


「よし! 今日の調子はばっちりだから、クランハウスに戻って皆を待とう!」

「その前に離れてくれ」

「あ、ごめんごめん。じゃあ戻ろう」

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