表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/74

先を

 レベル上げを初めて一日が経ったが、ようやく俺と凛花がレベル10になり、フィルが9レベルになったので最低限ボス戦に向かう準備はできた。ただ、これでも1層の推奨レベルなので、勝てたとしても本当にぎりぎりだろう。普通のゲームよりもレベルアップによるステータス上昇は低めだとは言え、1の差が命運を分けることになる。


「さすがに疲れたね。寝る時間や休憩時間はしっかりとったけど、レベル上げばかり一日やり続けるときついね」

「VRだと余裕があっても作業ゲーにはならないからな。ボタン連打で勝てるならいいんだけど」

「それと経験値が少ないのがきついわね。低レベル帯のはずなのにレベルが上がるまで時間がかかり過ぎよ」


 初回生産数が少ないから、後からやり始める人への配慮っていうのもあるだろう。多分、経験値が多くもらえるようなイベントか何かが後であるだろう。



「皆さんいいところに。プラバスタが5層へのポートを見つけて、そのままボスに挑戦するみたいです!」


 二日弱でポートを見つけたのは運が良いな。俺達が1層2層と運が良かった分を持っていかれた感じだ。先を越されたのは悔しいが、ボスの行動パターンなどを見れるので観戦はしないとな。

 モニターの見える位置に移動し、空いている場所に座る。周囲の視線が俺達に集まるが、パーティー揃って見学に来たのに驚いているんだろう。


「タンク2、アタッカー2、ヒーラー1のパーティーだね。いけると思う?」

「ボスのタイプにもよるが、タンクのデュークさんがどれだけ粘れるかだな。プラバスタだとあの人が一番うまい」


 後はリーダーのトライさんがどれだけダメージを与えられるかだが、デュークさんが抜かれた時点で負けだろう。トライさんもうまいが、凛花ほどではないし、タゲを取りながら戦うのは無理だと思う。

 他の三人も悪くはないが、デュークさんとトライさんと比べると一段落ちる。


「お、行くみたいだな」


 誰かの声が聞こえて来たのでモニターに視線を戻す。

 ポートをくぐり景色が変わった先は森の中。ポートから真っ直ぐ行ったところに開けた場所があるので、そこがメインの戦場になるのだろう。

 デュークさんを先頭に奥へと進むプラバスタのメンバーがその開けた場所に到達すると、反対側からゴブリンの群れがやってきた。


「5層のボスはゴブリンか?」

「いえ。情報によると、ゴブリンを率いるゴブリンロードというのがボスのようです」


 雑魚を連れたタイプのボスか。雑魚ゴブリンとゴブリンロードを分けてタゲ取りする方が良いが、ヒーラーが一人で且つヒールを飛ばせないとなるときついな。

 逆に俺達なら、雑魚をフィルに任せて、ゴブリンロードと凛花が一騎打ちでいい。後はフィルがゴブリン10体を受けられるかだな。レベルも上がったし、装備も更新すればなんとかなるか。敵が密集するからミナトの攻撃魔法も当たりやすくなるから、最初さえしのげればいける。


 案の定混戦になったプラバスタだが、さすがにタンク二枚は固く、すぐには崩れそうにない。ゆっくりとゴブリンロードが奥から現れ、攻撃に参加しに来るが、混戦になっているので攻撃が届かずうまく嵌ってくれている。


 5分ほどそのまま戦いは続いたが、ゴブリンロードが横からデュークさんに攻撃をしに行き、一気にHPが削られた。慌ててヒールが飛ぶが、ヒールを連発したせいでヘイトが溜まりすぎ、ゴブリンロードの攻撃がヒーラーに向く。

 ごりっと音がして、ヒーラーが一撃でやられると、そこからは一気に崩れた。ポーションのみでは回復が追い付かずタンクが一人やられ、それに巻き込まれるようにアタッカーも一人落ちる。

 デュークさんとトライさんが粘るが、ゴブリンを半分減らしたところでデュークさんが落ち、タゲを持ちながらの戦闘では、トライさんは殆ど逃げることしかできずに一撃もらって動きが鈍ったところを狙われて全滅した。


「強いですね……」

「あの二人でも耐えきれないのね……」


 今までの雑魚戦とは違うボスの強さにナナカとフィルは少し気後れしている。無理もない。プラバスタの五人は全員トッププレイヤーと言っていいだろう。それが10分もせずに全滅したのだ。ゴブリンロードに殆どダメージを与えることすらできずに。

 隣で凛花がそわそわとしていたので見ると、こちらはこちらで戦いを楽しみにしているようで、俺の両隣で全く違う反応をしているのを見て少し笑ってしまう。


「双天連月の皆さんですよね?」

「そうですが?」


 クランハウスに戻ろうかなと考えていると、一人の男が話しかけてきた。手にはメモを持っているから記事を書いている人なんだろう。この世界で手書きのメモなんて使う必要は無いが、雰囲気を出すためとそれに慣れているのかもしれないし突っ込むのはやめておく。


「私は記者のナトリと言います。さっそくですが、昨日ボスへのポートを見つけていましたが、ボスに挑む予定はあるんでしょうか?」

「あるよ。準備が出来たらいくつもりだ」

「今のプラバスタの戦いを見ての感想は?」

「自分達の戦い方はできていたが、ボスが想像以上に強かったようだ。少し相性が悪いようだが、そう時間のかからない内に撃破してくれるとは思っているよ」


 あの人達なら折れずに作戦を考えてまた挑むだろう。二、三回挑めば慣れもでてきて良い戦いはできると思う。


「あれを見て、双天連月なら勝てると思いますか?」

「勝てないとは思わない。勝つために挑むのだから」

「さすがトップパーティーは違いますね。それで、いつ行くかは決まっていますか?」


 時間は宣言しておいた方が、視聴者も集まって良いだろう。準備は後装備のみ。ミナトの顔を見れば、大丈夫と口パクで教えてくれた。


「現実世界での明日のこの時間に行くから、予定のない人は見に来てくれ」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ