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並ばれることは

 ダンジョン3層。ここでの戦闘自体は二人でもできていたが、かなりギリギリでいつでも戻れるように探索は入口のポート付近しかできていない。

 凛花もしっかりと剣を握って、周囲を見渡す。まずは数が少ない方からが良いだろう。マップで方角を確認して、北側のモンスターの数が少し少ないので先にそちらから行くことにする。


「ナナカ。フィルの回復は手厚めにな。ヘイトは俺の方でも確認しておく」

「はい。フィルのHPは任せてください」


 凛花が頷いたのを確認してプロテクトの魔法を凛花とフィルにかける。走り出した凛花を見て自分にヘイストをかける。クールタイムが開けてすぐに自分にもプロテクトをかければ準備はできた。


「タゲお願い!」

「ウォークライ!」


 凛花が先制攻撃を加え、すかさずフィルがヘイトを稼いでタゲを自分に集める。タゲが移ってフィルに向かうモンスターの1体を凛花が攻撃し、1体だけタゲが凛花へと移った。


「ヒール!」


 ナナカのヒールがフィルへとかけられる。回復する前にフィルのHPを確認すると、三割ほど削られていた。

 4体のモンスターに対して20秒ほどで三割か。クールタイムと詠唱を考えても、回復はなんとか足りる。プロテクトが切れると回復が追い付かなくなるから、切らさないように意識しておかないとな。


「はい、1体目終わり!」


 凛花が順調に1体にHPを削り切った。周りのモンスターのタゲを気にせず戦えているので、処理速度は今までよりも圧倒的に速い。すかさず、2体目に攻撃を始めたので、これで戦況は一気に安定するだろう。ナナカもヒールを連発しなくても回復が追い付くようになったことに気づいて、フィルにリリーブという疲労軽減の魔法をかける余裕ができたようだ。


 そこからは1体ずつ減らしていくだけなので、凛花が順番に倒していき問題なく戦闘が終わった。


「3層も全然問題ないね」

「大きな群れにさえ遭遇しなければいけるな。ウォークライのヘイト値もある程度分かったからスキルや魔法ももっと使えるから、次からはもう少し楽になるだろう」


 あえて多めに魔法を使いタゲが俺にくるかを確認した。ヒールだけなら三回分はヘイトが逆転しないから、ナナカにタゲが行くことは殆どないだろう。


「じゃあ次に行こう。この調子なら4層へのポートもすぐに見つけられるかもね」


 さすがにすぐにポートを見つけて4層まで行けるほど運は良くないだろう。他のパーティーが3層にくる前にできる限り探索を進めたいものだ。




 安全に戦いながら一時間ほど探索をしたがポートが見つかる気配はない。敵を倒し終わったところで休憩をはさみ、インベントリの整理もついでに行う。


「やっぱりすぐには見つからないね。でも、戦闘自体は楽になったから疲れはそんなに無いし、まだまだ探索続けられるね」

「戦闘は楽になったが、やっぱり装備とレベルが足りてない分きついところもある。しっかりモンスターと戦いながらレベルも上げないとな」


 先ほどの戦闘で、ようやく俺と凛花のレベルが9になったところだ。狩り効率がそれほど良くなかったのでレベルはそれほど高くない。今、ダンジョンで2層まで来ている二つのパーティーの平均レベルが9なのでレベルだけなら抜かれている。実力の差も殆どないので、3層へのポートを見つける運が圧倒的に俺達が良かっただけだ。

 ポートは、同じパーティーなら同じ階層なら同じ位置のものを使えるが、他のパーティーは10個のポートが解放されるまでは同じポートは使えない。近い位置のポートを俺達が見つけているので、他のパーティーは離れた位置のポートを見つけないといけない。

 なので、早く探索を始められるというのは結構なアドバンテージになるのだ。

 ちなみに、今のパーティーは俺と凛花のパーティーに合流した形になるので、同じポートを使うことができたので1層と2層をすぐにクリアできた。


「あ」

「どうした?」


 インベントリを操作していたミナトが何かに気が付いたように声を出した。


「このアイテムどこから手に入れたか覚えてる?」

「さっきの戦闘でいたスモールウルフのドロップ品だな」

「これ装備の素材に使えるから、売らずに残しておいて」


 装備の作成に使えるのか。それなら集められる分は集めておかないとな。特に凛花とフィルの装備は早めに良いものに変えていきたい。


「じゃあ、スモールウルフがいる時はそっちを優先的に釣ることにするね」

「うん。お願い」




 二日後にようやく4層へのポートを見つけたころには、2層で止まっていた二つのパーティーも3層に来ていたが、4層には再び一番乗りでやってくることができた。

 ただ、他のパーティーはレベルも装備も俺達よりも上だから、4層でゆっくりしていると完全に追い付かれるどころか、抜かされる可能性すらある。夏休みということもあり、ゲーム廃人並のログイン時間を確保で来ているので、その時間も有効に使っていかないといけない。

 せめて夏休みの中盤まではトップ争いをしたい。そのあたりで第二弾のプレイヤーが参戦してくるので一つの区切りになるだろう。


 4層の探索もなかなか進まないが、次の5層はボス戦ということもあり、スモールウルフ優先の戦いは変えずに装備の作成に向けての準備も進めていた。


「ツキヤさん! 大変です!」


 ログインして取引ボードを確認してギルドに向かっていた俺のもとへナナカが慌ててやってきた。


「どうした?」

「プラバスタが3層を突破してそのまま4層攻略に向かいました!」

「あー……追い付かれたか」


 懸念していたことがこんなに早く起こるとは。昨日の時点ではまだ3層の攻略はほとんど進んでいなかったので、ポートのみに絞って特攻でもしたのだろうか。

 一応4層の探索は一日俺達にアドバンテージはあるが、これは追い付かれたと言ってもいいだろう。


「追い付かれたものは仕方ない。いつまでもトップを走れるとは思っていないし、自分たちのできることをやっていこう」

「は、はい」


 自分に言い聞かせるように口に出す。

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