戦争へ行ってくる
彼はプライドの高い生き物だ。
怠け者のくせに義理堅い。
いっぱしの口を聞きたがる。
そういう男だからボクは彼が好きだ。
この街には貧乏神が住んでいる。
ボクはさびれて静かなところにでもある職で食いつなでいる。
彼はみんなの憧れでもある。
いっぱしな口を聞くためにブランドもののスーツに身を通し、
砂だらけのストリートを闊歩する。
彼はみんなのスターで、
ボクはそんな彼が少し妬ましい。
ボクは稼ぎがいい方なので彼にモノを買う。
彼は嫌がるけれど、見栄えがいいのが好きだから良いのだ。
そんな彼が真面目な顔をして、
昨夜、
ボクの家を訪ねてきた。
胸騒ぎがしたけれど、笑顔を作った。
「何?」
「働き口を決めたんだ。お前が仕事をしなくても良いように」
笑えない冗談を彼はいう。
朝から泣きながら、遠い地に行く彼を見送ることもなく、
ボクは窓の縁に座ったまま空を睨んでいる。
そういう男だから好きなんだ。