第六話 初任務、承りました
お待たせしました。
「はっ!・・やぁ!!・・とう!!」
拳が風を斬る音が庭に響きます。
朝日が差し込み、薄暗かった空は蒼色に染まっていきます。
清々しい朝ですね!!この城の女中天使さんたちも起き出したのか廊下の清掃をしたり庭の手入れをしたりと忙しそうです。
俺もそんな清々しい朝を迎えたのですが、精神は全然清々しくありません。
休憩も無しにあのまま朝までぶっ続けでご来光を拝まさせれられ、今に至ります。寝たいです!!体力が持ちません!!
と言っても、半霊体なので肉体的には疲れや疲労が無いのですが・・・何度も言いましょう!!精神が疲れるのです!!
女神様の従者になってからブラック企業真っ青の働き詰めです!!まぁ働いている実感は無いのですが・・・。主に勉強と修練ですしね。
それでも!!少しくらい休息があってもいいのではないでしょうか!?
それでも、投げ出さずにいられるのは『愛』のなせる技ですね。
「なにをニヤついているのですか。」
おっと!カマエル先生が帰ってきました。
夜中になると、「後はひたすら己との鍛錬です。ここで朝まで精進しなさい。」といって何処かに行ってから今やっと帰ってきました。
寝てなんていないでしょうね!?カマエル先生!!俺を置いて一人で寝てたわけではないですよね!?
心の中の叫びを声に出さず、顔を引き締めてカマエル先生を見ます。
「失礼しました。ちょっと女神様のことを考えていたもので。」
「気持ち悪い妄想は止めなさい」
気持ち悪いとはなんですか!!さすがの俺も怒りますよ!!
いや!怒りました!!文句言ってやる!!
「気持ち・・」
「shut up!!」
バチンっ!!
「あふん!!」
毎度のことながら変な声が出たじゃないですか!!
憤慨する俺をよそにカマエル先生は話を進めます。
「加護の発動はどうですか?」
「順調ですよ。朝方、日の出とともに調整が終わりました。今なら暴走することなく発動出来るようになりました。プンプン!!」
「可愛くありません。むしろキモいから止めなさい。」
罵られました!!
「ではやってみなさい。それを見て合格か判断します。」
ふふふ!!いいでしょう!見せてやりましょう!!
見て驚くなかれですよ!!
「行きます!!」
適切な量の魔力を聖痕に流します。
ほんのり体が暖かくなる感覚。成功ですね!!
「どや!?・・・どや!!??」
自信満々な顔をカマエル先生に見せてやります。
マジマジと見つめられて納得したのか一度頷いて口を開きます。
「合格ですね。これで、一様任務は出来ますね。」
ん?任務??
「任務と―――。」
バチンっ!!
ムチで叩かれた音が庭に響き渡ります!!
ふざけてもないのに今のは理不尽です!!いや、いままでも理不尽といえば理不尽なのですが・・・。
抗議します!!
「あひょ!!ってなんで今叩かれたんですか!!」
「失礼。あなたの顔が気に入らなかったもので。」
り、理不尽な!!
「そんなことよりこれから昼間で体を休ませ、起きたらすぐに謁見の間に来なさい。あなたの神がお待ちです。」
そう言ってカマエル先生は庭を去っていきました。
久しぶりに神様に会えるのですか!?嬉しいです!!愛しのマイGODDESS!!
今すぐに会いに行きますからねぇ!!
駆け出そうとした時、目の前に拳が迫ります。
「昼と言っているでしょうに。」
庭から去ったはずのカマエル先生の声がして意識が遠のきます。
きっと疲れているからでしょうね・・・。
意識を取り戻したのはベット上でした。見慣れた天井です。自分の部屋ですね!!庭で意識を失ったと思ったのですが・・・誰か連れてきてくれたのですね。優しい人がいたものです。
ベットから起き上がり窓の外を見ます。太陽は丁度真上に来ていました。
昼!!急いで部屋を出て、おっと!身だしなみのチェックを忘れずに!!・・・OK!!問題なしです!!さぁ!いざ行かん!!愛しの女神様のもとへ!!
謁見の間の扉の前に到着します。
女神様と合うのは久しぶりですね。なんだかドキドキします。
扉を開きましょう!!
扉をゆっくりと開きます。
玉座には愛しの女神、コーネ様。美しいです!!
おや?どうしたのでしょうか。ニコニコしていますが、その笑顔が硬いような気がしますね。
その隣にはカマエル先生が立っています。こちらはいつもの様にザマスメガネを煌めかせて凛々しい顔をされています。
っひ!!今睨まれたような気がします!!
「お呼びに預かり馳せ参じました。あぁ我が愛しき女神様。」
跪いで礼をした後、立ち上がり座っている女神様の手をとります。
「俺を呼んで下さったということはついに俺の愛を受け入れてくれるのですね!」
「え!?いや・・。」
女神様が戸惑っています。
その姿もまた美しい。
バチン!!
「あはん!!」
変な声が出ました!!
「下がりなさい。コーネ様がお困りになっているのがわからないのですか?」
困っている!?ご冗談を!!
まぁでもカマエル先生には敵いませんからここは、言葉に従い下がりましょう。
「ご、ごほん!よく来てくれました。アルデリッヒ。」
「コーネ様が及びとあれば例え地獄の底からでも馳せ参じますよ」
「ありがとう御座います。その気持は嬉しく思いますよ。」
笑顔で返されました。華麗にスルーですか。
「早速、本題なのですがあなたに一つ任務をこなしてほしいのです。」
「あなたの頼みなら例え火の中 水の中 草の中 森の中土の中 雲の中 あのコのスカートの中どこでも行きましょう!!」
「・・・」
あら?ウケなかったですね・・・。寂しいです。
「こほん!任務の内容なのですが。」
なかったことにされました!!
「あなたに魔界で消息を絶った私の眷属の天使の行方を追ってほしいのです。」
「人探しですか。」
「はい。魔界は天界より危険ですが人探しであれば危険性は低いと思われます。しかし、天使になりたてのあなたに頼むのは心苦しいのですが・・・私の眷属の天使は数が少なく、こんな時に限って全員出払っていて・・現状あなたを頼るしかないのです。」
「すいません」といい終えて女神様の顔が口惜しそうに顔を伏せる。
全くこの人は・・・。勇者になったときもそうです。心苦しいと言い自分では出来ない事を悔しそうに、口惜しそうに顔を伏せるのです。それは演技や芝居などではなく本心から言っているのがわかります。
初めてあったときからそうです。彼女は嘘を付けるような人ではないのです。
これでも地球の日本で生きていていろいろな人を見てきた俺にはわかります。
地球にいたときも女神様の様な上司に・・人に巡り会えていれば自分はもっと違う人生をあゆんでいたのでしょうかねぇ。まぁ今となってはどうでもいいことですけどね。
しかし、いいでねぇ。頼られるというものは。
女神様にこんな顔をさせるために俺は眷属になったのではありません。
「女神様。そのような顔はあなたには似合いません。まぁその顔も美しくはありますが、あなたには笑顔が似合います。」
ここはキザに笑ってみせます。
「あなたは自身を持って俺に命令すればいいのですよ。俺を信頼して。それで、ゆっくりお肌の手入れやお茶でもして俺を待っていてくれればいいんですよ。そしたら俺はどんな任務だろうと確実、正確、完璧にこなして見せますから・・なぜなら俺はあなたの最強にして最高の側近(自称)なのですから。」
ここで最高の笑みですね!!キラン!!
決まりましたね!!
見てください!横にいるカマエル先生すら俺に・・・・。
ザマスメガネが光っていますね・・・。
っひ!!口が全然笑ってません。女神様はなんか苦笑いしてますし・・・。
完全に決まったと思ったのですが流石女神様、攻略が難しいですね。
でも諦らめませんよ!!負けるなアルデリッヒ!!頑張れアルデリッヒ!!
「まだ側近にしたつもりは無いのですが・・・」
あっそこ突っ込みますか!?まぁいいですけど。どうせ自称ですからね!
けどいつかなってみせますからね!!
「コホン!」
隣にいたカマエル先生がわざとらしい咳をしましたね。
何か発言をしたいようですね。
「初任務ですね。あなたなら落ち着いてやれば十分こなせる任務です。頑張りなさい。」
「はい。必ず成功させます。」
「よろしい。では任務の詳細を話しましょう。」
そう言ってカマエル先生は任務の詳細を説明してくれます。