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女神様の側近(仮)は今日も行く  作者: Mr.アマゾネス
~第一章 魔界を横断するようですよ。~
4/9

第三話 猛勉強、しました

 天界には季節という概念はないようです。

 場所によっては年中、夏だしまた別の場所では年中、冬だそうです。

 そして、俺のいるコーネ様が収める地域は年中、春というなんとも過ごしやすい気候をしています。

 春眠暁を覚えずっとは、昔の人はよく言ったものです。この様に気候が心地良いと眠くなるのが人の利というもの、まぁ今は天使なんですけどね。


「そこ!!」


 バチンっ!!

 うつらうつらと船をこいでいると軽快な音と共にムチで頬を叩かれました。


「ヒャイっ!!」


 変な声が出ました。

 心地よい眠りの誘いから一転してヒリヒリと頬の痛む苦しみへと感覚が変異しました。


「これで5度目ですよ。」

「カマエル先生。俺がいた日本という国には春眠暁を覚え――」

「Shut up!」


 バチンっ!!

 やけにネイティブな英語の発音と共に再びムチの音が部屋に響きます。


「言い訳をする気力があるということはまだまだ努力がたりないということね。いいでしょう。」

 

 そう言ってカマエル先生は紙束をドカンと俺の机に置きました。


「これは今日の課題です。明日まで終わらせない。。」

「お、お自費を!!」

「そんなものは、ありません。私の授業中に居眠りした罰です。」

「待ってください!寝ていません!!未遂です!!」


 俺の嘆きはカマエル先生に聞き得れられずカマエル先生は部屋を出ていってしまいました。

 あぁ、なんということでしょうか。これだけの量の一日で・・・まぁ、天使だから不眠不休をしたところで疲れなど無いのですが。気持ちが疲れます!!


「文句を言ったところで、始まりませんか。よ~し!やるぞぉ~。」


 課題の山から一枚紙をとり与えられた教科書でわからない所を調べなながら課題を進めていきます。


 俺が課題をやっている間少しだけだが天使の事について語りましょう。


 天使には階級が全部で九階級あります。

 最下位から天使・大天使・権天使の下位三隊。

 次が能天使・力天使・主天使の中位三隊。

 最後に最高位の座天使・智天使・熾天使の上位三隊。

 ここまでくるともう神の右腕とか呼ばれる序列ですね。その中でも逸脱しているのが序列最高位の熾天使。

 神と同等の力を持つとされる階級で、神との直接的な交わりを許された階級。

 まさに、俺のためにある階級といえるでしょうね!しかし、悲しいかな。天使になりたての俺は悲しいかな序列最下位の天使からのスタートになったのです。

 

 階級が上がれば見た目も少し変わります下位三隊は羽が二つ、中位三隊になれば羽は四つになり上位三隊は六つ。

 このように見た目からもその天使がどの階級にいるかすぐわかります。

 

 俺は天使なので下位三隊の羽二つです。実際に羽を動かしてみると純白の羽が違和感なく上下に動き出します。

 驚くことなかれ!!この羽、実は出したり仕舞仕ったり出来るんです!!

 まぁ寝るときとか邪魔ですからね。普段は仕舞仕ったままです。

 それはさておき今度、空をとべるか試してみましょう。


 さて、話を戻しましょう。

 天使には序列に応じた役目があります。俺が甘んじて所属している序列最下位の天使の役目は数多(あまた)の世界を飛び回り、時には人々を導いたり、時には過ちを裁いたり、時には魔物と戦ったり・・・つまるところ使いっ走りということだそうです。想像していたよりも天使は楽ではないってことですね。

 これが俺が今まで習った天使階級の概要です。


 そして、現在俺がペンと走らせて消化している課題は各神がどの区域を担当しているかを丸暗記する課題です。

 これがほんとに多い。嫌になるほど多い。六法全書を完璧に覚えるほうがマシだといえるほどです。

 ふざけるな地球!最高だよ異世界(ユーグリッド)

 

 地球だけでどれだけの神が蠢き合っているか!とくに日本がひどい!お空から見ると気持ち悪いくらいだよ!!

 それに比べて異世界はいい。多くても四、五十柱入ればいいほうで少ないところだと一柱ですから。

 地球どんだけ神が好きなんだよって言いたくなるレベルです。はい。


 日本にいた時も神話とか好きでよくネットで調べて見ていたけど、こうして天使になって実際に歴史とかを学んでみると違う点もあればほとんど同じなところもある。天使の階級とかほぼ、その通りでした。

 

 基本的に天使達は正体を明かしては行けません。しかし、地球にあれだけの資料が揃っているてことはバレバレってことだよね!

 なにしてるんだよ先人の人達は・・・。この場合は、先天っていうのでしょうか?まぁそんなことはどうでもいいのですが・・・。


 課題が丁度半分くらい終わったところで席を立ち背伸びを一つ。固まった体をほぐします。

 カマエル先生と授業をし始めてはや数日。

 この体にもだんだんと慣れてきましたが、乳が大きいせいか肩が凝ります。首のストレッチをして自分で肩をマッサージして血流を良くします。っと言っても血なんて通っていないんですけどね。半霊体の体ですもの。


 あぁ、半霊体とはですね。今の俺の体の事を言います。

 そのまんまですが体の構成半分が肉体でもう半分が霊体で出来ていて、食料や睡眠を必要としないらしいです。でも痛みとかは感じるんですよね。仕組みが全然わかりません。こういうのは考えずにありのままを受け止めたほうだいいと俺の祖父が言っていました。

 まさに神秘というやつですねって俺は誰に説明しているんでしょうか。


 窓の外に目をやると春の陽気に誘われて小鳥たちがさえずり空を楽しそうに飛んでいます。

 一方の俺といえば天使になってから勉学に励む毎日ですよ。

 自分に与えられた部屋からここ数日出ていません。出ている暇がありません。ある意味では引き篭もりと言えるでしょうか。

 息抜きって大切だと思うんですけどねぇ。課題の山に目をやります。


「ちゃっちゃと終わらせますか。」


 ■


 アルデリッヒが課題の山と格闘してるころカマエルはコーネの元へと来ていた。


「参上いたしました。」

「楽にしてください。」


 傅くカマエルは姿勢を戻しコーネを見る。


「アルデリッヒはどうですか?」

「大体の規則は叩き込みましたが、要領が悪くすぐに手を抜く癖があるので目が離せませんね。まったく、手がかかる生徒ですよ。まぁ大量の課題を一日で消化するところを見るとまだ見込みは有りますが。」

「あなたにしてはなかなかいい評価ですね。」


 どこか、嬉しそうにアルデリッヒのことを語るカマエルにコーネがそう告げた。


「・・・褒めてはいないんですが。」

「ふふふ。順調ということと受け取っておきます。」

「ところで、私を呼び出したのは世間話をするためではありませんよね。何か用事があるからではないですか?」

「はい。実のところ。彼に初任務に出てもらおうと思っています。それであなたの意見を聞きたくてですね。」

「・・・任務の内容をお聞きしても?」

「えぇ構いません。魔界で人探しをして欲しいのです。」

「魔界・・ですか。」


 コーネは一拍置いてから口を開いた。


「一人。天使が魔界で消息を絶ちました。彼に調査に出て欲しいのです。」

「彼以外に手の空いている天使はいないのですか?」

「力ある天使は今全て出払っています。後は力なき天使のみ。彼女らを危険な魔界に行かせることはできません。」

「そうですか。・・・はっきりと申し上げるのであれば、知識としては全然足りませんが魔界であれば規則を守り問題なく任務は出来るでしょう。人間界と違って魔界は規則がゆるいですから。しかし、戦闘面に関しては・・・残念ながらそこまでまだ手が回っておりません。」

「彼であれば戦闘面はあまりお気になさらず。」

「・・・何故とお聞きしても?」


 カマエルのメガネがキラリと光る。


「あなたには伝えていませんでしたね。彼は元勇者なのです。」


 カマエルの瞳が大きく見開くが、すぐに表情を元に戻す。


「いかに元勇者といっても、魔界の魔物は人間界に現れる魔物とは強さが違い過ぎます。」

「そうですね。ですから、あなたの意見を聞きたいと言ったのです。」

「私が反対すれば?」

「力ある天使が戻るのを待つしかありません。」

「戻ったところで、あなたの所有している天使は・・・失礼しました。出すぎた口を・・・。」

「事実ですので、お気になさらず。」


 カマエルは頭を垂れ押し黙る。コーネは自分の不甲斐なさに苦笑しながらカマエルを見た。

 カマエルは面を上げてコーネに問いかける。


「・・・レミエルは今なにを?」

「魔界で消息を絶ったのはレミエルなのです。」

「どうしてレミエルが・・・。魔界でなにか――。」


 あまりの予想外の返答にカマエルは押し黙った。再び部屋に沈黙が訪れる。

 しばらく続いた沈黙を破ったのはコーネだった。


「やはり力ある天使が戻ってくるのを待って考えたいと思います。そもそもあなたに尋ねるような話ではありませんでした。私の浅はかな考えであなたを困らせてしまいましたね。ごめんなさい。」

「・・・あと二日です。」

「二日?」

「このカマエルの名に掛けて彼を魔界で通用できる天使に仕立て上げてみせましょう」


 その言葉にコーネは目を閉じて頷いた。


「無理を言ってしまいごめんなさい。カマエルさん。」

「勿体無いお言葉です。」


 ■


 課題がやっと終わりました。外に目を向ければもう夜ということでしょう辺りは真っ暗です。


 机に突っ伏して終わった課題の山を死んだ魚の目でボーッと眺めます。

 ベットに移動するのすらだるい。体は疲れてないんですけど主に精神がつかれるんですよね。


「あぁ。ダルおもぉ~。」


 そうやって休憩していると部屋のドアが勢い良く開けられました。


「きゃ~!!のび○さんのエッチー!!」

「お黙りなさい!!」


 バチン!!

 軽快なムチの音が部屋に響く。


「あふっ!!」


 変な声が出ました。

 部屋に入ってきのはカマエル先生です。はっきり言って今のは理不尽な攻撃だと思うのですが・・・。

 ムチで叩かれたところを手でさすりながらドアの前で腕を組み仁王立ちをしているカマエル先生に尋ねます。


「どうしたんですか?こんな夜に?」

「今日から、夜も授業をします。」

「よ、夜の授業!!」


 思わず喉がなりました。

 仕方ありません。だって夜の授業ですよ!!夜の!!

 ん?夜も?


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