特別編 大人になること
どうも、シャディです。
季節は冬です。僕は冬が嫌いです。寒いし、日はすぐ沈んじゃうし、生き物も少ないし。
何より、コノハが僕に服を着せようとしてくるんです。チクチクする、むず痒いモコモコの服。
「コラッ、シャディ、ちゃんと着なさい!!」
「ピキュウウウ!!」
僕は必死に逃げます。寒いけど、お外を走って鶏小屋まで走ります。
鶏小屋の前にはゴーレムさんがいます。ゴーレムさんは真面目で、とっても働き者です。
『お願いゴーレムさん、匿って!!』
『……よかろう』
僕がお願いすると、ゴーレムさんは鍵を開けてくれました。とても優しいです。
「ゴーレム! 扉を開けなさい! シャディが中にいるんです!」
「フゴォ(申し訳ないが、約束に先客がいるので)」
「もーっ!! 何で着てくれないんですかー!! せっかく夜なべして作ったのにー!!」
ごめんねコノハ。嫌なものは、嫌なんだもん。
コノハが諦めるまで、チキンさん、一緒にお昼寝しようか。あ、卵一個貰うよ。
「……ゴォァッ!!」
もぐもぐ、ん? どうしたのチキンさん? 何で怒ってるの?
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「おっと、お得意様2人御来店」
僕とアリウス、コノハは今日、あるお店に来ています。
それはレンブラントお姉さんが店主の萬屋です。ここには沢山の道具が売っています。
レンブラントお姉さんはとっても美人なエルフです。背も高いし、ぷろぽーしょん? も抜群です。びゅーてぃふる。
「今日は何の用だい?」
「えっと、これとこれを売りたいです」
「はいはーい」
レンブラントお姉さんはミントシガーを吹かしながら計算を始めます。
かっこいいなぁ。
「ん? どうしたんだいシャディ? ほら、おいで」
「ピキュ!」
僕は迷わずレンブラントお姉さんの胸に飛び込みます。コノハと違って柔らかいし、ミントの爽やかな匂いもする。
「あはは、くすぐったいねぇ! 可愛い可愛い!」
「シャディ! 邪魔しちゃダメですよ!」
「キュウ」
もう、お母さんみたいだなぁコノハは。僕が甘えたらコノハだって嬉しそうに抱き締める癖に。
「はい、回収っと」
「キュウウウ!!」
アリウスに首根っこを掴まれて回収されちゃいました。乱暴に持たないでよ。
「お前もかなりデカいんだから、加減を考えろよ」
「ガウガウッ!!」
皆で僕をお邪魔扱いして! でも僕は大人だから、仕方なくお外に出ます。
……やっぱり寒い。中に戻ろうかな。
『どうした、チビ助』
と、隣の馬小屋から声が。
『ニドお兄さん、こんにちわ』
『こんにちは。寒いなら小屋の中に来い。温かいぞ』
『いいの!?』
ブラックユニコーンのニドお兄さん。とっても大きい身体をした、頼れるお兄さんです。
ニドお兄さんの小屋の中には沢山の藁。僕はそれに包まります。温かい。
『また叱られたか?』
『そう。コノハはすぐ叱るし、アリウスは子供扱いするし』
『そりゃそうだ。お前はまだまだ子供だからな、ハハハ!』
『子供じゃないもん』
だってもう身体も大きいし、何でも食べれるし、1人で仔牛もやっつけられる。アリウス達に内緒で、飛ぶ練習だってしてるんだ。
『そう思ってるうちはまだ子供なんだよ』
『じゃあ、大人になるにはどうしたらいいの?』
『そいつぁちょっと違う。どうやって大人になるかじゃなくて、大人になるまでに何をするかなんだ』
『キュウ?』
お兄さんの言ってる事は難しい。難しいってことは、やっぱりまだ子供なのかな?
『黙っていれば誰だって身体は大人になる。だが心は違う。どうすれば立派な大人になれるか、それを子供の内に考えるんだ』
『……』
『アリウスとコノハは、どうだ?』
考える。いや、考えなくても分かります。
2人ともニドお兄さんの言う、「立派な大人」だと思います。
僕はまだ、2人に甘えっ放しだ。2人がいなきゃ、僕は生きていけない。
いつか、自分1人でも生きていけるようになるまで、僕は「子供」だ。
『ありがとうお兄さん! 僕、2人のとこに戻る!』
『おう、またな』
「おや、シャディじゃないか」
馬小屋から続く裏口からお店に入ろうとすると、干し草を束ねている人の姿が。
アリウスの弟、ジーク。アリウスと違ってなよっとしてるけど、優しいお兄さん。
「キュウキュウ」
「どしたの? お腹空いた?」
「ピィキュッ!」
「分かった分かった。残り物で良いかな?」
「キュッ!」
ジークは台所から鍋を持って来てくれました。いやいやちょろ…………優しいお兄さんです。
「ジークさん!!」
「ヒィッ!?」
「ピィッ!?」
出たぁっ!
ジークの後ろで、コノハが手を腰に当てて怒ってる!
「おやつにしては多過ぎませんか!?」
「い、いや、食べ盛りかなって……」
「ダメです! シャディはーー」
「はいはい、そこまで」
あ、アリウスだ! た、助けてアリウス!
「助けて兄さん!」
ジークまでアリウスに助け求めてる。
「ア、アリウス? どうして……」
「シャディだってそろそろ大人だ。過保護になり過ぎるのは良くないぞ」
「で、ですが……」
「そういえばコノハ、この前料理摘み食いしてたよな?」
「ひぇっ!?」
え、そうなの?
コノハはお料理を作る時、よく味見をします。でもそれはお料理を美味しくするためのもの。摘み食いとはまた違うんじゃあ?
「出来上がった魚のフリットを、3つ?」
「い、いや、えっと……」
「あぁ、ティータイムのクッキーも食べてたな。それも昼飯前に」
「そ、それは食べ過ぎじゃ……?」
ジークは困ったような顔をします。コノハの顔はみるみる内に真っ赤に。
「おかげで腕周りが怪しくなってるよな。おっと思い出した、この前シチューを……」
「ア、ア、アリウスの意地悪ぅぅぅ!!」
コノハは一目散に走って逃げて行きます。いやぁ、助かった! ありがとう、アリウス!
「兄さん、またご飯抜かれるよ」
「助けを求めておいてそれかよ。お前もしっかりしろ、大人なんだから」
大人。
そうだ。僕も早く大人にならなきゃいけない。コノハがあんなに世話焼きなのも、まだ僕が子供だから。
……じゃあ、お節介な僕のお母さんの様子を見に行かなきゃ。
「うぅ……気にしてたのにぃ……アリウスのバカ……」
あ、いたいた。倉庫で不貞腐れてる。
「ガァウガァウ!」
「シャディ……?」
僕は、小さなお母さんに言います。
『いつもありがとう、コノハ。大好き』
「……シャディ!」
太陽のような笑顔を浮かべて、僕を抱き締めます。
いつか、大人になったら沢山恩返しするよ。
だからみんな、それまで、よろしくね。
「ピィッ!」




