~霹靂~ 5.
──休み明けの学校。
昨日は三人で、駅前のファッションビルでウインドウショッピングを楽しんだ。
一人では入りづらいショップでも、三人でなら平気で立ち寄れるし、はなっから買うつもりの無い洋服にしたってそうだ。
お互いに試着をしつつ、ぐるぐるショップを見て回った。佐穂里は始終、おっかなびっくりしていたけれど、なかなかに愉快なファッションショーだった。
特にすずが着てみせた、あのゴスロリファッションったらない。着る人が着ればカワイイのだろうけれど、あれは本当にウケた。クラスのみんなにも見せてあげよう、と携帯で写真も撮ったし。
昨日の余韻を湛えたまま教室に近づいていくと、なんだろ? ……何か騒がしい。どことなくヒステリックな声が、廊下まで漏れて聞こえている。
(──誰か喧嘩でもしてるのかな?)
躊躇いつつも教室のドアをスライドさせると、無数の目が私を捉え、瞬間、
──音が消えた。
なんだろう、例えるのなら“だるまさんがころんだ”に近い。それか、まさにイタズラをしている最中に、親に見つかってしまった子供か。
教室内の時空がズレたかのようにも感じた。
「ど、どしたの?」
集中する視線の温度なのか、だんだん顔中が熱くなってくる。
「……さくら?」
クラスメイトである朝田加世子につかみ掛かる格好の箕浦すずが、そう呟いたのと同時に、教室内の緊張は解かれた。
「……なんだよ、コイツ」
「ったく、作り話じゃん」
「……朝田さん、最っ低!」
何かを口々に吐き捨てながら、散会する級友たち。各自、各々の座席や教室を目指し、去っていく。
すずは周囲よりやや遅れて、やっと朝田加世子を解放すると、
「あぁ、さくらっ! ──ほ、ほらね、加世子! 変なコト言わないでよッ!」
加世子を睨みつけ、私のもとへ駆け寄って来る。
窓側の席に座る佐穂里は、なぜか泣いているように見えた。
「ちょっと、さくら! 加世子ってばオカシイのよっ! なんか、──きゃっ!?」
私に近寄るすずを半ばはねのけ、加世子が私との距離を詰める。
そして、加世子は爪が食い込みそうなほどの力で、私の左右の二の腕を掴んだ。
「い、……痛いよ、加世ちゃん」
頭の中にはただただ「何!?」だけが廻る。
理解が及ばず、怒る気にもなれない。
そういえば、燃焼の三原則は、“酸素・火種・可燃物”だと聞いた事がある。怒りにもそれと同じ事がいえるのかも知れない。
「──ひ、日々乃さん、あなた、あなた……」
「か、……加世ちゃん?」
──怯えた表情
──血走る眼
──生気を削ぎ落したような顔色
……そして加世子は、こう続けた。
「……あなた、昨日、死んだはずじゃ──」