~霹靂~ 2.
顔を洗い、肩に触れる程度に伸びた髪の毛を指で梳く。簡単に整えて居間に向かうと、卓袱台の上には既に二人分の朝食が並んでいた。
私は自分の座布団の上に正座する。
「もうちょい早起きして、朝ご飯手伝ってくれても罰は当たらんと思うけどねぇ。──早よ食べなさい」
お味噌汁の入った鍋とイヤミを携えて、お婆ちゃんは台所から現れた。
この小言は毎度の事で、『おはよう』の代わりのようなものと私は勝手に捉えている。現に、お婆ちゃんは何食わぬ顔で私のお椀に赤だしをよそってくれている。
「うーん。ゴメン、お婆ちゃん。でも、ほらっ、お夕飯は私も手伝うからさっ」
いただきま-す、と手を合わせ、味噌汁をひと口すする。うん! 美味しい。
テレビでは朝のニュースが流れている。ニュースといっても、どこかバラエティー色の強い、民放の番組だ。今も芸能の話題をやっている。タレントと女優が結婚したらしい。
「世の中、平和だなぁ~」
別に緊迫し、殺伐とした日常を期待している訳じゃ無いけれど、こういうのを見ているといつもそう思う。
お婆ちゃんは「ん?」と顔を上げたが、「ううん、何にも」と私が言うと、再び朝食を口へ運び始めた。
食後のお茶で口を整えながらテレビを眺める。勿論、気にすべき点は内容よりも左上の時間表示だ。それがバスの来る10分前を示すと、食器を流しへ運び「行ってきます」と声をかけ、家を後にした。