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第七話 義理と人情は大切にしたほうがいいってばっちゃが言ってたとかなんとか。

第七話 


「いやーとにかく苦労したんだぜ? なんせ相手が大リーグ傘下の選手揃いだから球は速いし変化球はグリグリ曲がるしな。だから次に何投げるか予測したりして何とかしてさあ」

 大輝先輩は部室で缶コーヒーを飲みながら、先日大リーグ傘下のチーム相手に奮闘したことを熱く語っていた。

「……やっぱり、大樹先輩は不思議です。そんなに力があるなら、野球部に入れば活躍できると思うのですが」

 私が言うと、大樹先輩は、

「……まあ、本当のところいえば、俺だって野球部に入部して甲子園目指して、プロに入れたらいいなと思ったことはあったよ。でもさ、中学の頃とか練習してるうちに、何となく限界を感じたんだよな。この先大人になって、社会人野球のどっかのチームに拾ってもらうとかなら、なんとか一生懸命努力すれば叶うかもしれないけど、それ以上はどうもきついんじゃないかってさ」

 大樹先輩はコーヒーを飲み干すと、ゴミ箱にポン、と投げた。

 それは、ゴミ箱の中にスポッと収まる。

「それとまあ……いろいろと複雑な事情もあってな。この部活を離れられんのだよ」

「複雑な縁?」

「まあ平たく言うと、俺は入学してからしばらくして、校長先生の一千万するツボをバットの素振りで粉々に粉砕しちまったんだ」

「結構理由は単純ですね」

「最後まで聞け。それで、俺は当然その瞬間退学だと思った。けれど、退学にはならなかった。それはなぜだと思う?」

「……さあ……」

「たまたま入る部活も無くて今の部活に入ってたんだが、知らぬうちに、先輩やら同期のヤツらが、影で動いてくれてたんだよ。アイツは確かに物を壊してしまったけれど、故意にそんなことをするようなヤツじゃない。だから、何とかならないだろうかってな。その時の俺は、もちろんそんなこと知るよしも無いから、なぜ退学にならなかったのか不思議でしょうがなかった。先輩やら同期のヤツらも、何も言わなかった」

 大樹先輩は、空を見上げた。

「その後しばらくして、友達の一人から偶然そのことを知った。だから、俺は余計今いる部活から離れられんのだよ。いろんなひとに恩返しをするまではな」

 大樹先輩は、ブルブルステーションスリー(最新ゲーム機)を取り出して、配線を始める。

「あ、ちなみにこのブルブルステーションスリーとソフトはバイトして俺が買ったんだぜ。少しでも部室が面白くなればってな。あと、マンガとかスポーツ用品(野球、サッカー、ゴルフクラブ等々)もな。スゲーだろ、へへっ」

 大樹先輩の表情は、明るかった。

「……大樹先輩、私もゲームしていいですか」

「ああ、もちろんいいぜ。ソフトは何にする? 何でも揃ってるぞ」

「じゃあ、この『脳の筋肉トレーニング 2人対戦バージョン なさけむよう』がいいです」

「ゲッ、お前、俺のこないだの学年試験がビリに近いことを知ってての行為かチクショウ。知識人は爆発してしまえばいいのに」

「さあプレーしましょう」

 そしてプレーを開始したのだが、プレー結果は思った以上にえらいことになってしまい、さらに中村部長やら倉下先輩がやってきてさらに大樹先輩をえらいことにしてしまった。

 大樹先輩はその結果、「貴様ら、野球で勝負したら俺は結構いいとこまでいくんだからねっ!」と謎のセリフを残して部室を飛び出していってしまった。

 中村先輩は「はっはっは」と笑い、倉下先輩は「うふふ」と笑っていた。

 うーむ、不思議な人間関係だ……。

 私は思った。

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