第一話 偏差値50
第一話 偏差値50
……。
私は悩んでいた。
ただそれは、世間から見れば全くと言っていいほど大したことの無い悩み。
どの、部活に入るか。
私の目下の悩みはただそれ一つだった。
私は小学校、中学校と普通を貫いてきた。
期末テストの学年順位はちょうど半分。
通信簿の成績はほぼ3。
趣味も浅く広くこなし、友人とも浅く広くつきあう。
しかし。
高校に入ってから、私は少し羽目を外してみたくなった。
思い切りいい点数か、思い切り悪い点数か。
そんな、ちょっと危険な香り漂うゼロ・サムゲームをやってみたい。
そう思ったのだ。
ただ、私の入学した高校がちょうど偏差値50という時点でまた普通の高校生活が待っているかもしれないというのは自明の理なのだけれど、
人間一度くらい、運命、ディスティニーに逆らってみたいのだ。
ディスティニーを超えた先にある何かを、見てみたいのだ。
私がそのことを母に話すと、「まったくもう、おじいちゃんが子供の頃から変なことばかり吹き込むからこんな子に育っちゃって……!」と、謎のかんしゃくを起こした。
私はそんなこんなで、一晩悩んだ。